第35話  体力テスト 男子の部 1

エピソード文字数 3,832文字

 ※


 残りの休憩時間も遠方組で過ごす。

 俺と聖奈。染谷くんに白竹さん。そして魔樹。


 どうやら、この五人で過ごすのが一番楽しい気がする俺であった。

 

 じゃれあう聖奈と白竹さんを見ていると、なんとなく癒される気がする。



でもさ、この子。本当に胸でかいわね。ちょっと分けなさいよ

 おいおい聖奈! 何してやがんだ。

 みんなの目の前で白竹さんのたわわな物体を揉みしだきやがる。


 この程度なら別に。聖奈だから当然かといやぁ。そうかもしれない。

 俺もしょっちゅうやられてたからな。

あうっ。はにゅ~~!


聖奈しゃ……ああっ! はげしっ!

あ、あの。美神さん? え? え?

 中々お前も良い顔芸持ってるじゃねーか。

 いいねぇ。普段仏頂面なヤツがそういう顔をすると非常に癒される。 

ど~やったらこんな大きくなるの?


私の親友よりも大きいかも。

(そ~言いながら。こっちに視線飛ばさないでくれます?)
(何も言わないが吉。ニコニコしとこ。ハレンチには弱いんだよ俺は)

あひ~~~あうあ~~


もみしだかれてますしっ! 



 しかも被害者である白竹さんも満更ではない明るい表情だったので、これでいいんじゃねと思った。俺があまり見なければいいだけの話だ。


 ですが、白竹さん? 先に忠告しておきますが、ちゃんとストップさせないと聖奈はどんどんエスカレートしますからね。



 

 そんな聖奈達のじゃれあいを見ていると、遠くから美神さんと呼ぶ声がする。

 さっき一緒に走った竜王さんがこちらに向かって来るじゃないか。  

 





お~~い!
…………

 と、同時に物凄く巨漢な男も一緒に歩いてきた。

 でかいな。190くらいありそうな筋肉モリモリ野郎で、顔もとっても険しい。


 思いっきり極道顔だな。その顔で高校生かよ。

 一回りくらい間違ってねーか? そう思うほど老けてるし。




 竜王さんは聖奈や白竹さんに軽く挨拶すると、その会話に割り込んだのは魔樹だ。


 彼女にも白竹さんを助けてもらったので、深くお辞儀をする。




 こいつって……女性にはやたら優しいよな?

 その割には、時折男が見せるような下心が全く見えないが。



へぇ。ここにいる皆さんは、遠方からこの高校に来たんですね。

そうなんです。竜王さんは? 地元ですか?
はい。隣の県だったけど。こっちに引っ越してきて

その場にいる俺達の紹介をする白竹さんと聖奈。

こうやって知り合いが増えていくのは嬉しいものだ。

で、その大きい人は? 竜王さんの彼氏?

 聖奈も初っ端からキツい冗談を言いやがる。


 いくらなんでも、竜王さんのような華奢な方の彼氏などと……そう思ったが。

そうなんです。私の彼氏のゴリです。よろしくね
え?

 とっても微笑を下さった竜王さんに、遠方組はタジタジだった。

 

 ってか。彼氏をゴリとか言う時点で嘘っぽいんですけど。

……はぁ~。ああ~~~

 盛大な溜息を漏らす巨漢の男。もといゴリ。

 え? 何? そのやる気の無いリアクションは。


 まるでカツアゲに逢ったみたいに青ざめてるんだが。。

 

 こんな可愛い彼女だったら、嘘でも嬉しくないのかよ。



 そんなゴリを見かねたのか、竜王さんが腕にしがみ付くと「本当なんですから」と言うものの、それでも尚ノーリアクションなゴリだった。



 しかもしがみ付いた竜王さんの腕を上げるゴリ。

 当然宙ぶらりんになる彼女だったが、やたら楽しそうだった。


めちゃ仲が良さそうでし。うらやましいなぁ。


ねぇ。私もそれ。やってみたいわ。ぶらさがりたい

は? え? の、ノーノー!

で、できません……

もしかして。彼女専用ってこと?

あ、ちが。違うんです! 


これには深い訳があり……決してそのような……とにかく何だかもう……すみません!


 聖奈が進言すると、急に顔を真っ青にするゴリだった。

 しかも顔を横に振って全力で否定してるし、何が起こったのか分からなかった。




 ちなみに竜王さんの下の名前は冴子(さえこ)さん。そしてゴリは播磨 王二朗(はりまおうじろう)と言うそうだ。

じゃあまたね。みなさん。今度ゆっくりお話でもしましょ
竜王さんの返事に頷く遠方組だったが、ゴリだけは真剣な顔で、ボソっと呟く。
あの、こいつと付き合うのは辞めたほうがいいですよ。ほんっとにロクな事ありませんから
そうなの? でもあんなに可愛い子なら、小悪魔っぽくていいんじゃない?

小悪魔? いやいや。あいつはそんな生易しい奴じゃないです。


小悪魔と言うよりデビルやデーモンの類ですよほんと。

 おいおい。ゴリ。何でそんな真顔で言ってくるんだよ。

 とは言うものの、二人の仲が良いのはみんなも感じただろう。 

 さて、そろそろ授業が始まる。

 今度は、男子のマラソンだな。

蓮。本気出して走ってよ。結構早いんでしょ?
いや……わからねーけど。できるだけ頑張りますよ

 ※


 今度は男子生徒がグラウンドを走ることとなった。


 しかも男子生徒だけ十週というノルマを掲げる体育教師。各地から一斉にブーイングが飛び出した。その一部で顔色も変えずに「楽勝」とか抜かすのは、体育会系の奴らだけである。




 今度は観戦側となった女子生徒。何故か最前列で座ってる聖奈と白竹さん。こちらに手を振ってくれる。

 


 しかもちゃっかり竜王さんまでその横で手を振っていた。


 そういえば彼女はアレだな。ずっと笑顔だな。

 なんとなく染谷くんのような余裕の表情であり、あれがデフォルトなのだろう。


これわ。頑張らねば。俺の雄姿を……彼女達の網膜に焼き付けるチャンスだ!
 西部よ。何でお前はそんな夢中になれるのだろうか。

 仮にお前がぶっちぎりの一番だったとしても、この先の未来の何が変わるというのだろうか。 


 ていうか、そのやる気を女子とのコミニュケーションの勉強に使うといいんじゃね?

 そっちの方が多分有意義だぞ。




  

 さて。男子生徒が一斉にスタートすると、やる気な西部はダッシュでトップ集団へと紛れ込んでいた。



うぉおおおお~~~!


 

 あんな無茶な走りで絶対もたねーよ。

 そもそも走るモーションが間違ってる。ありゃ二週で力尽きるぞ。

西部はボーナスキャラだね。見ていて微笑ましいよ。
だね。なんつーか。予想を裏切らない。安定したキャラだよ

一生懸命なのは好感もてるけど。失敗するのが目に見えてるからね

 俺と染谷くんが並んで走っていると、その横を魔樹が通り過ぎていく。


 こいつはねーちゃんが居ないと、俺らの事なんて無視がデフォルトだから何も言わないけど……綺麗な走りじゃねーか。




 その後ろには巨漢のゴリ。もとい播磨くんも走っている。

 でかすぎて集団の中に紛れてもすぐ分かる。


頑張って~王二朗! 一番になったらデートしよっか

 おおっ! まさかの竜王さんの爆弾発言に驚く男子生徒達だったが、当の本人は……


 ペースを落として、今にも死にそうな顔になると、ずどーんと言わんばかりな音を立て、前のめりに倒れてしまう。

(お前とデートなんか出来るか。ズッコケ気持ちわりぃから止めてくれ)
ゴリっ! 何で倒れるのよ~~!


 身体をピクピクさせる播磨くん。

 何でそこで倒れなきゃいけないんだ?



 そして。暫くして立ち上がる播磨くん。

 何も知らぬ存ぜぬといった表情で黙々と走り出した。



 ありゃ竜王さんに主導権握られてそうだな。

 傍から見てて、そう感じた人間は多いだろう。

 

蓮っ! あんたも本気で走りなさいよ
黒澤くん~染谷くん。頑張ってくださいねぇ~~

 おっと。俺にもそんな声援が飛んでくる。


 聖奈はともかく、白竹さんに名だしで応援されてしまったのだから俺も染谷くんもやらねばなるまい。


 しかも周りで一緒に走る男子生徒との温度が下がった気がしたし。





はぁ~~い。頑張りますっ!
(この声援が楓蓮さんだったらな。一瞬でトップ取るんだけど)

 聖奈達に笑顔で返す染谷くん。

 俺も同じような対応を見せる。


 

 すると前方に早速ペースを落としてきた西部に追いついてしまった。

よう西部。まだ七周あるぞ
ぐ、ぐほっ

 バテるの早すぎだろ。

 まぁ無茶苦茶な走りしてたから、息も絶え絶えだし。ここから盛り返すのは不可能だな。



 女子生徒から遠い場所で墜落した彼に、手を差し伸べる奴はいなかった。

 しょうがないので、俺達が回収するハメに。


先生。もう無理っす
まだ三周だろ? もっと走って来い!
 そりゃ先生にそう言われるさ。



 そんなこんなで五週ほど走ると、先頭集団っぽい陸上部の奴らが後ろから迫ってくる。

 あっさり俺達を抜いて周回遅れになっても俺達のペースは変わらなかった。


 俺だってお前らのペースで走れん事もないし、もっと速いから。

 などと内心で勝ち誇っていると、今しがた後ろから俺達を追い抜いたのは魔樹だった。



ふふっ

 しかも俺達を蔑むような、そんな顔を一瞬しやがった。

 そしてペースを上げると、俺達を追い越していく。

黒澤くん。あれってケンカ売ってるよね
そうだね。明らかに見下した顔に見えたよ
おい。魔樹。調子に乗るのもいい加減にしろよ。
こらっ! 蓮! あんた走れるんでしょ? 本気見せなさいよ

 やたら不満な聖奈。遠くからでもその声が聞こえてくる。


 何でこんな場所で本気を出さねばいかんのか理解に苦しむが……ここはプリプリ怒る聖奈に合わせよう。

じゃあ染谷くん。あいつ。抜かしますか?
了解! 周回遅れから追いついてやりましょう
というわけだ西部。じゃあな。健闘を祈る
ちょ! お前ら待ってくれよ~~~!
 既に瀕死状態の西部を置き去りにして、俺と染谷くんは一気にペースを上げるのだった。
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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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