2-12 マネーマン3

文字数 1,664文字

 「俺は注目集めるヒーローになった。頑張って稼いだお金で楽しく過ごすことによって、貧乏人に夢を与えてやってるんだ!」マネーマンは本気でそう思いだした。さて、次は何をやろう?
 「後楽園遊園地で僕と握手!記念に一万円差し上げます。」
 「一番早いリプライに一千万円差し上げます。」
 「柄澤が楽しめるアイデア募集!優秀プレゼンには一億円差し上げます。」
 ここまでしたが、登録者数が八十万人で止まった。秘書はいくら使ったのか考えるのも嫌になっていた。経理から勘定科目を宣伝費としていたが、宣伝費が利益の2割を超えた。これは明らかに使いすぎである。そろそろマネーマンを止めないと、dadaパレスに損害が発生する。
 「社長、いったん勝負はお預けにしませんか?予算が大幅に超えています。」
 「俺は代表取締役だ。創業者だ。社長だから、自分の会社の金を思うように使って何が悪い!登録者が百万人に届いてない。ここで引いたら負けになる。それに、分かっているのか?ドロー嬢が九十万人まで登録者を増やしているんだ。なんでこうなった!お前らが金の使い方間違ったんだろう?それを止めろと言うのは筋が違う。お前らに必死さがないんだよ!必死にあるために、勝つまで全員3割減給だ。今すぐ従業員全員に通知しろ!」
 一列に立って並ばされたチーム柄澤は、俯くことなく、死んだ目で、歯を食いしばった。
 「なんだ?いい大人が集まって、何にも出来やしない。悔しくないのか!このままだと、お絵かき女子高生に負けるんだぞ!この大きな組織がコケにされるんだ!」
 立たされた従業員たちは、なんでこうなったのか考えようとしたが、あまりうまく考えることができなかった。ただ、マネーマンがいなければ、元に戻ることは理解していた。マネーマンは確かに有能で、ここまで会社を大きくしたのは間違いない。マネーマンが紙のカーテンを生み出し、売り出して、人が集まり、大きな影響を持ったのも間違いない。だが、このままdadaをマネーマンに任せていたら、潰れる。会社は個人の持ち物ではない。株主のものでもない。かといって従業員のものでもない。案外、誰のものでもない。
 会社とは、人が集まって何かをみんなが一緒にやっているときはお金を生み出すシステムになり、社会に経済として貢献するが、そのシステムがお金を消費するだけの機能になると、会社でなくなり、社会に金を吐き出す古い貯金箱に変わってしまう。
 秘書をはじめとするチーム柄澤がミーティングを始める。マネーマンから盗聴がないかしっかり調べて、十人が集まり、密室で話し合う。
 「どうします?これ以上、無駄なお金使いたくありません。」
 「しかし、マネーマンの意向があるからねえ。それに三割減給なんてされたら、家賃が払えない。どうしよう。こんな消耗戦続ける意味がない。」
 「止めさすには、マネーマンが百万人登録者達成すればいいんだけど、もう、登録者を買うことができない。それに、お金もらって登録者になっても、登録抜ける人が後を絶たない。もし、抜けてなかったら、もう百万人達成しているはずだけど、アンチが暗躍している。」
 「アンチの連中、暇なんだろうな、もしくはマネーマンに対する妬みだ。」
 「でも、登録者を買っていくしかないからね。カード会社のポイント獲得に絡ませたり、ショッピングサイトのポイント還元とかしたけど、でも、もう限界。あとは街角に立ってその場でチャンネル登録してもらって、現金配るしかないね。」
 「まるで昔の乞食みたいだけど、逆に金配るのか、もう意味がわからん。」
 「誰がするの?バイト雇ったりするとまた、無駄なお金が出ていく。かといって、マネーマン街角立たせたら、事件が起きるからな。アンチがすごいことになっている。」
 「本人が嫌われていること気がついたほうがいいけど、そんなことになったら、やばいしね。」
 秘書は困り果てて俯いた。そこにはマネーマンに説明した資料があった。
 「いいこと思いついた!最後まで立ってた方が勝ちでしょ?これ、いけるかも!」
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