第1話 カレーなる一族のモーニングルーティン

文字数 842文字

戦車から亀の子タワシまで、何でも政府に納める政商「逸菱財閥」一族、世間は彼らの事をカレーなる一族と呼ぶ。

そして、彼らには確固たるモーニングルーティンがあった。

○逸菱家の屋敷、午前八時

逸菱家の人々が食卓を囲んでいる。

(メイド)皆さーん、朝食の用意が出来ました。
うーむ、いいスパイスの香りだ。

今日のスパイスは、どこの産かな?

いの一番に席に着く、当主の宗太郎。

スープカリーの湯気を見て目を細める。

はい、ボンベイ産です。
うむ、あすこのスパイスには貴婦人のような気品を感じる。なんたって、曽祖父以来のひきたてだからね。
お父様、ご機嫌麗しゅう。

おはようございます。

今、ダイエット中だからお肉はダメよ。

ベジタブルカリーじゃなきゃ。

席に着く三女のJK麗華。
うむ、おはよう。

贅沢や我儘は、社会人になってからにしなさい。

威儀を正しくする宗太郎。
おはようございます。 

あなた、また朝の行水をなさったの?

温水シャワーでよろしいんじゃないかしら。

続いて席に着く、内縁の妻竜子。
行水と言うな。

あれは、ガンジス河の沐浴を模したものなのだ。

威厳を示す当主の宗太郎。
おはようございます。

(たまには和食が食べたいな)


席に着く次男健太郎。
うむ、おはよう。

他のものは?

健二郎お兄ちゃんは、海外支社の視察。 

お姉ちゃん二人は、アメリカに留学中よ。

うむ、そうであったな。
社長、新型戦闘機納入の件なんですが...
その話は、本社で聞こう。

カリーが冷める。 

さっ、皆でいただこう。

いただきまーす。
おいしーい。 

ワタシ、ダイエットが開けたら、ビーフカリーが食べたいな。

ビーフ?

牛はダメだ。あれは、神様の乗り物だからな。

しーん。
気まずくなる朝の食卓。
そっ、そうだ。

麗華にも彼氏が出来たって言ってたな。

彼にもカレーつくってやったら?

麗華のカレーよって。

空気が読める、機転の利く健太郎。
なんか、ややこしいな。
あはは、あははは。

(一同、ぎこちない笑い)

華麗なる一族、逸菱家の朝はカレーで始まる。

それは、確固たる一族のモーニングルーティンなのだ。

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