【chapter8】石段の足あと

文字数 624文字

翌朝、目を覚ますと王子がバスルームを使っている音がする。

まだ揺蕩(たゆた)う意識の中、リネンに王子の余香(よこう)を感じた。

彼の香りは私を幸せにする。

「おはよう。」

バスルームから戻ってきた王子が再びベッドに脚を差し入れた。

「おはよう。」

日差しの眩しさに目を細めながら私がそう答えると王子が首筋にキスをする。

「んん…。」

私が息を漏らすと王子が胸の谷間に顔を埋めた。

「あゝ、んん…。」

王子が私の着衣を捲り上げて乳房の先端に唇を寄せる。

「あっ、イヤ、ん。」

私は、急激に体温が上がるのを感じた。

「姫の身体、すごく火照ってる。」

王子はさらに私の身体を(まさぐ)り続けた。

私がひときわ大きく快感に背中をのけぞらせると、

「あゝ、もう我慢できない。」

王子が私の脚の間に自身の身体を沈める。

時に激しく深く浅く…私の乳房を(まさぐ)りながら王子がそのしなやかな肢体を揺らす。

互いの唇を(むさぼ)りながら深い部分で繋がっていると王子が切ない表情を見せた。

「あゝ、姫もう…あゝ!!」

王子がひときわ強く私を抱きしめると動きを止めた。

荒い息をした王子が私のおでこに優しくキスをする。

私はこの瞬間が好きだ。

王子が身支度を済ませると扉の外まで送り出した。

「気をつけて。いってらっしゃい。」

そう言ってキスをすると王子は馬に乗って走り去った。

再び塔の石段を登り始めると王子の靴跡に目が止まる。

公務で泥池にでも出かけたのだろうか。

土が彼の『足あと』となって、そこに残されていた。

その足あとすらが愛おしい。

私は王子に心を寄せていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み