第6話

文字数 1,132文字

☆☆☆

 部長・宗谷ナタクは早弁に出かけたおれの説教を執拗に始める。
 聞いてて飽き飽きする内容。だから、
「わーったから小説の続き、書かせろよ」と言ったところ、怒りが爆発した。
 貴様はなにもわかってない、身の程をわきまえて行動しろだの、言動に気をつけるとはすなわ
 どーたらこーたら。宗谷ナタクは三年生ではあるが、要するに二歳違いなだけだ。
 しかも、体型がショタである。こっちもどう接したらいーかわかんねーのだ。
 仕方ないので「はいはいわかりました」と言っておいた。平謝り。低身長のその頭の上に手のひら乗せてぺちぺち叩く。するとさらにぶち切れるナタク。部員たちから白眼視されるおれ。
 そうこうするうちに部活は終わる。
 部員はみな、阿呆らしく感じたのか、ナタクとおれの話には介入してこないで、パソコンのキーボードでタイピングしていた。
 今日の部活はそんなだった。おれは、
「じゃ、夏期講習があるんで」と言って、塾に向かう。
 書き途中の小説は、今週中に終わらそう。
 四コマ部で運営しているサイトに、載せよう。それを目指して。ナタクにはがみがみ言われるのだが、サイトがあって掲載ができるって環境は、ありがたいのだ、こっちとしても。秋の文化祭でやる劇の脚本の、その原型になるかもしれないし、それを目標にしているし、生徒の目につくサイトに載せられるのは、ラッキーだ。
 それはナタクだって知っている。
 おれの書いてる小説の目標を。
 だから小言のひとつでも言いたいのだろうけども。
 おれは創作ノートと原稿用紙を鞄にしまうと、学校を出た。
 学校から、太平洋のある方に向かう。東へ。東下り!
 すると、駅前通に着く。雨月駅前。
 雨月学習塾に到着したおれは、まっさきに天一高校の生徒に声をかける。
「こんにちわー。スルフルちゃんとメルクリウスちゃんは知らない?」声をかけた女子は、
「えー、やだー。あんなのタイプなのぉ」と返してくる。
「いやさ、用事があんのよ」
「あの魔女たちなら、今日は来ないよ。バンドの練習で。夕方しかスタジオ予約取れなかったんだってー」
「バンド?」
「夏祭りよ。もう一週間切ってるでしょ。それでー。ギャルバンやるんだって。くっそだっさ」
「ああ、そう。スタジオって」
「ペンタトニックだよ。シビックモールの中にある……」
「ふーん。ありがとね」 ……会話終了。
 おれは、今日は夏期講習は休むことにした。
 午後一で始まる夏期講習だが、夕方だと確かに間に合わない可能性がある。だから休んだのも、別にずる休みじゃない。
 しかも彼女らは成績上位者だ。こういうのも、許されるのではあろう。……そんなこたねーか。
 おれは駅からほど近いところにそびえ立つ、シビックモールを目指して、塾を立ち去った。
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