▲ヴリトラ 宇宙を塞ぐもの

文字数 8,047文字

 二人のハッキングによって、シャフトが隠ぺいしていた歴史的事実が続々と判明した。
 ヴィクトリア地方。そこにはステラクォーツ発電所があり、シャフトはそのヴィクトリア・クリスタルで秘密の実験をしていた。住人はたびたび奇妙な発光現象や異常気象を目撃していたのである。
 百年前、シャフトはヴィクトリアのステラクォーツ発電所で禁断の実験、ヴリル・デストロイヤーの実験を行った。ヴィクトリア地方では、奇妙な発光現象や、不可解な天候、謎の雲が目撃されていた。そしてシャフトはその実験に失敗した。それで爆発が起こり、地震、津波を誘発した。つまり最初にクリスタル発電所の爆発があって、それが地震を引き起こしたのだ。因果関係は、一般に伝えられているのとまるで「逆」。しかもツーオイと接続していたため、アクロポリスが丸々停電するという失態も起こした。それは結局、ツーオイを掌握できなかった事によるミスだった。
 ヴィクトリアの津波でクリスタル発電所が爆発したが、その問題の深刻さは単なる発電所の爆発などではなかった。クリスタルに蓄積した闇のエネルギーが爆発したのだ。それは自然界の反作用を招き、地震が起こった。
 シャフトはクーデター前から密かに、改良をくわえ、地震も津波も起こさない完全な兵器が完成を目指した。目途がついたところで、ツーオイを手に入れるために、皇帝逮捕に踏み切り、ヘラス戦でヴリル・デストロイヤーを使用する計画だった。
「ヴィクトリアの大津波は、シャフトがやっているラグナロック戦争につながる、百年も前から計画してきた彼らの目論見の一環でした。デストロイヤー兵器の実験を開始した最初の日に起こった出来事だったんです。それは誰のせいでもない、災害をもたらしたのは彼らが原因だったのです。その時、結局実験はツーオイ側に拒否されたようですがね」
 百年前に起こったヴィクトリア地方の津波によって、村一つが飲みこまれた。
「やっぱり」
 デストロイヤーを再び使用する時、百年前の国土崩落の危機が訪れる。
 だがそこでアルコンははたと気づいた。ドルイド僧団に拒否された事だ。当初、レジスタンスはツーオイをシャフトから奪還し、そこに反撃のエネルギーを込めて倒そうとした。しかし、それは敵の戦略のコピーだった。若し実行すればツーオイ石はやはり「恐怖の水晶体」へと様変わりし、シャフトと同じ国土崩落の過ちを犯すことになる。だからドルイドに、「二元性にとらわれて勝利はないと」と反対されたのは当然だったのだ。シャフトの過ちを知ることによって、自らの過ちを知ることになった。
「つまり俺たちのツーオイ奪還計画も、完全に間違いだったって事だな。ドルイドに拒否される訳だ」
 それでも神の掟の子であり続けるには、方針を改めるしかない。
「だが、なぜそんなあからさまな事を、連中は陛下の仕業だなどとすり替える事ができたというんだ?」
「単に、歴史的事実がすり替えられただけではありません。シャフト評議会に批判的だった我々を騙す事は不可能でしょう。それに姫がおっしゃった情熱党員、候補生、ファン組織を含む数千人の虐殺を忘却したという事実。それをハッキングで証明する事ができました。それは、洗脳です。ツーオイ石を利用した洗脳電波によって、人々の記憶は改ざんされていたんです」
「いやしかしだな……、ツーオイ石を連中が手に入れたのは陛下の処刑より後だったはずだ。そうだなマリス?」
「はい。ですからそれまでは皆覚えていたはずです」
「何? 洗脳されたのはその後という事か?」
「はい。戒厳令魔方陣と同時に」
 マリス自身、その事を忘れており、インディックとハッキング作業をするうちに、思い出して驚嘆したのである。
「まさか」
「……」
 その時拒否されなければ、一体何か起こっていたのか。初期の頃シャフトが地球内部のガス資源の乱堀をした事によって、アトランティス大陸に地震、火山を誘発した。それは、後の世に起こる出来事の黙示録となった。
「第二の崩壊の時、一体何が原因で広大な大陸が五つに分裂したのか? という問題ですが、その時実は、ツーオイ石には過剰なほど太陽エネルギーが蓄積していたのです」
「ツーオイ石に? では、あれも事故だったという事か?」
「はい、その通りです」
 唯物論者が巻き起こしたアナーキズムが原因だなどとされていたが、そうではなかった。第一の崩壊が事故である事は定説になっていたが、第二の崩壊についてははっきりとした原因は「不明」というのが現シャフト内で実は常識だった。結局唯物狩りによって事態を強引に収拾させたに過ぎない。唖然としつつも、アルコンはそう考えると何もかもつじつまがいく想いがした。
「その当時もまだアトランティスの大地には、大怪獣が跋扈していました。その掃討作戦の為に、ツーオイ石が使用された。彼らにとっては想定外の事故です」
「へぇ。想定外か。シャフトのお家芸の言い訳じゃないの」
 ヱメラリーダはしきりにワインを煽っている。マリスが円卓に同席し、皆がすっかり仲間として受け入れているのが気に食わない。
「ツーオイ石の負の歴史、まさしく恐怖の水晶体の原点だな」
 アルコンは眼をつぶり、当時の事を夢想する。
 これほどの反作用を招く前に、初期アトランティス人達が一体どのような自然界の脅威にさらされていたのか。巨大獣、すなわち大怪獣。それらが大地を闊歩する世界は、人間にとって悪夢を意味していた。
伝説によると、何もかもが巨大化したスケールの獣たちのはざまで人間達は細々と生き、時に踏みにじられるペンペン草のような存在だったという。
 グライダーのように巨大な鳥・アルゲンタヴィスは、空から巨大な黒い影で猛スピードで滑空した。そうして人や牛などの家畜を浚っていった。空飛ぶ恐竜といった方が相応しい恐るべき怪物だ。アルゲンタヴィスの末裔は奇跡的に生き残り、後に北米でサンダーバードと呼ばれ、後々の十九世紀まで存続する事になる。その巨大さからアメリカ先住民たちの伝説では、雷を落として獲物をしとめる魔物とされてきた。これが、あのシクトゥス4Dがなりすますフレスヴェルグの名前の元となったオオワシである。
オオツノシカは三メートルの体長で、角だけで重さが五十キロあり、これが向かってきて攻撃されれば、サーベルタイガーでさえ命の危険があった。それが群れをなして大地を闊歩すれば、人間は逃げまどうしかない。
 生態系の頂点に君臨したのは、両手を広げて立つと優に四メートルを超えるショートフェイスベアという怪獣だった。後世でこれに類する生物は、北極クマやヒグマという事になるが、身体はそれよりさらに一回り大きかった。彼らは機動力に優れ、人間の足では到底逃げる事もできない殺りくマシーンだ。ライオンも巨大である。それに加えて恐怖の対象となったのが、骨をも砕く大きな牙を持った巨大狼ダイヤウルフの群れ、そして巨大虎スミロドン。それに加えて、まるで恐竜を彷彿とさせる、九メートルもある巨大トカゲ・メガラニア。亀にせよ、蛇にせよワニにせよ同様のデカさがあった。それら巨大爬虫類たちは、恐竜がそのまま生きてきたといった方が正確かもしれない。
「右を見ても左を見ても怪獣だらけ。俺たちの先祖は、怪獣たちの住みかに、自分達で動物園の檻の中に入っていたようなものだな」
 ユーモラスな動きをするナマケモノも、かつては六メートルもある大懶獣(だいらんじゅう)という怪物であり、巨大な爪で暴れれば凶暴だった。巨大ネズミは三メートルあり、うさぎさえもバカでかく、かわいいとかいうレベルではない。ともかく、ありとあらゆるモノ達が巨大で、これらの大怪獣が大地を闊歩し、人間は彼らの陰に隠れて、おびえて生活する他なかったのだ。それらを退治する戦士は、モンスターハンターと呼ばれ、獣(じゅう)に対抗するため、初期のハンターは、やたらと巨大なバスターソードを背負っていたり、大砲を担いでいた。後世まで名を残すハンターたちが何人もいる。そうした桁外れの人間たちの一人が、大遠征者アレクトロス帝だ。
「あの大怪獣討伐時代に大量の爆弾、レーザー兵器などを開発したマギ組織が官僚機構と合体したのがマギルドの源流だな。すなわち、軍産複合体だった訳だ」
 文献にのみ残る対怪獣用バスターマシンも開発された。その真相は諸説あるが分かっていない。
「えぇ……その通りです。アトランティスの歴史はテクノロジーの発展と共に、今日の崩壊への道を歩んできた負の歴史です。しかしそれはシャフトによって都合よく歴史は書き変えられてきました。国土が滅びゆくのは、一体何が原因なのか、世間には全く分からないようになっていたのです。その事故を研究したり、あるいはツーオイを闇の方向、たとえば恐怖の水晶体として戦争や保安省の警察力に使う事の危険性を検証する研究や文献は、悉く黙殺、あるいは抹殺されてきました。これがハッキングで明らかになった事です。ただの陰謀論のように聞こえていた事も、全て真実だったんです」
 インディックはハッキングの成果を次々公開していく。
 大怪獣を地上から一掃する為に、軍産複合体マギルドは遂に「恐怖の結晶体」を使用した。それはアトランティス史上最高の魔法石だ。だがツーオイ石は自然の力を引き込み、自分たちの手には負えないほどのレーザーを解き放ったのである。アトランティス大陸は数カ月かかって五つに分裂。それが壊滅の後、諸島にまで縮小したアトランティスの秘められた歴史だ。
 火山の爆発の反動は巨大で、ガイアの地軸の移動をも引き起こした。その結果氷河期が訪れ、これまで数百万年間、種によっては数千万年間生き続けたマンモスら巨大怪獣たちは劇的な勢いでこの地上から滅んでいった。彼らは人類にとっては脅威だったかもしれないが、地球の貴重な種が絶滅したのである。これが後世に「第四期の大量絶滅」と呼ばれる事件の全貌である。つまりこの大量絶滅の原因は、人間のもたらしたエコサイド(環境破壊)だった。
 シャフトの絶対性が確立したこの頃から、種族間の摩擦が起こった。それは、人間と半獣人たちとの間に生じた階級問題だった。学会が開かれ、神学論争を呈した議論の末に結局、彼らはシャフトによって理性のない存在、魂のない奴隷(物、機械)という立場が定義づけられ、今日に至っている。
 その立場から、彼らはアウトサイダーとも呼ばれ、キメラたちは完全にシャフトの奴隷となった。それに反対する王党派の源流との対立は深まり、度々起こった奴隷戦争で、皮肉な事に科学力が発達していったのである。マギルドはクリスタルのレーザーを軍事に転用することで、次第に軍産複合体の官僚機構としての性格を備えていった。膨れ上がるマギルドの権力の一方で、皇帝を尊重する王党派勢力は次第に弱体化し、皇帝家は、アトランテオトル帝の出現まで象徴的存在に衰えていた。
 「自然界」という名の宿敵に勝利したシャフト評議会は恐怖の水晶体を圧政に応用し、さらに、禁止されたレーザーDNA工学の研究を密かに続けることで、さらなる怪物の創造、つまり密かな黒魔術の領域へと入っていった。それはドルイド僧団が守って来た一体性の法則を破る行為だった。
 その紛争の過程で、太陽エネルギーを集積して都市の電気を賄うピラミッドの中に、過剰な太陽エネルギーが蓄積された。それは科学者、為政者の予想をはるかに超えており、事故は起こった。その後、火山の噴火、何カ月もかけての陸地の分断。ツーオイ石を恐怖の水晶体として武力使用するたびに、国土が削られていったのだ。
 アトランティス人にとって、巨大怪獣という自然の脅威から、自身の文明そのものが脅威に取って代わった瞬間だった。仮想敵を何度もさまざまな対象に変更しながら、それは世界征服への野望へと利用されていた。しかし本当の敵は身近に存在していた。それはアトランティス人自身だったのである。
 その後、多くの識者たちによって文明に対する警告が行われた。魔法科学文明、徹底した合理主義、利便性を謳歌するアトランティス人は、本当に「正道」を歩んでいるのか。亡国の天変地異は、神の警告ではないのか。アクロポリスの街角に津々浦々、建っている彫像の数々。シャフトのアデプトを中心としたそれら偶像は唯物主義の象徴だ。近代化と共に、ドルイドが守って来た一体性の法則の霊的伝統は、今日や事実上ヴリルの唯物論にまで堕していた。
 彼らは口をそろえて予測した。アトランティス人は今すぐ反省しなければ、現在のわずかな国土まで失うだろう。だが彼らもまたシャフトに弾圧された。セクリタテーゼ(黒魔術禁止法)が制定され、シャフト独裁に異を唱える者たちや、シャフト法典及び学説と思想的に異なる者たち、さらには黒魔術とは全く関係ない無辜の民衆まで保安省に捕らえられ、数多くの人間が殺された。
 しかし、問題の根源であるはずのシャフトの代々のアデプトは、アトランティスが沈みつつあった真の原因を隠し続けた。沈んだ理由は想定外だと言い、その都度色々な物が犯人扱いされ、最後のヴィクトリア沈没でもまた犯人役が探されたのである。
 アトランティス帝国で、最後の大規模な津波、沈没は百年前のヴィクトリア津波である。第二の破壊よりはるかに小規模だったが、その原因は「不明」とされている。沈没の記憶が生々しかった数十年の間、様々な批判が再び噴出した。シャフト、マギルド、科学文明そのものに対する批判だ。だが次第にその記憶が失われてゆくと、シャフトはツーオイが引き起こした事故の真の理由を隠蔽し、歴史を抹殺した。
「その百年前のヴィクトリア津波の際、ドルイド僧団の中で事故調査委員会が結成されました」
「本当なのか? そんな話は知らんな」
 百年前、滅亡のヴィジョン・ロジックを発表した予言者はことごとくシャフトが弾圧した。そしてそれは決して表に出ることがなかった。
「表にはシャフトが出しませんので。詳細に分析されたヴィジョン・ロジックの報告書が作成され、シャフトに提出されていたんです。握りつぶされましたけどね。それによりますと、ヴリルを戦争で攻撃に使用すると同時に、闇のヴリルというゴミが産出されるという事が、彼らは分かっていたのです。それは報告書の中で『ヴリトラ』と命名されています」
 ヴリトラ。「宇宙を覆う者」、あるいは「宇宙を塞ぐ者」の意。一度生まれたヴリトラは、決して消えることなく蓄積する。蓄積したヴリトラは地殻変動を引き起こし、津波や大陸陥没という国土の危機をもたらす。このように現象化しなければ闇のエネルギーが消え去ることはない。これが報告書の結論だった。つまり百年前に起こった津波は、単なる自然災害ではなく事故だったとシャフトは認識していた。ところがシャフトの御用マギ学者たちは、この結果をさらに隠蔽した。
 彼らは調査委員会の報告に重大な関心を持ちつつも、「ヴリトラはまだ定説ではない」といい、天変地異の原因についても自然界には分かっていない事が多く、不測の事が多いと云って、アトランティスの根幹であるクリスタル技術についていたずらに不安を助長するべきではないと、報告書つぶしにかかった。
「そうして軍事目的でツーオイ石を使用する事を何とか擁護し、軍産複合体としてのシャフトは何とか責任逃れしようとしました。何度も公会議の場で議論が繰り返されたですが、その都度シャフトの大多数のマギ御用学者が警告をねじ伏せていったのです。すべては、情報隠ぺいの為に費やされました。そして繰り返されてきたクリスタル事故から、何一つ反省される事はなかったんです」
「ふむ……」
 過去、クリスタルの事故で国土が沈んだ事を隠ぺいしてきたシャフトは、その事実から人々の目をそらす事に努力してきた。その一方で、その因果関係を熟知してもいた。
「表に出さない代わりに、ドルイドは二度とツーオイを兵器に転用させないために、厳重に管理しました。この百年、国土崩落が止まったのはドルイドのお陰です。僕は、アトランティス崩壊の謎を突き止めるために、これまで何度もツーオイにハッキングしてきました。……それは、百年前のヴィクトリア津波の原因を追っていたんです。それでシャフトが開けてしまったツーオイのパンドラを、ドルイドが封印したことが分かりました」
 ドルイドは報告書を作成し、シャフトに提出。ヴリトラ増大によるツーオイのヴリル兵器の使用禁止を突きつけた。以後、ツーオイのパンドラ領域は、ドルイドのツーオイ厳重監視によって守られ、国土崩壊は止まった。
「大怪獣が標的だったとはいえ、自分の国土に天変地異を引き起こしているようなものでした。しかし度重なる事故は、今日までシャフトによって隠ぺいされて来たのです。で、その頃のアトランティスの近代の夜明けには、都合よく黒魔術が横行していた。いいえ、言い方を変えましょう。同じ頃都合よく黒魔術や唯物主義が横行していた証拠が、次々と出て来た。その結果、何が起こったのか? セクリターツによる大規模な悪魔狩りや、唯物主義者狩りです。無実の罪で多くの人々が捕らえられました」
「しかも黒魔術の実体っていうのは、その時シャフト内部の中枢にあった訳か」
 ヴリトラが重大な反作用を及ぼす事実は、なぜ隠されたのか? それはヴリトラの及ぼす影響を無視したくなるような色々な利便性のためと、国土の復興というヴリトラによる被害の修繕さえも、マギルドの利権になっていたからである。それらの不正や利権を、アトラス十三世は全て白日の下にさらした。影で甘い汁を吸い続けた者たちはあぶり出され、遂にクーデターを経て表に出て来た。
「唯物主義者狩りは、事故を隠蔽するためだった。と、そういう訳だな。人々の注意をさらすための。もちろん本物の唯物主義者や黒魔術師も、恐怖の水晶体に狩られただろう。ブラック・アデプト、黒魔術師同士はけん制し合っているから、仲間にも冷酷だ」
「むしろ全ては自作自演、マッチポンプだった可能性が高いです」
「そして百年前のヴィクトリアも同じか。あの時代、我々の国は、エジプトという植民地を得る事ができた。その歴史的勝利に、ツーオイ石が兵器として使われた。戦場での勝利と引き換えに、ヴリトラという廃棄物が生まれる。隠されているが、ゴミはどんどん蓄積する。それは今でもツーオイの中に存在する。それが表に出てくれば、天変地異という反作用を引き起こす。だが全ては覆い隠されている。ずっと分かっていた事だったんだ」
 アルコンが結論を述べたタイミングで、地震が起こった。ヱメラリーダが両腕で抱えられるだけのワインを守る。
「フゥ~危ない危ない!」
 揺れが静まると、ヱメラリーダはゆっくりワインを手から離し、機械の腕で額をぬぐった。ヱメラリーダの血はワインでできているというくらいの、大好物のワインを地震で台無しにされる訳にはいかない。とはいえ、小柄なヱメラリーダはすぐ酔っ払って寝てしまう。幸い、他の料理も無事のようだ。
「この島の山も、確か火山だったな」
 ライダーの言葉に、オージン卿はミラレパの言葉を思い出した。
シャフトがツーオイ石に無理な負担をかけながら、戦争で気象兵器ヴリル・デストロイヤーを操作するお陰で依然地震が頻繁しているのだ。
「因果応報だね。ヴリトラの充満、そして大宇宙生命との一体性の関係を忘れたシャフト評議会。そのツケは、代々のアトランティス人が払ってきたのさ。きっとアクロポリスの被害はここよりずっと大きくなるだろーけど」
 あまりにもいいタイミングに誰もが顔を見合わせている。
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