第35話 注目のカップル

文字数 2,103文字

 ギリギリで教室に戻り席に着く。
 担任はまだ来ていなかったので一安心していると、隣の席の及川が

「ギリギリなんて珍しいね。 楓も一緒だったの?」

 と、どう答えるか迷う質問してきた。

「ああ、先生に仕事頼まれて手伝ってたんだ」
「そうなんだ、たいへんだね~」

 別に隠す必要は無いのだが反射的に嘘を吐いてしまった。
 そこで担任が入って来てSHRが始まる。

「あー、連絡事項が一つある。連休明けに郊外遠足があるが行先は市の総合公園でバーベキューをする。男女6~7人のグループを作っておいてくれ。以上」

 担任はそれだけ伝えて教室から出て行った。
 グループ分けか。去年までなら地獄のイベントだったな。
 今回は予想だといつも集まってるグループになりそだけどどうなんだろう?
 俺はいつも集まってる窓際後方に向かった。
 既に中居達が集まって話している。

「おっす」
「おーっす」

 この挨拶も大分慣れた。

「友也も一緒のグループでいいよな?」
「ああ、俺もそのつもりだったよ」

 水樹が普段と変わらない感じで誘ってきたのでそれに乗っかる。
 田口もいつもの調子で

「男子はこのメンバーで決まりっしょ!」
「ま、そうだな」

 中居もこのメンバーで文句はないらしい。
 男子は決まったからあとは女子だけど

「やっほー中居! 私達と組もう」

 と及川が楓と水瀬を連れてやってきた。
 
「結局いつものメンバーだな」

 と水樹が笑いながら言う

「いいじゃん、その方が楽しいし!」
「及川の言う通りっしょ!」
「二人揃うとうるさいな」
「「ははは」」

 という感じでグループが決まった。
 すると隣に楓が来て

「楽しみだね友也君」
「そうだな」

 楽しそうな笑顔で言ってくるので、俺もつられて笑顔になる。
 すると田口が

「あれ? 新島、いま佐藤君の事名前で呼ばなかった?」
「あ! 私も思ったー。さっきも二人でギリギリに来たし怪しいな~」

 田口の奴こんな時だけめざといな。
 及川もそれに乗っかってきてるし、どうするかな。
 と考えていたら楓が

「別におかしくないでしょ、私達付き合ってるし」

 躊躇なく言っちゃったよ!

「「「えええぇぇぇ!?」」」

 そりゃ驚くよな、俺も驚いてるもん。

「おいおい、マジかよ」
「侮れねぇな」

 と水樹と中居も驚いている。
 田口に至ってはウザイ。

「ちょっとちょっと佐藤君~、手が早すぎるっしょ~」

 と絡んでくる。
 そして女子も

「佐藤が変わったのって楓のためだったんだ~」
「佐藤選手! 楓を落とした今のお気持ちは?」

 及川のはあながち間違いではないな。
 そして水瀬は何故か選手インタビューの様にボールペンをマイクに見立てて聞いてくる。

「いや、落としてないぞ、俺は告白されたんだよ」

「「「……」」」

 一瞬の沈黙の後

「「「えええぇぇぇ」」」

 また絶叫。
 さっきから周りの注目浴びてるから止めて欲しい。

「難攻不落の楓が自分から告白するなんて……」
「友也、お前やっぱスゲーわ」
「あの新島がなぁ」
「楓選手! 佐藤選手に決めた切っ掛けは?」

 それぞれ思い思いに言葉を口にする
 水瀬は相変わらずインタビューの姿勢だ。

「えっと、友也君は私を変えてくれたから……」
「なになに? すっごい意味深なんだけど!」
「これは佐藤選手はやはりやり手だったんですかね~」

 女子は凄い盛り上がりだな。
 男子組は田口を除いて冷静って感じだ。

「佐藤の事見なおしたわ、お前すげぇよ」

 と中居も俺の事を認めてくれた。
 それだけに楓が今までどれだけ難攻不落だったのかが伺える。

「いや~、友也に先越されたな~。まさか楓とくっつくなんてな」
「そうそう! 佐藤君そんな素振り見せてなかったじゃんよ~」
「俺も今朝告白されてビックリしたんだよ。まぁ昨日の時点でおかしいなとは思ってたけど」
「なに? お前ら昨日も会ってたの?」
「楓に買い物に付き合ってほしいって言われてな」

 と俺がそこまで言った後、水樹が俺の肩を抱き小声で

「一昨日の段階じゃそんな風に見えなかったけどどんなマジック使ったんだ?」
「俺は特に何もしてない。ただ買い物に付き合っただけだ」

 小声で話すのは一昨日の誕プレの事を中居に聞かれない様にだろう。
 俺と水樹が話していると中居が

「とりあえず今日の放課後詳しい話聞こうぜ」
「それしかないっしょ!」
「だな」

 中居を筆頭に話が進んでいく。

「いや、中居達部活あるだろ?」
「部活なんかやってる場合じゃねぇよ」

 サッカー部のエースの言葉とは思えない。
 俺が楓と付き合うのはそんなに大事なのか。
 今の会話を聞いた及川が

「私達も行くよ! 楓も来るでしょ?」
「も~、しょうがないな~」

 そう言いながら楓はまんざらでもないようだ。
 ここは俺も腹をくくるしかないか。

 その日、学校では俺達が付き合い出したという話題で持切りだった。
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