第13話 22歳の誕生祝い

文字数 870文字

3月20日は未希の22歳の誕生日だ。期せずして今日は離婚が成立して100日目となり、未希は再婚が可能となった。

そのお祝いと言うのもおかしいので、誕生祝いということでいつものレストランへ食事に誘った。

「ここで誕生祝いをするのは18歳、19歳、20歳の時で、これが4回目になった。覚えている?」

「18歳のときは高校へ復学することが決まっていたし、19歳のときは調理師専門学校へ行くことが決まっていた。20歳の時はホテルへの就職が決まっていた。私の誕生日は人生の節目なんですね。そこまではすべて山内さんのお陰でした」

「今日も人生の節目の誕生日になった。再出発のね」

「去年の21歳の誕生日にも山内さんと一緒にここへ来たかった。そうしたら、あんなことにはなっていなかったかもしれない。来年も一緒に来たい。絶対に連れてきてください」

「ああ、連れてくると約束しよう」

「山内さんは約束を必ず守ってくれる。昔からそうでした。安心していられます」

「今日はいつものようにディナーを頼んでおいた」

「ありがとう。本当にありがとう」

思い出をたどることは良いことかもしれない。その時の状況とその時の気持ちを客観的にみられるからだ。こんなことになろうとは、前回に来た時は思ってもみなかった。

料理が運ばれて来た。ワインで乾杯をする。未希はプロらしく、料理をじっと見て、匂いを嗅いで、ソースを少しなめてみて、それから一口食べる。それを俺は眺めている。今度こそ未希を幸せにしてやらなければと思っている。

デザートに頼んでおいた誕生祝いのケーキが運ばれて来た。

「ろうそくは22本ではなく、4本にしてもらった。なぜだかわかる?」

「分からない」

「『22才の別れ』という曲があって、ケーキに22本の蝋燭をともす歌詞がある。悲しい別れの歌だから縁起を担いで22本はやめた。その代わり、ここでの誕生祝いの回数の4本にした。来年は5本ともそう」

「ありがとう」

未希は喜んで蝋燭を吹き消した。本当に来年も二人でまた来たい。帰りはここに来た時にいつもしていたように手を繋いで歩いてアパートまで帰った。
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