第1話 アレはソコにいる

文字数 1,174文字

このストーリーは少年と猫の冒険『勝手に他人の半生を書いてみた』の第3章です。
第1章『僕と猫と米沢牛』と第2章『僕と猫と明珍火箸』を読んでいなくても、理解できるように書いているつもりですが、念のために先に第1章と第2章のあらすじを掲載します。


<第1章、第2章のあらすじ>

山形県米沢市で暮らしていた10歳の山田武(たけし)はクローン人間。武と白い猫(ムハンマド)はある事件をきっかけに、クローン技術を争奪する米沢戦争に巻き込まれる。米沢戦争は自衛隊の介入で終結したものの、クローン研究者の父を脅す材料として武は米沢派の残党から狙われることになった。武を米沢派から守るため、母の信子は武と猫を連れて実家のある兵庫県姫路市に避難した。

姫路市に到着した武と猫は播州皿屋敷伝説を解決するために奮闘する。試行錯誤の結果、武たちはお菊さんを400年の責務から解放することに見事成功。米沢派の残党が姫路に来た情報を入手した武たちは、お菊さんを仲間に加えて東京に避難した。

第3章は武、猫、信子とお菊さんが東京に到着したところから始まる。


(1)アレはソコにいる

朝霞(あさか)駐屯地に到着した武、信子、お菊さんと猫は、車で自衛隊が用意したセーフハウスに移動した。信子は学生時代東京に住んでいたから避難先を東京にしたようだ。

セーフハウスに到着したのは真夜中だったから、武は部屋に着くとそのまま眠ってしまった。
翌朝、目を覚ました武は信子に尋ねた。

「ここはどこなの?」

「ここはね。品川区の禿(かむろ)坂ってところ。桜並木が有名だから、春になると綺麗な桜並木が見られるわよ」と信子は説明した。

「ふーん。春か・・・」
春までいるか分からない武は興味がなさそうに言った。

武と信子が話していると猫が起きたようだ。

「おはよう。散歩でも行こうか?」と武は猫に言った。

「そうだな。この辺りのボス猫に挨拶しとかないと、後で面倒だしな」

「ボス猫はどこにいるんだ?」

「目黒不動尊にいる。確か名前は・・・オヅノだったかな?」猫は自信なさそうに言った。

※目黒不動尊(瀧泉寺)は、天台座主第三祖慈覚大師圓仁が開いた関東最古の不動霊場。不動明王像を本尊とすることから「目黒不動尊」と通称されている。

「変わった名前だなー。暇だから僕も一緒に行くよ」

「じゃあ、私も!この辺りのお寺に行ってみたい」とお菊さんが言った。

2人と1匹はセーフハウスを出て、目黒不動尊の門をくぐった。
すると、武の目の前に異様な大きさの何かが見えた。

― 絶対にやばい奴だ・・・

武はお菊さんに小声で言った。

「ソコにいるアレ。絶対にやばい奴だよね?」

「武くん、アレを見ちゃダメ。見えないフリをしてなさい」お菊さんも武に小声で言った。

2人と1匹がアレの前を通り過ぎようとしたら声が聞こえた。

“おい!お前ら、見えてるだろ?”

武は驚いて立ち止まった。
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