第40話 誕プレ作戦

文字数 2,377文字

 久々のグループチャットを送って来たのは水樹だった。

〈このグループ使うの久々だけど皆来れる?〉

 という内容だった。
 また何かしらやるのだろうかと考えていると、次々とメンバーがメッセージを送る。
 なので、俺も慌ててチャットを送る。

〈大丈夫だよ〉

 俺が送った事でメンバー全員が揃った。
 全員が揃った事を確認した水樹は

〈及川は誕プレいつ渡すんだ? 中居の誕生日明後日だぞ〉
〈それは、中々タイミングが無くて……〉
〈でも誕プレは当日に渡した方がいいよ~〉

 と、及川の誕プレ作戦の話し合いが始まった。
 及川が恥ずかしがってなのか中々誕プレを渡さないので水樹が気を利かせたのだろう。
 すると水樹が

〈小耳に挟んだんだけど、早川も中居狙ってるらしい。誕プレも用意してるとか〉
〈ええ!? 麻耶も中居の事狙ってるの? どうしよう〉
〈佳奈子あのグループの子と仲良いから何か聞いてないの?〉
〈前に麻耶が中居いいかもって言ってるっていうのは聞いてたけど……〉
〈だったらもっと早く行動しとけよ〉
〈うぅ、麻耶に目付けられたくないし……〉

 どうやら及川にライバルが現れたらしい。
 しかもよりにもよって早川麻耶(はやかわまや)らしい。
 早川は所謂ギャルグループのリーダーで、楓とは違ったカリスマを持っている。
 一言で言ってしまえば女王というのがしっくり来る。
 女王を敵に廻すと後々厄介な事になりそうだ。
 及川が怖気づくのも仕方ない。
 そう考えていると楓が

〈好きなら相手が誰だって遠慮しちゃダメだよ!〉

 と及川を叱咤する。
 俺はそれに乗っかり自虐を混ぜて

〈そうだぞ! 俺なんて学校中の男子敵に回したからな〉

 と言うと水樹が

〈さすが友也、説得力ハンパ無いな。でも分かったろ? 好きなら周りを気にするな〉

 と援護射撃をしてくれた。
 その時、グループではなく個別で通知が来た。
 確認すると楓からだった。

〈ありがとう、嬉しい〉

 と来たので

〈気にすんな〉

 と送った。
 再びグループを覗くと、及川が

〈分かった、プレゼント渡す! 告白できるかはわからないけど〉

 と決意を固めたようだ。
 
〈よっしゃ、よく言った。で、どうする? どうやって渡すかだよな〉
〈休日だしみんなで出かけて、さりげなく二人きりにするっていうのは?〉
〈お!それいいな〉

 と誕プレ作戦が話し合われている。
 俺は一つ疑問に思ったので少し強引に割って入る。

〈ちょっといい?〉
〈どうした?〉
〈なに~?〉
〈何か案があるの?〉

 と全員の目を引いて

〈そもそも中居って及川の事どう思ってるんだ?〉
〈……〉
〈……〉
〈……〉

 俺の問いかけにチャットが止まる。
 しかし、これは確認しといた方がいいと思う。
 フラれる所とか見たくないしな。

〈水樹はその辺知らないのか?〉

 と問いかけると

〈友也は知らないだろうけど、今年の初めまで彼女居て別れたんだよ〉
〈そうだったのか。その後気になる子がいるとか聞いてる?〉
〈いや、元カノの事もあって中々聞ける雰囲気じゃなかったからな〉

 俺と水樹のやり取りを見た及川が

〈やっぱり止めといた方がいいかな?〉

 と弱気になってしまった。
 そこに楓が

〈それとなく中居に聞けないの? 別れてからそこそこ経つじゃない?〉
〈う~ん〉

 好きな人が居るかどうかだけでも知りたい所だ。
 すると水樹が

〈少し待っててくれるか。これから中居に聞いてみるわ。及川炊きつけたのおれだしな〉
〈わかった~〉
〈お願いね水樹〉
〈頼む〉

 と一端水樹が抜ける。
 上手く中居から聞き出せるだろうか。
 でも俺の観察からすると、水樹が一番人の懐に入るのが上手いから聞き出せるかもしれない。
 そう考えている間もグループチャットでは及川と楓が盛り上がっていた。

〈それはビックリするよ! 佐藤も紛らわしい事すんなし!〉
〈でも私の早とちりだったから〉

 どうやら今日の出来事を話していたらしい。
 やめてくれ! すごい恥ずかしいから!

〈楓、余計な事いうなよ~〉
〈ごめん、つい〉
〈佐藤! 楓を泣かすなんて見損なった〉
〈いや、あれはお互い勘違いしちゃってたから〉
〈そうそう! だから友也君は悪くないよ〉
〈でも俺の言い方も悪かったし〉
〈ううん、私が勝手に勘違いしただけだから〉

 とやり取りをしていると

〈もー! イチャイチャは二人きりの時にしなさい!〉
〈はい〉
〈ごめんなさい〉

 及川に怒られた。でも別にイチャイチャしてた訳じゃないんだけどな。
 それから15分程して水樹が戻って来た。

〈ただいま〉
〈おかえり~〉
〈おか〉
〈どうだったの?〉

 及川は気になってしょうがないみたいだな。
 水樹は「まぁ落ち着け」と言ってから

〈単刀直入に言うと、好きな奴はいるらしい〉
〈へ~、そうなんだ〉
〈好きな奴いるのかぁ。誰なんだろう〉

 おお! 本当に聞き出した。

〈とりあえず明後日みんなで集まる事になったから、その時プレゼント渡せ〉
〈が、頑張る〉
〈ファイト~〉
〈頑張れ〉
〈細かい事はまた明日でいいか? 中居と話さなきゃなんなくなったから〉
〈オッケ~〉
〈わかった~〉
〈了解〉

 という事で今日のグループチャットはお開きになった。
 中居にも好きな奴いたんだな。

 と失礼な事を考えていると、再びスマホの通知音がなる。
 画面を確認すると、水樹からグループへの誘いだった。
 メンバーは水樹、楓、水瀬、俺だけだった。

 さっきまで居た及川が入っていないのに違和感を覚えながらも参加ボタンを押した。
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