第19話 稲刈りとお遊戯

文字数 740文字

10月17日


今日は稲刈りの手伝い。

というか、大人たちが稲刈りしてる間の子守り。町内会の募った「農業体験ツアー(?)」に、俺の顧客の親御さんたちが子供を連れて参加してるんだ。けど、慣れない場所に慣れない作業。子供に目が届かないといけないということで、俺にも声が掛かった。

小学生も高学年ともなれば、親と一緒になって鎌で稲を刈ることも出来るけど、小さい子にはまだまだ危ない。大人に手を添えてもらってちょっとだけ刈らせてもらったら、すぐに飽きて、後はその辺を走り回る。

無邪気な様子が微笑ましいけど、子供ってのは、目を離した隙に何をするやらどこへ行くやら分からないからな。

先に刈り取りの終わった田圃の中を、全員に手を繋がせて一緒に走ったりしてみる。そんなんでも、きゃあきゃあと楽しそうだ。晴れた空、そよぐ風、港出船じゃなくて陸の上だけど、気持ちいい。

まだ刈り取りの終わってない田圃の、黄金の稲穂が風にそよぐさまが、きれいだ。

走ってばかりじゃ芸がないので、今度は全員で丸く輪になる。手をつなごう、と歌を歌いながら、<大きなお鍋>だの<小さなお鍋>だの作る。普段と全く違う場所のせいか、そんなお遊戯みたいなのでも子供たち大喜び。俺も楽しくなって本気の笑顔。

……子供たちの輪の中に、いつの間にやら、双子の男の子たちが混じってる。ここまで来る貸切バスの中には居なかった子たちだ。ものすごく見覚えがあるように思えるけど、気のせい、ということにしたい。

何の因果か偶然か、この辺りの田圃、百日紅家の持ち物らしいんだよな。少し離れた鎮守の森(?)の向こうに、百日紅家のあの大きな家屋敷が見えている。

遊びに来たのか? 狛犬兄弟。
……頼むから、いたずら、するなよ?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み