第4話 事情を聞きました

文字数 1,065文字

「村長! 領主がいない、とはどういう事ですかっ!?」
 上司との連絡の後、僕は村長に問いただした。
「我々も戸惑っているのです。なんでもお嬢様が聖女候補に選ばれた、とかなんとかでその都合で家族共々、王都の方へ行ってしまわれまして……」
 それを聞いて頭を抱えてしまった。
 確かに聖女に選ばれた少女は王都に行き教会で試練を受けなければならない。
 しかし、それにしても領主という立ち位置からそんな簡単に引っ越せる訳がない。
「代わりの役人とか大貫とかはいないんですか?」
「それが……、一緒について行ってしまったんです」
 ……はい?
「いや、それマズイじゃないですか? 職務放棄じゃないですか」
「えぇですから前の神官様にお伝えしていたんですが、その方が急にお亡くなりになられて……」
 ん? その話を聞いてなんか違和感を感じた。
「あの、前任の神官って病気で亡くなられたんですよね?」
「えぇ、長年ずっとこの村で我々の相談にものって戴いて良くしていただきました。姿を見せないと思い部屋の方に行きましたら亡くなっていたんです」
 その話を聞いて僕は『もしかしたら……』という思いがした。
 前任の神官は病気で亡くなったのでは無かったんじゃないか、と。
 知ってはいけない事を知って消されたのではないか、と。
 王都にいた頃はそんな噂を何度も聞いた事があるし、可能性としては高い。
 コレに関しては後で調べてみる事にしよう。
「事情は分かりました。若輩者ですがお力になれるように頑張ります」
「どうぞ、よろしくお願いいたします」
 村長はそう言って深々とお辞儀した。

「ミカウスさん、お話終わった?」
「あぁ、終わったよ、おっお風呂に入れてもらったのか」
「うん♪ エミリお姉ちゃんにいれてもらったの」
「私の小さい頃の服ですけど気に入ってもらったみたいでよかったです」
 村長との話し合いは終わって、部屋に戻るとレダが待っていた。
 すっかり汚れも落ちて可愛くなっていた。
「レダちゃん、凄く大人しかったですよ。暴れたりもしなかったんです」
 中には風呂に入ることを嫌がる子もいるからな。
「あの、それで実は気になった事があるんですけど」
 エミリが小声で僕に言ってきた。
「ん? 気になった事?」
「実はレダちゃんの左肩の所に痣みたいな物があったんです」
「痣? 怪我とかで出来たものじゃなくて?」
「それとは違うんです。生まれつき出来た物じゃないか、て思ってるんです」
 う~ん、実物を見てみないと何とも言えないなぁ……。
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