第5話 特 定 完 了
文字数 2,161文字
怪しげなサプリメントの投稿からさらに二ヶ月ほど辿ったところ、二人は入里麻理菜がアメリカ遠征について投稿していることを発見した。
「こいつ、十月にアメリカに行った投稿してるけど、どうも怪しいな。」
「一週間くらい滞在してるみたいだな。毎日何か投稿してる。」
「ちょっと待て、これ会社の研修か何かなんじゃないか?」
アメリカに着いてすぐの投稿にはこうあった。
「今日からアメリカ!飛行機の窓からは、日本では見られない景色が広がってました☆アメリカでも会社の祭典で勉強してきまーす(^o^)」
投稿から、会社のイベントであることは間違いなかった。そこからはアメリカで買った食事やイベントの様子が毎日投稿されていた。
「これ、ユタ州の食料品屋だな。ということは遠征先はユタ州か。ますます怪しい。」
済が注目したのは写真に写っていた紙袋だった。そこには「Harmons」というロゴが印刷されており、調べたところユタ州で展開されている食料品チェーンであることが分かった。ユタ州はモルモン教の本拠地ということでも有名だが、マルチ商法の本部が多いことでも知られている。
さらに投稿を辿ると、ユタ州の州都、ソルトレイクシティで行われたセミナーの様子が投稿されていた。その中の一枚の画像を、済は見逃さなかった。
「『常識に囚われてる人達じゃ絶対に参加できない、素晴らしいイベントに参加して凄くワクワク!どう?こっちの世界が少しでも伝わるかな!?(*^^*)』か。モノクロ自撮りまで付けて随分とご機嫌だな。」
「末尾についてる顔文字が絶妙に古いのは一体何なんだよ。いやちょっと待て、この写真ひょっとして手がかりになるんじゃないか?」
「どれだ?」
「ほら、これだよこれ!薄暗いセミナールームの奥に、めちゃめちゃ薄いけど浮かんでるやつ!」
済が指摘したのは、一枚の講演写真だった。薄暗いセミナールームを後ろから撮ったもので、かなり奥の方に登壇者がいることくらいしか分からない。しかし、何度も特定祭りに参加していた済は目ざとかった。登壇者の真上に、目を凝らさないと気づかない程度の大きさで、距離が遠すぎるためにやや滲んだ文字が浮かんでいた。画像をダウンロードし、拡大してみる。画像編集ツールでコントラストを上げると、そこに浮かび上がったのはこの文字だった。
NatureVantage
「これ、さっきのサプリを作ってる会社だな。」
「会社のイベントにデカデカと出ているということは間違いないな。入里麻理菜はマルチ商法団体、NatureVantageの会員だ。ちょっと調べてみたけどNatureVantageは前に薬機法違反の勧誘をして処分されているし、被害者の会も存在してる。これはアウトだな。」
「それにしても、海外にまで行くということはかなり成績が良いのか?」
「いや、Facebookの経歴では現職がコールセンターになってるし、コールセンターで何かの賞を貰ったという投稿があった。多分NatureVantageのコールセンターで働きつつ勧誘もやってるんだろう。それで、日本支部のコールセンターで優秀だったから米国本部のセミナーにも呼ばれたと、大方そんなとこだろうな。もう少し詰めてから次の行動に移るぞ。」
「ついに証拠を突きつけるんだな!!」
具体的な会社を特定してしまえばこっちのものである。NatureVantageの情報を調べたところ、日本支部とそのコールセンターは中目黒カルマタワーに入っていることが分かった。平日昼間に入里麻理菜が写真を投稿していたビルである。さらにTwitterのフォローを確認したところ、NatureVantageの公式アカウントをフォローしており、FacebookではNatureVantageのページにいいね!していることが分かった。ここまでくれば確実だった。
「よし、ここまでくれば間違いないな。後で証拠を消されたら困るから、ヨッさんも協力して証拠のスクショを保管してくれ。」
「最後まで抜かりないな笑」
「喧嘩を売られたからには徹底的にやらんとな。そういえばTwitterのアカウント、Nyuri0413ってなってたけど末尾の文字列は誕生日かな?もうすぐじゃないか。」
「Facebookでも誕生日が四月十三日になってるな。今度の土曜日か。高専生連合だっけ?学生団体の実行委員やってるからか去年の誕生日も沢山メッセージ来てるみたいだな。」
「ヨッさんも見られるってことは誕生日とメッセージは公開になってるんだな。ん?待てよ、もうすぐ誕生日で、メッセージは公開、つまり誰でもできる……。なるほど。あと、そういえば同期に同じような団体の活動してる奴いなかったっけ。」
「あー新城だろ。あいつは確か高専生連合から分派した高専生連盟の代表で、入里とは仲悪かったな。」
「なるほど、内ゲバで生まれた団体の代表と入里は犬猿の仲、そして誕生日メッセージは全体公開……。ちょっと新城に連絡してみるわ。」
吉井と会話しているうち、済の頭の中には入里を叩き潰す、あるアイディアが浮かんだ。済はLINEを開き、新城にメッセージを送った。
「こいつ、十月にアメリカに行った投稿してるけど、どうも怪しいな。」
「一週間くらい滞在してるみたいだな。毎日何か投稿してる。」
「ちょっと待て、これ会社の研修か何かなんじゃないか?」
アメリカに着いてすぐの投稿にはこうあった。
「今日からアメリカ!飛行機の窓からは、日本では見られない景色が広がってました☆アメリカでも会社の祭典で勉強してきまーす(^o^)」
投稿から、会社のイベントであることは間違いなかった。そこからはアメリカで買った食事やイベントの様子が毎日投稿されていた。
「これ、ユタ州の食料品屋だな。ということは遠征先はユタ州か。ますます怪しい。」
済が注目したのは写真に写っていた紙袋だった。そこには「Harmons」というロゴが印刷されており、調べたところユタ州で展開されている食料品チェーンであることが分かった。ユタ州はモルモン教の本拠地ということでも有名だが、マルチ商法の本部が多いことでも知られている。
さらに投稿を辿ると、ユタ州の州都、ソルトレイクシティで行われたセミナーの様子が投稿されていた。その中の一枚の画像を、済は見逃さなかった。
「『常識に囚われてる人達じゃ絶対に参加できない、素晴らしいイベントに参加して凄くワクワク!どう?こっちの世界が少しでも伝わるかな!?(*^^*)』か。モノクロ自撮りまで付けて随分とご機嫌だな。」
「末尾についてる顔文字が絶妙に古いのは一体何なんだよ。いやちょっと待て、この写真ひょっとして手がかりになるんじゃないか?」
「どれだ?」
「ほら、これだよこれ!薄暗いセミナールームの奥に、めちゃめちゃ薄いけど浮かんでるやつ!」
済が指摘したのは、一枚の講演写真だった。薄暗いセミナールームを後ろから撮ったもので、かなり奥の方に登壇者がいることくらいしか分からない。しかし、何度も特定祭りに参加していた済は目ざとかった。登壇者の真上に、目を凝らさないと気づかない程度の大きさで、距離が遠すぎるためにやや滲んだ文字が浮かんでいた。画像をダウンロードし、拡大してみる。画像編集ツールでコントラストを上げると、そこに浮かび上がったのはこの文字だった。
NatureVantage
「これ、さっきのサプリを作ってる会社だな。」
「会社のイベントにデカデカと出ているということは間違いないな。入里麻理菜はマルチ商法団体、NatureVantageの会員だ。ちょっと調べてみたけどNatureVantageは前に薬機法違反の勧誘をして処分されているし、被害者の会も存在してる。これはアウトだな。」
「それにしても、海外にまで行くということはかなり成績が良いのか?」
「いや、Facebookの経歴では現職がコールセンターになってるし、コールセンターで何かの賞を貰ったという投稿があった。多分NatureVantageのコールセンターで働きつつ勧誘もやってるんだろう。それで、日本支部のコールセンターで優秀だったから米国本部のセミナーにも呼ばれたと、大方そんなとこだろうな。もう少し詰めてから次の行動に移るぞ。」
「ついに証拠を突きつけるんだな!!」
具体的な会社を特定してしまえばこっちのものである。NatureVantageの情報を調べたところ、日本支部とそのコールセンターは中目黒カルマタワーに入っていることが分かった。平日昼間に入里麻理菜が写真を投稿していたビルである。さらにTwitterのフォローを確認したところ、NatureVantageの公式アカウントをフォローしており、FacebookではNatureVantageのページにいいね!していることが分かった。ここまでくれば確実だった。
「よし、ここまでくれば間違いないな。後で証拠を消されたら困るから、ヨッさんも協力して証拠のスクショを保管してくれ。」
「最後まで抜かりないな笑」
「喧嘩を売られたからには徹底的にやらんとな。そういえばTwitterのアカウント、Nyuri0413ってなってたけど末尾の文字列は誕生日かな?もうすぐじゃないか。」
「Facebookでも誕生日が四月十三日になってるな。今度の土曜日か。高専生連合だっけ?学生団体の実行委員やってるからか去年の誕生日も沢山メッセージ来てるみたいだな。」
「ヨッさんも見られるってことは誕生日とメッセージは公開になってるんだな。ん?待てよ、もうすぐ誕生日で、メッセージは公開、つまり誰でもできる……。なるほど。あと、そういえば同期に同じような団体の活動してる奴いなかったっけ。」
「あー新城だろ。あいつは確か高専生連合から分派した高専生連盟の代表で、入里とは仲悪かったな。」
「なるほど、内ゲバで生まれた団体の代表と入里は犬猿の仲、そして誕生日メッセージは全体公開……。ちょっと新城に連絡してみるわ。」
吉井と会話しているうち、済の頭の中には入里を叩き潰す、あるアイディアが浮かんだ。済はLINEを開き、新城にメッセージを送った。