第四十二幕!凶星現る

文字数 10,886文字

 北見を攻略したイソンノアシを総大将とするAIM本軍。屈斜路湖畔で官軍を打ち破り、美幌峠を越えたアイトゥレとカネスケ率いるAIM道東遠征部隊。両軍は、官軍の支配領域の美幌町を挟む形で陣を張った。
 美幌町は、北見に比べると、はるかに小さな町ではある。だが、東西の道が交差する重要な拠点だ。しかし官軍は、決戦に備えるために町にわずかな守備兵だけを残し、更に網走に近い大空町に全軍を集結させていた。
 先生は、昨晩のうちに美幌町へ降伏勧告を出した。そして今朝、美幌町はそれを受け入れてAIMに降伏。AIM本軍は悠々と美幌町へ入り、道東遠征軍との合流を果たしたのであった。


 ◇


 約一週間ぶりだろうか。俺はAIMの陣中で、カネスケと結夏、それに龍二と再会を果たした。目の前に現れたカネスケが、少し会っていなかっただけなのにものすごく大人になっているように感じる。


「活躍は聞いた。さすがだな。」


「つい本気出しちまったわ!」


 彼が頭を掻きながら調子に乗る。そう言う部分は変わっていないようだが、その方が彼らしさが出てて好きだ。そして彼もまた、俺のことをまじまじと見ながら言う。


「それにしても、なんか変わったよな。」


「何が?」


「蒼の雰囲気。前よりも勇ましくなったというか、リーダーらしくなったような気がするぞ。」


 カネスケの視点から見ると、俺がそのように移って見えるようだ。


「そんなことないだろ。それにその言葉、俺が言いたかったことと同じだ。」


「お、それってもしかして?」


「お前もただのカネスケから、軍人のカネスケになったような気がするってことだ。」


 彼は、より照れ臭そうにしている。


「そ、そうかな?まあお互い成長したってことか!」


 なんだかんだで嬉しそうだ。
 俺たちが近況を報告しあっていると結夏が俺に尋ねる。


「紗宙と灯恵がいなくない??」


「2人は北見にいる。紗宙が高熱で倒れて療養中で、灯恵はその看病をしている。」


 結夏は、心配そうな表情を浮かべた。


「紗宙、大丈夫なの?」


「医者に診てもらったところ特に心配はないそうだ。それに灯恵がついているしな。」


 カネスケがニヤついている。


「本当は側にいてやりたかったんだろ?」


 唐突に弄られたので、つい声が大きくなる。


「当たり前だろ!仲間なんだから!」


 すると結夏も微笑ましそうにこちらを見てきた。


「リーダー、顔が赤いぞ! 」


 どうやら、無意識のうちに照れていたようだ。俺は、そんな感情を押し殺すかのように強がる。


「とりあえず灯恵に任せてある。俺たちは網走を攻略することに専念するぞ。」


 カネスケがニヤニヤしながら返事をする。しかし結夏は、どこか寂しそうな顔をしていた。きっと2人に会いたかったのだろう。そう思い、俺は彼女に言う。


「結夏、北見へ行くか?」


 結夏は首を横に振る。


「それはいいよ。私もやること沢山だし。 ね、カネちゃん?」


 カネスケは、彼女を見てにっこり微笑む。


「2人に会ってこいよ。戦争のことは俺たちに任せて、たまには3人でゆっくりしてきな。」


 結夏は強がった。


「私がいなくて戦えるの?」


「俺を誰だと思ってやがる。小伏竜と呼ばれし男だぜ。まあちょっとさみしいけど。」


 彼女は、クスリと笑いながらも俺たちに確認してきた。


「本当に良いの?」


 俺はきっぱりと答える。


「良いよ。結夏もいた方が、きっと紗宙も喜んで元気になるさ。」


 彼女は、隠しきれない嬉しさを顔に出す。


「本当に!じゃあお言葉に甘えて行ってくるね!」


 カネスケは微笑みながら言う。


「おう!楽しんでこいよ!」


 結夏がカネスケにありがとうと言うと、カネスケは彼女を抱きしめてキスをした。俺は、2人の関係を知らないから目の前の状況に呆気にとられていた。でも横にいた龍二は、いつものことのようにその光景を眺めている。
 俺は、目の前の男女へ水を差すように確認する。


「お前ら、いつの間にそんな関係になったんだ?」


 彼女がニヤニヤしながらこちらを見てくる。


「それはお互い様でしょ?」


 何のことやらといった顔をしているとカネスケが言う。


「蒼。隠す必要はないんだぜ?」


 どうやら、紗宙との関係がバレバレだったということを悟った。


「気づいてたのか?俺と彼女のこと。」


 結夏がきっぱりと答える。


「とっくの昔にね!多分みんなに気を使ってるんだな、って思って何も言わなかったけど!」


 俺は戸惑いながら目を泳がせる。そして頭を下げた。


「そっか...。隠してて悪かった。」


「別に謝ることじゃないよ。でも、これで隠す必要はなくなったよね。」


「そうだな、正直いつ言おうか迷ってたところだったんだ。ありがとな。」


 結夏は笑顔で言う。


「ちゃんと紗宙にも話し聞いちゃうからね!」


「あいつは口固いぞ。」


 そう言うと、みんな笑っていた。そしてカネスケが急に肩を組んでくる。


「じゃあこっちは、ボーイズトークで盛り上がるとしようか。」


「いや、遠慮しとくわ。」


 カネスケがふてくされる。するとまた、場が笑いに包まれた。結夏がいてくれると、いつも場の空気が明るくなる。革命団の太陽のような彼女の存在に、俺はいつも感謝をしていた。そして、俺にないものをたくさん持っている彼女のこと、実は尊敬していたのだった。
 話の区切りがついたあたりで、龍二が雪路を連れてくる。


「リーダー。こいつも新しい国作りに参加したいと言っているが、良いだろ?」


 雪路は緊張している。


「はじめまして雪路と申します。龍二さんから話を聞いて、私もお力になりたくて志願致しました。」


 カネスケは、まるで弟と話す感覚で雪路に絡む。


「おー雪路。そういや蒼とは初対面だったな。」


 俺はカネスケに聞いた。


「お前の知り合いか?」


「おう!道東遠征の時は、俺の片腕として大活躍してくれたんだぜ!」


 俺は、雪路の方を見た。


「何か得意分野はあるか?」


 雪路は、声を高ぶらせながら答える。


「法律に関することであれば、誰にも負ける気はしません!」


 国を作るのに法律は欠かせない。それなのに革命団には、法律の専門家がいなかった。俺は、考えた末に答える。


「法律家か...。わかった採用だ!」


 雪路が俺に感謝の意を述べると、俺は早速彼と話し込んだ。そして俺と彼と先生の3人で、新憲法立案へ向けて動いていくことを決定したのだった。それから俺もカネスケたちに雪愛とイカシリのことを紹介した。2人は、俺たちについてくるとは言っていないが、共に行動することが多かったから名前と顔くらいは覚えてもらった。
 俺たちは、その後もしばらくはその場に集まってくだらない会話で盛り上がる。しかし、サクがそれを遠くから見ていたことに気づくことはなかった。


 ◇


 雪が覆い、どこが道なのかもわかりづらい旧街道。敗走中の村中は、死に物狂いで津別町を目指していた。とりあえず町へ入らなければ、この極寒の世界で生き残れる自信はない。彼は雪をかき分けながら全力で歩を進める。すると前方の木陰に誰か人がいる。どうやら焚き火をして暖をとっているようだった。
 村中は、今にも凍傷で焼き尽くされそうな身体を何とかするために、その焚き火へ近づいていった。 火のすぐそばまで来ると、焚き火をしている男に声をかける。


「旅人よ、私にも少し暖を分けてくれないか?」


 すると男は、何かを貪るように食べているのでこちらには気づいていない。村中がもう一度男に尋ねると彼が振り返った。
 だが、その男の顔を見た瞬間、恐怖で身動きが取れなくなってしまう。なぜならその男は、口にこんがりと焼かれた人の指を加えていて、衣服は血しぶきで赤く染まっていた。そして、彼の隣には、切り刻まれた人の生肉が綺麗に並べられていた。


「み...た...な...。」


 すると男は、まるで斧のようなゴツい包丁を手に取ると少しずつ村中に歩み寄ってくる。村中は恐怖のあまりに尻餅をつき後ずさりをする。その男は、まるで死んだ魚のような目をしながら、徐々にこちらへ迫ってくる。そして、常に無表情なのに、村中が悲鳴をあげそうになる時だけ彼の口角は上がるのだ。


「や、やめてくれ。俺を殺さないでくれ。」


「僕はさ。おっさんの肉よりも、女の子のお肉の方が圧倒的に好みなんだ。でも、こんな環境下じゃあ、わがままも言ってられないよね。」


「そ、そうか。女が食べたいのか。よよよし、街まで案内するから俺を食わないでくれ。」


「僕は今すぐ食べたいんだ。いいだろ?」


 村中は頭がパニックになっていく。


「き、鬼畜め!カニバリズムだ!カニバリズムだ!!」


「カニバリズム、そんな変わってるかい?
 僕は食用の対象が、牛や豚じゃなくて、人なだけなんだよ。」


 村中は、あまりの恐怖に悲鳴をあげ続ける。その男は、有無を言わさず包丁を振り下ろして村中に致命傷を負わせた。村中がその場に倒れこむ。


「何でもするから許してくれ!!」


「そうだな。じゃあ、一つ聞きたい。」


 手足を震わせる村中に男は淡々と言う。


「北生蒼って男が、どこにいるか知ってる?」


 聞き覚えのない名前に戸惑いを隠せない。でも、もしも知らないと言えば殺される。
 村中は咄嗟に嘘をついた。


「おお知っているぞ。その男は北見市で見かけた。」


「そうか、ありがとう。」


 これで食われずに済む。そう村中は思い期待を膨らませる。


「では、見逃してくれるな?」


 だが、男の口角がうっすらと上がる。


「見逃すとは一言も言ってないよ。いただきます♪」


 雪原に悲鳴と赤い液体が飛び散った。
 その後、村中の消息を知るものはいなかった。ただ、彼の遺品が、津別町から数キロ離れた森林地帯に散乱していたのだという。
 その男は、満たされた腹にイマイチ不満足ながらも、1人で北見市へ向けて歩みを進めるのであった。彼は、血なまぐさい手のひらを見つめながら独り言を呟いた。


「リンちゃんの興味を一身に浴びる北生蒼。早く殺したいなあ。」


 雪が降り始め、彼の残した足跡をかき消していく。まるで彼のやった行為を帳消しにするかのように。


 ◇


 美幌町と網走の中間地点に位置する大空町。ここにAIM軍と官軍の総勢18万の大軍勢が陣を敷いて、決戦の時を今か今かと待ちわびていた。イソンノアシがいる本陣では、早速作戦の整理が行われていた。
 まず、アイトゥレが話を切り出す。


「敵は10万でこちらは8万。やや兵力に劣っている上に、官軍は野戦にめっぽう強い。小細工が通用しないこの戦いで、どうすれば勝てるのか。」


 イソンノアシが気難しい顔で答える。


「そうじゃな。敵はまたもや戦車を繰り出してきおった。こちらも対戦車砲を多数所持しているが、それだけで対抗できるかわからん。」


 カネスケは、早速参謀としての仕事をせねばと言わんばかりに案を出す。


「敵の戦車は15台。確かに数が多い。それに、相手は守りに徹するのかと思いきや、攻撃前提の捨て身の陣形を組んでいます。まずは、その攻めをどう受け止めるかを考えなければなりません。」


「そうなのじゃが、ここは戦場と町を隔てるものが何もない。今から塹壕を作ろうにも、それを好機に敵は攻めてくるじゃろう。それに地雷を仕掛けるにしても、その手前から砲撃されてしまえば何の意味もなくなってしまう。」


「あえて美幌町まで敵を引き込んで、市街戦で撃滅するというのはどうでしょうか?」


「故意的に市街戦に持ち込むのは、どうも気が進まん。それは最終手段じゃ。。」


 カネスケは考え込んでしまった。そうする以外に、何か手段があるとでも言うのか。解決策が思い当たらない。その時、先生が前へ出る。


「何を戦車ごとき恐れているのですか。」


 イソンノアシは、先生の方を向く。


「真。何か策があるなら言ってみるがいい。」


「地図を見てください。横に流れる川はありませんが、縦に流れる川ならございます。」


 アイトゥレが地図の箇所を指差す。


「確かに網走川が流れておるが、これが何というのだ。」


 イソンノアシは、目を見開いて先生に尋ねる。


「まさか、陣をそっちへ移すというのか?」


「いいえ、そんなめんどくさいことはいたしません。いたってシンプルな方法で、敵を背後から崩壊させます。」


 カネスケが話に入る。


「先生、わかりましたよ。」


 先生はカネスケの方を見た。彼はハキハキと答える。


「戦車部隊との戦闘が始まる前に、機動部隊を使って網走川対岸の無人地帯から敵の防衛ラインをパスする。そして川に橋をかけて対岸へ渡り、背後から一気に官軍を叩き潰す。こう言いたいのでしょう?」


 それを聞いた先生が感心している。


「その通りだよカネスケ。敵の司令塔さえ消してしまえば、戦車は何もすることができません。一気に挟撃して戦車ごと粉砕します。」


 アイトゥレは、納得しているようだ。


「おお。それであれば、堅固な網走兵団の戦線を無効にできるな!」


 しかし、イソンノアシは不安を隠せない。


「いや、確かにそれならば勝ち目はあるかもしれん。しかし、敵もそれを警戒して、様々な罠を張っているかもしれんぞ。それこそ網走川の対岸に、伏兵を潜ませておくとか。」


 すると先生が答える。


「その心配は無用です。なぜなら、その作戦ですらフェイクなのですから。」


 陣中がざわつき始める。


「さらに別の狙いがあるというのか?」


 先生は頷いた。カネスケは首を傾げている。俺は、改めて予定している互いの陣形を想像。その時、ふと閃きが脳裏をよぎった。


「そういうことか。」


 俺が声をあげるとこちらへ注目が集まった。カネスケが俺に尋ねる。


「ん、なんか閃いたか?」


「敵の注意を川の対岸に引きつけることで、全体の目線を西側へと向けさせる。これが、このフェイクの狙いなんだ。そして、西側を目視しすぎた敵軍の東側に大きな隙ができる。」


 先生の顔が明るくなる。


「リーダーのおっしゃる通りでございます。これで、南北東西から敵を包囲して殲滅するのです。」


 するとサクが、負けじと意見を出してくる。


「見事な包囲網だな。しかし、それだけ兵を割く分、戦列の厚みが薄くなる。ましてや戦車相手にそんなことをすれば、すぐに破壊されて包囲網は崩壊。それどころか、美幌町までも攻略されかねないぞ。」


 その意見に対して先生が反論。


「その為、町を背にする部分には、対戦車兵器を装備させた歩兵部隊や、我が軍の中でも野戦慣れしている者たちを布陣させます。」


 サクはまだ納得していない。先生は、そんな彼を説得する。


「サク。AIMの兵隊がどれだけ強いのかは、私よりもあなたがご存知のはず。あとは、その兵隊をどこまで信頼できるかですよ。」


 サクが若干イラついていた。


「そんなことはわかっている。だが俺は、数々の戦いの中で戦車の厄介さを痛感してきた。だから言っているのだ。真だからもっとまともな策を出してくるのかと思いきや、最後の最後は根性論ときたか。」


 俺はその発言を聞いた時、彼の顔面をぶん殴ろうとしてしまう。しかし、先生は一切怒ることもなく、冷静に話を続ける。


「そうですか。では、サクに対戦車部隊の指揮をしてもらいましょう。必ずや我が軍を勝利へと導けます。」


 イソンノアシは少し驚いてから、不安そうに2人を見ていた。


「本当にサクで大丈夫なのか?」


「ええ。彼は戦を知り尽くしている分、様々なポイントに慎重になっているだけです。統率センス抜群の彼であれば、一番の難所も難なくやり遂げてくれることでしょう。」


 先生は、なぜかいつもサクのことを高く評価していた。俺やカネスケには、その理由がよくわからなかった。
 サクが仕方なそうに答える。


「真がそこまでいうなら、その役を引き受ける。だが、もし破れるようなことがあれば、無責任な策を立てたお前の罪を追求するからな。」


 そう言い残すと、彼は陣を飛び出してから戦いの準備へと向かっていった。
 その後、先生の考案した作戦で話が進み、各々の役目も決められていく。ちなみに俺は、龍二とともに東側に陣を敷くことになった。この戦の勝敗を決める作戦の要である。今まで経験してきた数少ない戦いの中では一番規模が大きいような気がして、なぜか全身に緊張が走っていた。
 会議が終わった後、俺は先生とイソンノアシに呼び止められた。


「リーダーには伝えておきましょう。この戦いの本当の結末を。」


 俺は、先生とイソンノアシから作戦の最終着地点を聞いた。そして、ようやく全貌を把握して勝利に確信が持てたような気がした。
 陣へ戻る途中、遥か網走方面に視線を向ける。敵陣から煙が上がり始めて、戦が今にも始まりそうな予感が漂っていた。


 ◇


 北見市にあるAIMの寮は、数年前にできたばかりの真新しい施設だ。ついこの間まで官軍が使っていたため、設備も充実していて居心地が良い。
 紗宙の容態は少し落ち着いたが、まだ回復に至ったわけではない。彼女は、タブレットを使って仕事をすることもままらなかったので、カーテンを開けて外に広がる北国の町の風景を観察していた。
 すると、寮の前に軍用車が一台止まる。そして中から見覚えのあるオレンジ色の髪をした女性が姿を現した。紗宙は、それが誰だかわかると不意に笑みがこぼれた。
 しばらくすると、部屋のドアをノックする音が聞こえる。彼女がどうぞと言うとドアが開き、そこには結夏が立っていた。
 結夏は、とても心配そうな顔をしていたが、目があった瞬間にそれは少し和らいだようだった。


「紗宙!大丈夫だった??」


 紗宙は、久しぶりの再会に心を躍らせる。


「もう死ぬかと思った!あ、まだ治ってないからうつるかも。」


「ちょっとなら大丈夫!それにしても、一週間会ってないだけで、こんなに久しぶりに感じるんだね!」


「常に一緒にいたからね。めっちゃ会いたかった!」


「私も!紗宙と話したくて、仕事休んじゃった!」


 紗宙は、ハッとした顔で驚いた。


「え、私のために?
 大丈夫なのそれ?」


「リーダーが特別許してくれた。私がお見舞い行った方が紗宙も元気になるかもって。」


「え..蒼が..。なら...大丈夫だね。」


 紗宙は、嬉しそうにしながらもベットに目を向ける。


「リーダー強がってたけど、ずっと紗宙のことばかり考えてたよ。」


 それを聞いた紗宙の頰は、若干顔が赤くなっている。結夏がダウンコートをハンガーにかけると、ベット脇の椅子に腰を下ろした。寮は、紗宙たち以外ほとんど人がいない。だから静かで落ち着いた時を過ごすことができる。
 結夏は、ひと呼吸おくと、躊躇なくストレートに尋ねる。


「聞いたよ。リーダーと付き合ってるんだって?」


「え、あ、うん。知ってたの?」


「なんとなくね。で、リーダーに聞いたら口滑らしてた。」


 紗宙は、苦笑いをしつつまた恥ずかしそうに俯く。


「隠すつもりはなかったけど、言い出すタイミングなかったんだ。」


「あー、別に責めてるわけじゃないからね。実は、私もカネちゃんとそんな感じだから。」


 その事実を聞いた紗宙は、チラリと結夏の方を見て微笑した。


「だと思った!」


 今度は逆に結夏が驚いている。


「え、知ってたの?」


「だって、お似合いだから。」


 すると結夏は、笑みを浮かべつつ上目遣いで紗宙を見る。


「バカにしてる?」


「そう言うことじゃなくて、普段の2人の話よく聞いてたから、ああやっぱりなって。」


「そう言うことね。なんだかんだ、彼とは一緒にいて一番楽しい。紗宙もそうなの?」


「うん。蒼といると落ち着くし、お互い昔のことを知ってるから親近感もある。そして何よりも、私以上に私のことを愛してくれるから、なんか一番安心できる。」


 結夏が温かい表情を浮かべる。


「確かに。あの人、口を開けば野望の話か紗宙の話ばかりだからね。」


 紗宙は、唐突ではあるが彼女に聞いたみた。


「結夏は、蒼のことどう思ってるの?」


「えーそうだなー。基本何考えてるかわからないし、冷酷な一面も見てきてるから怖いって思うことも多い。けど、それ以上に仲間思いで彼女に一途で、そして誰よりも夢に対して一直線で熱い思いが伝わってくる。だから彼がリーダーで良かったなって思ってるよ!」


 それを聞いた紗宙は、ホッと胸をなでおろした。


「それは良かった。昔から知ってるけど、他人から舐められたり嫌われたりしやすい人だったから少し気になったの。」


「そっかー。けど私は、尊敬もしてるし全然嫌いだって思ったことないな。それにカネちゃんも典一さんも龍二もリーダーのこと大好きって言ってた。だから心配することないんじゃない?」


「結夏からそれ聞けて本当に安心した。」


「じゃあ、紗宙から見たカネちゃんってどんな印象なの?」


「うーん、敏腕な営業マンって感じかな。」


 結夏が腕を組みながら確かにといった顔をしている。


「仕事の話が好きだもんね。」


「なんかオンとオフの差があるよね。結夏や灯恵と一緒にふざけてばかりだと思いきや、先生も一目置くような作戦を考え出したりとか。あとは、なんだかんだ落ち着きのある男らしさがあって、きっと結夏もそういうところに惹かれたんじゃない?」


「まあね。それもあるかも。」


 する紗宙が窓の外を見つめる。


「でも皮肉だね。」


「何が?」


「この残酷な社会がなければ、結ばれることがなかった縁なのかなって。」


 結夏も同じく窓の外に広がる雪国の町並みを見渡す。


「そうだね。こんな暗い社会なんてあってはいけないのに、それによって巡り会えた幸せってなんか皮肉。」


 紗宙がうっすら曇る窓の外をぼんやりと眺め続けている。そんな彼女に結夏が言う。


「けど、もうこの世界でしか生きていけないんだから、幸せになってやらないとね!」


 紗宙は、結夏の方を向き直ると頷く。


「うん。なんか話それちゃったけどそう言うこと。」


 結夏は、大きく深呼吸すると、気分を変えるようにハツラツと提案を出した。


「じゃあいつか、余暇ができたらダブルデートしちゃおっか?」


 そんな彼女からの誘いに、紗宙の気分も上がる。


「うん!しようしよう!!」


 会話が程よく盛り上がりを見せた頃。結夏は、リンゴを剥いてくるから待っててと言い残し立ち上がる。すると、カーテンの影から出てきた何かが結夏に抱きついた。結夏がびっくりして悲鳴をあげると、カーテンから出てきた主は言う。


「びっくりした??」


 紗宙が大笑いしている。


「灯恵、作戦大成功だね!」


 灯恵は、満足そうな顔をしていた。


「思いのほか階段上がるの早いから、隠れる場所を考えるの大変だったぞ!」


 結夏は、安心して胸に手を置くと、悔しそうに灯恵を見た。


「あーやられたー!覚えときなよ!!」


「私なら絶対に驚かないけどね。」


「言ったなー!」


 ガラリとした寮の中に彼女たち3人の笑い声が響き渡る。こうして2人のおかげもあり、紗宙の体調は徐々に回復の兆しを見せ始めたのだった。


 ◇


 網走監獄から更に北へ進んだ場所にある軍事都市『紋別』。騎兵隊の駐屯地では、御堂尾神威が出陣の時を待ちわびていた。
 神威はストレス発散のために、道端でたまたま見つけた老人に自分へ誹謗中傷したという言いがかりをつけて捕虜とした。そして、処刑台にその老人を吊るし上げ、射撃の訓練の名目で心ゆくままに殺害を楽しんでいた。
 満足げに死体を見つめる神威に対して、その隣にいるぽっちゃりとした彼の弟が言う。


「兄貴ー、俺にも殺させてくれよお。」


「寿言。お前は俺が留守の間、散々楽しんだだろ。」


「うーん、まーそうだけどよー。遊び足りねえんだよ。」


 体重100キロは悠々と超える彼は、指をくわえながら文句を垂れる。
 神威がそんな彼に尋ねる。


「にしても、隊長はまだ出陣しない気なのか?」


「わっかんねー。でも隊長も出陣はしたがってたけど、松前将軍からの指示を無しに勝手に動くことはできないと悩んでた。」


「松前大坊か。あのクソ野心家め。何を考えてやがる。」


「俺にも読めねえ。ただ俺たちが好き放題やれてるのも全て松前将軍のおかげだから、彼には逆らえねえよ。」


 神威は地面を思い切り踏みつける。


「クッソ。俺が何人アイヌの娘を捕えて、あいつに献上したと思ってやがる。もっと感謝して、俺たちの意見も聞いてもらいてえもんだぜ。」


 それを聞いた寿言は、何かを思い出したようだ。


「お...ん...な...。兄貴、今回は女を拉致してこなかったの?」


 神威は大笑いした。


「ふははははは。良いことを聞いてくれたな弟よ。」


「え、どしたし?」


「どうしても食わなきゃいけねえ女を見つけたんだよ。それと一緒に殺してえ男もな。」


 寿言のテンションが上がる。


「ヒュー!待ってましたそういうの!どんな奴らなんだ?」


 神威が汚い笑みをこぼす。


「今の時代、インターネットが発達しているから、調べればなんでも出てくるのよ。」


「前置きはいいから聞かせてくれよ。」


 寿言は、女の話題になるとせっかちになることがある。そんな彼に、神威が力強く宣言する。


「市ヶ谷結夏。あのギャルは、必ず俺のものにしてやる。」


「おおいいねえ。また3人で楽しもうぜい。」


「バーカ、それは当分先。俺が飽きてからだ。そして...。」


「そしてー??」


「小伏竜こと直江鐘ノ助。こいつは徹底的に拷問にかけて、苦痛を与えてから殺してやる。」


「冴えねえ名前だぜ!女の前で屈辱にまみれさせながらぶっ殺そう!」


「そうと決まれば、いつでも出陣できる支度をしとかねえとな。」


「おう!早く戦場行って、人をぶっ殺しまくろうぜい!」


 そう言うと、寿言が颯爽と自室へ帰っていく。神威は、灰色の雲に覆われた空から時たま顔を出す太陽に手を伸ばした。


「待っているがいい。全て思い通りに楽しんでやる。」


 こうして、彼も雪が降り始める前に部屋へ戻っていった。その数時間後。松前大坊の指令が降りたことで、紋別騎兵隊の出陣が決定するのである。


 ◇


 もう午後2時を回ろうとしている。先生は美幌町にある物見台から網走方面を見下ろした。隣には雪路がいる。彼は、先ほどカネスケから紹介されたばかりだ。しかし先生は、彼の豊富な法律の知識や政治力に興味を持ち、自分のそばで育てることにしたのであった。
 それにしても、味方の陣形も敵の陣形も見事である。戦争は酷いものではあるが、戦の前の人が織りなすこの隊列は、まさに芸術の一つと言っても良いのではないか。
 先生は、いつものように勝利は確信していたが、今回ばかりは少し気が気でならなかった。
 先生は雪路に尋ねる。


「君は、天体とかは興味あるか?」


「宇宙は好きですが、詳しくはございません。」


「そうか。実は昨夜、北見市の真上で2つの凶星が眩い光を放っていた。何か悪しきことの前兆ではないかと思い、胸騒ぎが治らんのだよ。」


「先生の星占いはよく当たると、カネスケさんから聞いてます。何か思い当たる節はございますか?」


「ないわけではない。そうなった時のことは、ある程度計算している。しかし、不安なことに変わりはないのだ。」


 そういうと先生は、寒風に吹かれながら、再び戦場に目を移すのであった。
 戦いの時は、すぐそこまで迫っている。




 (第四十二幕.完)
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登場人物紹介

・北生 蒼(きたき そう)

本作シリーズの主人公であり、青の革命団のリーダー。

劣悪な家庭環境と冴えない人生から、社会に恨みを抱いている。

革命家に憧れて、この国を変えようと立ち上がる。

登場時は、大手商社の窓際族で、野心家の陰キャラサラリーマン。

深い闇を抱えており、猜疑心が強い。

自身や仲間を守るためになら手段を選ばず、敵に残忍な制裁を加えて仲間から咎められることも多い。

非常に癖のある性格の持ち主ではあるが、仲間に支えられながら成長していく。

仙台にて潜伏生活中に、恋心を抱いていた紗宙に告白。

無事に彼女と恋人関係になった。



・袖ノ海 紗宙(そでのうみ さら)

青の革命団メンバー。

蒼の地元の先輩であり、幼馴染でもある。

婚約者と別れたことがきっかけで、有名大学病院の医療事務を退社。

地元に戻ってコンビニでバイトをしていた。

頭も良くて普段はクールだが、弟や仲間思いの優しい性格。

絶世の美人で、とにかくモテる。

ある事件がきっかけで、蒼と共に旅をすることになる。

旅の途中でヒドゥラ教団に拉致監禁されるが、蒼たち青の革命団によって無事救出される。

そして蒼からの告白を受け入れ、彼とは恋人同士の関係になった。


・直江 鐘ノ助(なおえ かねのすけ)

青の革命団メンバー。

蒼の大学時代の親友で、愛称はカネスケ。

登場時は、大手商社の営業マン。

学生時代は、陰キャラグループに所属する陽キャラという謎の立ち位置。

テンションが高くノリが良い。

仕事が好きで、かつては出世コースにいたこともある。

プライベートではお調子者ではあるが、仕事になると本領を発揮するタイプ。

蒼の誘いに乗って、共に旅をすることになる。

結夏に好意を抱いており、典一とは恋のライバルである。


・諸葛 真(しょかつ しん)

青の革命団メンバー。

蒼が通っていた自己啓発セミナーの講師。

かつては国連軍の軍事顧問を務めていた天才。

蒼とカネスケに新しい国を作るべきだと提唱した人。

冷静でポジティブな性格。

どんな状況に陥っても、革命団に勝機をもたらす策を打ち出す。

蒼の説得により、共に旅をすることになる。

彼のおかげで今の革命団があると言っても良いくらい、その存在感と功績は大きい。

革命団のメンバーからは、先生と呼ばれ親しまれている。


・河北 典一(かほく てんいち)

青の革命団メンバー。

沼田の町で、格闘技の道場を開いていた格闘家。

ヒドゥラ教団の信者に殺されかけたところを蒼に助けられる。

それがきっかけで、青の革命団に入団。

自動車整備士の資格を持っている。

抜けているところもあるが、革命団1の腕っ節の持ち主。

忠誠心も強く、仲間思いで頼りになる存在でもある。

カネスケとは結夏を巡って争うことがあるが、喧嘩するほど仲が良いと言った関係である。


・市ヶ谷 結夏(いちがや ゆな)

青の革命団メンバー。

山形の美容院で働いていたギャル美容師。

勝気でハツラツとしているが、娘思いで感情的になることもある。

手先が器用で運動神経が良い。

灯恵の義理の母だが、どちらかといえば姉のような存在。

元は東京に住んでいたが、教団から命を狙われたことがきっかけで山形まで逃れる。

流姫乃と灯恵の救出作戦がきっかけで、革命団と行動を共にするようになる。

山寺の修行で投げナイフの技術を取得。持ち前のセンスを活かして、革命団の危機を何度も救った。

蒼や先生は、彼女のことを天才肌だと高評価している。

革命団のムードメーカー的存在でもある。


・市ヶ谷 灯恵(いちがや ともえ)

青の革命団メンバー。

結夏の義理の娘。

家出をして生き倒れになっていたところを結夏に助けられた。

15歳とは思えない度胸の持ち主。

コミュ力が高い。

少々やんちゃではあるが、芯の通った強い優しさも兼ね備えている。

秋田公国に拉致されたところ、革命団に助けれる。

それがきっかけで、共に行動することになる。

戦場では戦えないものの、交友関係を作ったりと、陰ながら革命団を支えている。

先生から才を認められ、彼の弟子のような存在になりつつもある。


・関戸 龍二(せきど りゅうじ)

青の革命団メンバー。

『奥州の龍』という異名で恐れられた伝説の不良。

蔦馬に親族を人質に取られ、止むを得ず暴走神使に従っていた。

蒼と刃を交えた時、彼のことを認める。

革命団が蔦馬から両親を救出してくれたことに恩を感じ、青の革命団への加入を決める。

寡黙で一見怖そうだが意外と真面目。

そして、人の話を親身になって聞ける優しさを兼ね備えている。

蒼にとって、カネスケと同等に真面目な相談ができる存在となる。

真冬の北海道でもバイクを乗り回すほどのバイク好き。


・酒々井 雪路 (しすい ゆきじ)

青の革命団メンバー。

かつては政治家を目指して、東京の大学で法律を学んでいたが、少数民族の為に戦いたいという思いから北海道へ渡り、AIMに参加する。

ツーリングが趣味で、それ故に機動部隊へと配属されてしまう。

だが、そこで龍二と出会い、彼の紹介で青の革命団へと加入。蒼や先生とともに、新国家の憲法作成することになった。



※第三十八幕から登場

・イカシリ

青の革命団メンバー。

AIM軍の腕利きのスナイパーで、アイヒカンの部隊に所属していた。

射撃の腕は一流で、雪愛(美咲)から密かにライバル視されている。

南富良野で蒼と一緒に戦った時、彼に才能を認められ、次第と行動を共にすることが多くなる。そしていつの間にか、蒼の配下のスナイパーとなり、彼の元で官軍と壮絶な銃撃戦を行う。

服が好きで、アイヌの伝統衣装を自分でアレンジして作った服を着こなしている。



※第三十六幕から登場

・間宮 恋白 (まみや こはく)

青の革命団メンバー。

麟太郎の娘で、年齢は4歳。

生まれたばかりの頃、麟太郎が官軍に捕えられてしまい、母子家庭で育つ。

紋別騎兵隊が街に侵攻した時、母親を殺され、更には自分も命を狙われるが、サクの手により助けられた。

それから灯恵の力により、北見の街を脱出して、一命を取り留める。

命の恩人でもある灯恵のことを慕っている。また彼女から実の妹のように可愛がられており、「こはきゅ」という愛称で呼ばれている。



※第四十四幕から登場

・間宮 麟太郎 (まみや りんたろう)

青の革命団メンバー。

恋白の父親で、元銀行員。

網走監獄に捕らえられていたが、AIMの手により助け出された。

娘が灯恵により助けられたことを知り、何か恩返しがしたいと青の革命団に参加する。

経済について詳しく、蒼からは次期経済担当大臣として、重宝されることになる。

また長治とは、監獄で共に生活していたので仲が良い。



※第五十一幕から登場

・許原 長治 (ゆるしはら ちょうじ)

青の革命団メンバー。

元力士。北海道を武者修行していた時、AIMに協力したことがきっかけで、網走監獄に捕らえられていた。

囚人達からの人望が熱く、彼らをまとめ上げる役を担っていた。

AIMに助けられた後は、青の革命団に興味を持ち、自ら志願する。

典一と互角にやりあうほど喧嘩が強く、蒼や先生からの期待は厚い。

監獄を共に生き抜いた間宮と、その娘の恋白とは仲が良い。



※第四十三幕から登場

・レオン

紗宙が飼っている茶白猫。

元は帯広市内にいた野良猫であったが、紗宙と出会い、彼女に懐いてAIM軍の軍用車に忍び込む。

大雪山のAIM陣で紗宙と再会して、彼女の飼い猫になった。



※第五十二幕から登場

・石井 重也 (いしい しげや)

青の革命団メンバーであり、日本の国会議員。

矢口宗介率いる野党最大の政党、平和の党の幹事長を勤めている。

党首である矢口から命を受け、用心棒の奥平とともに北海道へ渡航。先生の紹介で蒼と会い、革命団への加入を果たす。

政治に詳しい貴重な人材として重宝され。雪路とともに、新国家の憲法作成に携わっていくこととなる。

頑固で曲がったことが嫌いな熱い性格だが、子供には優しいので、恋白から慕われている。

元青の革命党の党員でもあり、革命家の江戸清太郎と親しい関係にあった為、革命家を志す蒼に強く共感していく。



※第五十四幕から登場

・奥平 睦夫 (おくだいら むつお)

青の革命団メンバー。

平和の党の幹事長である石井の用心棒として、共に北海道へ渡航。先生の紹介で蒼と会い、革命団への加入を果たす。

石井とは青の革命党時代からの知人で、かつて彼の事務所で勤務をしていた。その頃、江戸清太郎の演説を聞きに来ていた蒼にたまたま遭遇している。

普段は物静かだが、心の中に熱い思いを持った性格。



※第五十四幕から登場

羽幌 雪愛(はほろ ゆあ)

札幌官軍三将の豊泉美咲が、AIMに潜入する為の仮の姿。

青の革命団について調査する為に、蒼や先生に探りを入れたり、時には彼らの命を狙う。

その一方で、スナイパーとしてAIM側で戦に参戦。戦力として大いに貢献。紗宙や灯恵と仲良くなり、彼女らに銃の手解きをする。

また、その関わりの中で紗宙の優しさに触れ、スパイであることに後ろめたさも生まれてしまう。

性格はポジティブで明るいが、裏に冷酷さも兼ね備えている。



※第三十五幕から登場

・矢口 宗介 (やぐち そうすけ)

国会議員で、先生の旧友。

27歳の若さで初当選を果たし、33歳で野党最大の政党である平和の党の党首まで上り詰めた。

温厚で正義感が強く、日本国を腐敗させた神導党と激しく対立。神導党の後継団体であるヒドゥラ教団から、命を狙われている。

内からの力だけでは日本国を変えられないと判断して、旧友である先生が所属する革命団に未来を託すべく、石井と奥平を北海道へと派遣した。

蒼や先生にも負けず劣らずのロン毛が特徴。



※第五十四幕から登場

・イソンノアシ

AIMの首長であり、英雄シャクシャインの末裔。

サクの父親でもあり、温厚で息子思いの性格。それ故に、AIM軍や統治領域の民衆からの人望が厚い。

諸葛真が大学生の頃、遭難から救ったことがきっかけで、彼とは親友の仲になる。

サクの和人嫌いというトラウマを克服させる為に、彼を革命団の案内役に任命した。


・サク

イソンノアシの息子で、英雄シャクシャインの末裔。

毒舌で攻撃的な性格。

実行力と統率力、そして軍才があるので、AIM関係者からの人望が厚い。また父を尊敬していて、親子の関係は良好。

しかし、交戦的で容赦がないので、札幌官軍からはマークされている。

かつては、温厚かつ親しまれる毒舌キャラだったが、恋人を官軍に殺されたから変貌。和人を軽蔑して、見下すようになったという。

殺された恋人と瓜二つの紗宙へ、淡い好意を寄せる。



・ミナ

サクの元婚約者。

アイヌ民族の末裔で、自らの出自やアイヌの文化に誇りを持っており、北海道を愛していた。

2年前、裏切り者の手によってサクと共に捕らえられる。

そして、彼の目の前で、松前大坊に殺された。



※第三十三幕と第五十幕で登場

・ユワレ

サクの側近であり、幼馴染でもある。

正義感が強く、曲がったことが好きではない性格で、みんながサクを恐れて諌めようとしない中、唯一間違っていることは間違っていると言ってのける存在。

また忠義に熱く、蒼から何度も革命団への入団オファーを受けるが、全て断り続けている。



※第三十三幕から登場

・アイトゥレ

AIM幹部の筆頭格で、イソンノアシやサクの代わりに、軍の総大将を務めることも多々ある。

歴史ファンで、特に好きなのが戦国時代。お気に入りの武将は本多忠勝。

道東遠征で、共に戦うカネスケの才を見抜き、別働隊を任せるなど、彼に軍人としての経験をつませる。



※第三十八幕から登場

・京本 竹男(きょうもと たけお)

北海道知事であり、札幌官軍の代表。

日本政府の指示の元、北海道の平和を守る為に、AIMとの紛争に身を投じた。

政府に忠誠を尽くす一方で野心家でもあり、いつかは天下を取ろうと画策している。

それ故に、紛争を理由に軍備の増強を図る。

人の能力を的確に見抜き、公平な評価を下すことから、部下からの信頼は厚い。

公にはしていないがヒドゥラ教団の信者で、土龍金友のことを崇拝している。



※第三十二幕から登場

・土方 歳宗 (ひじかた とししゅう)

札幌官軍三将の筆頭で、身長190㎝超えの大男。

京本からの信頼も厚く、札幌官軍の総司令官の代理を務めることもある。

武術の達人で、国からも軍人として評価されており、一時期は先生と同じく国連軍に所属していた経験もある。

北海道の治安を守る為にAIMとの戦争で指揮を取るが、特にアイヌやAIMを憎んでいるわけではない。

部下からも慕われていて、特に美咲は彼のことを尊敬している。また彼女と同様に松前の残虐非道な行為をよく思ってはいない。



※第五十一幕から登場

・豊泉 美咲(とよいずみ みさき)

札幌官軍三将の1人。

セミロングの銀髪が特徴的なスナイパー。銃の腕前は、道内一と言われている。

性格はポジティブで、どんな相手にも気軽に話しかけられるコミュ力の持ち主。

京本からの指示を受け、青の革命団の実態調査の任務を引き受ける。

キレ者で冷酷な所もあるが、非道な行為を繰り返す同僚の松前を心底嫌っている。



※第三十ニ幕から登場

・松前 大坊(まつまえ だいぼう)

札幌官軍三将の1人。

人柄はさておき、能力を買われて三将の地位まで上り詰める。

サクの恋人を殺害した張本人。

類を見ない残忍性で、AIMおよびアイヌの人々を恐怖に陥れた。

再びAIM追討部隊の指揮官に任命され、AIMと革命団の前に立ち塞がる。



※第三十ニ幕から第五十幕まで登場

・エシャラ

イソンノアシの弟で、サクの叔父に当たる人物。

元AIMの幹部で、考え方の違いから、札幌官軍に内通して寝返る。

サクとミナを松前大坊へ引き渡し、ミナの殺害に少なからず加担した。

温厚だが、自分の信念を曲げない性格。

AIMをえりもへ追いやって以降は、松前の手先として帯広地域を統治していた。



※第三十三幕〜三十四幕で登場

・御堂尾 神威 (みどうお かむい)

紋別騎兵隊の副隊長。

日本最恐の軍隊と恐れられる騎兵隊の中でも、群を抜く武勇と統率力を誇る。

しかしその性格は、冷酷で自分勝手で俺様系。

人を恐怖で支配することに喜びを覚え、敵対した者は、1人残らず殺し、その家族や周りにいる者、全てを残忍な方法で殺害。

また、騎兵隊の支配地である紋別の町では、彼の気分次第で人が殺され、女が連れさらわれていた。

その残酷さは、松前大坊と匹敵するほど。

結夏に因縁があるのか、執拗に彼女のことを狙う。



※第四十一幕から登場


・御堂尾 寿言 (みどうお じゅごん)

神威の弟で、紋別騎兵隊の隊員。

兄と同じく残忍な性格。

兄弟揃って紋別の町にふんずりかえり、気分で町の人を殺したり、女性に乱暴なして過ごしている。

食べることが好きで、体重が100㎏を超えている大男。

兄の神威と違い、少し間抜けな所があるものの、他人を苦しめる遊びを考える天才。

大の女好き。



※第四十二幕から第四十八幕まで登場

・北広島 氷帝 (きたひろしま ひょうてい)

紋別騎兵隊の隊長で騎兵隊を最恐の殺戮集団に育て上げた男。

『絶滅主義』を掲げ、戦った相手の関係者全てをこの世から消すことを美学だと考えている。

松前大坊からの信頼も厚く、官軍での出世コースを狙っていた。



※第四十六幕から第四十九幕まで登場

・仁別 甚平 (にべつ じんべえ)

黒の系譜に選ばれた者の1人。

カニバリズムを率先して行い、雪山で焚き火をして遭難者を寄せ付け、殺害しては調理して食べる、という行為を繰り返している。

特に若い娘の肉を好んで食す。

リンに狂酔しており、彼女の興味を一心に浴びる蒼を殺そうと付け狙う。



※第四十二幕から登場

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