明かされる真実
文字数 2,535文字
青年の指差す先。
屋敷の、あの
玄関は開け放たれ、その前に見慣れない自動車が三台停まっていた。
背広を着た肩幅の広い男が腕を振り回し、何やら怒鳴っている。それに合わせて、制服を着た警官達が右往左往していた。
キヨは、ふと、青年と如月の旧知の仲であったかのような言動を思い出す。しかし、そのことを口に出してはいけないような――何とも言えない気持ちになった。
キヨの思いを知ってか知らずか、青年は背景を語り始める。
「ただ、都路というヤツは、この辺りではちょっとした名士なんだ。名士が聞いて呆れるけど……ここは娘さんの静養の為の、別荘という話だったな。とにかく、筋の通らない理由があって、物的な証拠がないことには、警察は行動ができなかった。だから、ボクが君を連れ出したんだ」
背広服姿の男が何やら
助かったのはキミの大活躍のお蔭だと、青年は破顔した。
しかし、キヨは顔を曇らせる。
と、ここで青年は
ブルルッと、ナナオが鼻を鳴らした。
罪人を乗せた二台の車が、門を出た。
キヨと青年とナナオが身を隠す脇を、
窓際には、それぞれ警官が座っていた。
キヨは、反射的に喉元に
見れば、爪が短い。
駄目だ。
こんなに爪が短いなんて。
あの夜――。
苦しくて、思わず、己の首を絞める手を引っ掻いた。長く伸びた爪が、意図せぬ深手を負わせる。赤く荒れたその手は、小さな叫びと共に引っ込められた。
その隙にキヨは転がり、部屋の端まで逃げる。
青年の姿が暗黒に溶け、代わりに母が、あれほど思い出せなかったはずの母の顔が、視界いっぱいの大写しで現れた。
キヨが寝付くまでお話をしてくれていた、あの優しい唇を奇妙に変形させている。唇だけではない。目も、鼻も、頬も、毛穴の一つ一つまで、捻くれ、歪み、崩れていた。
キヨのか細い、素っ首は、母の手にヨリ、キツクキツクシメアゲラレ――。
青年はキヨを揺さぶり、抱き締めた。
――暖かい。
キヨは、我に返るその寸前。
ボクもキミだった――と、聞こえた気がした。