3-4.ドライブ

文字数 669文字

沖津は車を神奈川方面に走らせた。

陽が落ちて前方の車のライトが眩しかった。

✳︎





ボーッと美羽は助手席の窓から月夜に光る湘南の海を見ていた。



(もう20時だ・・・今日も、清美叔母さんのところ帰れないな、清美叔母さん怒るかな・・・)



スマホは逆探知されるからということで、電源を切られ、沖津に没収された。このため、神野清美に連絡することすら叶わない。



沖津は無表情にハンドルを握っていた。



「どこに行くの?奴らの目的って何?」



「時が来れば話す。今夜は僕の使っている隠れ家の江ノ島の温泉宿に行く。武器や食糧も調達しなければならないし。そこで一泊したら、明日熱海に向かう」



「熱海に?何故?」



「熱海に、君に合わせたい人がいる」



その後沖津は無言で車を走らせた。

✳︎


美羽はどうしても叔母の神野清美に連絡が取りたかった。



神野重工グループの現社長である神野清美には、事故死した美羽の母親 篠谷美代子(みよこ)に変わり、学費や生活費を全て工面してもらっていた。



実の娘のように自分を可愛がっていてくれた神野清美。

神野清美の財産からすれば自分の生活費学費など大したものではなかったのかもしれないが、それでも美羽は神野清美には感謝しても感謝しきれないほどであった。



せっかく東京出張で仕事が忙しい中、時間を作ってくれて迎えてくれるというのに、二日連続で無断で会わないことになってしまったことは心苦しかった。



「着いたよ」


沖津は表向きは温泉宿となっている隠れ家の前に車を停めると、美羽を降ろした。


時間は夜22時を回っていた。
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