Stage2 旅立ち
文字数 3,201文字
気付いたら、プレイしようとしていたゲームの中にいたわけであるが、あれから2日経ったものの、元の世界へ戻る様子は一切なかった。VRMMOというわけでもないので、ログアウトなどの機能は設定されていないし、そもそもこれが本当のゲームの世界で、プレイしているならば2日間飲まず食わずでもゲームは出来るかもしれないが経験上、集中力は決して持続しない。
「アリスさまー。今日は何をなさいますかー?」
「え、あー。どうしようか」
「そろそろ何かしないとお金が底をつきますよー?」
アリスと名乗っているが、俺は歴とした男である。いや、正確にいえば元男……いや、それもおかしいか。見た目は女、頭脳は男、といった感じだ。
改めてこの状況を説明するならば、ゲームをやろうとしたら、メイクしたキャラになっていた、ということだ。趣味はネカマプレイ(だが、姫プレイは嫌い)なので、女キャラを選んだら俺まで女になっていた、ということだ。
このゲームのような世界に来てから2日経ったが、俺はいまだに何もしていない。やったことといえば、釣り師から釣りの仕方を教えてもらい、釣った魚を売り捌くくらいだ。
エクステンドワールド・オンラインは、元々の情報によれば、何をしても自由。戦うも戦わないも、犯罪を起こすも起こさないも、スローライフをおくるもおくらないも、その全てがプレイヤーの自由だ。
「アリスさまー」
「ん? どうしたの?」
「村長がいらっしゃいましたー」
「ああ、そう」
今居る場所も村であるため、当然ながら治める人がいる。俺の家を訪れた村長がそれだ。
彼の名前は、イーサン。元々は王家直属の潜入捜査官だったらしいが、10年ほどまえに退職。そして今はこんな小さな村の村長をやっている。
「村長、何の用事ですか?」
「うむ。お前ももう16になるだろう。そろそろ外の世界を知るべきではないかと思ってな」
「はぁ」
「というわけで、旅に出んかね、アリス!」
「イヤです」
何となくそんなこと言われるような気がしていたので即答してしまった。だが、イヤなモノはイヤなので仕方がないだろう。なんでも自由ということは、旅に出ないのも自由であるはずだ。なので、折角なのでこの旅に出ない自由を俺は獲得することにした。文句を言われる筋合いはない。
「そうか、そんなに旅に出るのがイヤか」
「イヤです」
「そうか、それならば儂を倒せぃ! ふんっ!」
「なんで!?」
何だかイヤな予感はしていたが、イーサンが力を込めると、服がビリビリに破け散った。
とこぞの世紀末伝説か何かか!? はっ、よくよく見てみると取り巻き連中の髪型が縦リーゼントみたいになっている。いや、ていうか普通、旅に出ると言ったら、ならば私を倒していけ、っていう展開が王道じゃないのか?
「ふははは! 7対1だ! アリス、お前に勝ち筋はない!」
「うるせー! お前らただの村人だろ! なんだ、デス○ッドか!? デス○ッドなのか!? いや、ていうかそれ以前に最序盤の町で7対1とか卑怯すぎんだろ!?」
「くっ。(分かる人にしか)分からないツッコミしやがって……!」
必死にツッコミを入れた気がしたが、確か分からない人には分からないだろうな。
しかし、ツッコミばかりをしている場合ではないな。すでに引退しているとはいえ、イーサンは元々潜入捜査官。それなりに強いハズだ。
「あの、アリスさま」
「なに?」
「これどうぞ」
「なにこれ」
「シル○スコープです」
またとんでもないものが出てきたものだ。シル○スコープとは、双眼鏡のようなアイテムで、それを使うと幽霊の正体が見破れるようになるという、ハイテクなのかハイテクじゃないのかイマイチ謎な大切な道具だ。まさに「科学の力ってスゲー」である。
「いやでもこれ、スコープじゃなくてメガネじゃん」
「そうですよ? メガネタイプのシル○スコープです。見えないものを見えるようにするメガネなのです」
見た目は完全にただのメガネであるが、自分の好きな装備に好きな特殊効果を乗せることができるから、どんな見た目であっても、見た目だけでは判断できない。つまり、見た目がメガネでも、シル○スコープと言われればそれはシル○スコープなのだ。
「とりあえず、これをかければいいんだな?」
リリィから受け取ったメガネをかけてから目の前に居る7人の男たちを見た。そして、すぐにメガネを地面にたたきつけた。
なぜだ!? なんで、あいつらの裸が見える!? 見えないものを見えるようにするって、服を透過する ようになるってことか!
「あー、メガネがぁ」
リリィが泣きそうになっているが、そんなことは問題ではない。問題は別にあるのだ。
「おい、てめーら! 汚ぇもの見せるんじゃねぇ!お前らの裸 見ちまったじゃねーか!」
「知るか! お前が勝手に見たんだろ!」
「あ、あのあのあの、アリスさま。もう一度かけてくださいー。頭の上あたりを見てくださいー」
リリィが泣きそうな顔で地面にたたきつけたメガネを持ってきたので、仕方がないのでもらってからもう一度かけた。体を見ないように、言われたとおり頭の上あたりを見た。
こ、これは! 頭の上に、イーサンたちのレベルと最大HPが見えるではないか! そうか、リリィが見せたかったのはこれか! ん?
「死ねぃ!」
「ひっ! だーかーらー、その汚い体を見せるんじゃねぇ!」
「ぐはっ!」
飛びかかってきたイーサンに、どこぞのライダーよろしく回し蹴りを喰らわした。
「や、やられた……。イーサン村長がやられたぞー! 弔い合戦じゃあああ!」
「うるせー! メテオシャワー!」
叫びながら振り上げた右腕を振り下ろした。すると、天から隕石が降り注いだ。
うおおおお!? なんだ、この技!? すげぇぇぇ! 俺、こんなスキル持ってたの!?
「ぐふっ」
「ぬわーっ!」
「ぎょえー!」
こいつら、どこぞの親父たちかなにかか? 分かる奴にしか分からない悲鳴上げやがって……。 あ、俺も似たようなものか。ていうか、レベル1のくせになんでこいつらこんなにイキってたんだろう。つーか、なんでイーサンもレベル1なんだよ。
「くっくっく、よくぞ我らを倒した。褒美にこれをやろう」
「なにこれ」
「四星球 だ」
イーサンの手の中には、四星球 が握られていた。
こいつ……またトンデモナイものを取り出しやがって。だいたい、なんでこの世界にドラ○ンボールがあるんだよ……。なに、出てくんの? 7個集めたら、神龍 でも出てくんの?
「よく聞け……。これを7個集めたら、地球が滅びる」
なんでだよ! なんで集めたら地球が滅びるんだよ! つーか、なんでそんなもの俺に渡すんだよ! ひょんなことで7個集まるかもしれないだろ!
「だが、安心しろ。7個集めたときに出てくる、龍の神に祈れば、地球が滅びるのが7年延びる」
安心出来ねーよ。安心する要素皆無なんだよ。だいたい、なんで7年なんだよ。
「ちなみに、前回集まったのは7年前だ……」
なんでだ! なんで7年前に一回集まってんだ!
「だからお前が行かなければ、この星は滅びるのだ……」
「ちっ、どこにあんの。残りのドラ○ンボール」
「おお、行ってくれるか。よかろう。お主に、この地図を授けよう」
イーサンから渡された地図をリリィが受け取った。リリィは、持ち物管理も出来る高性能な獣人である。
「では、行けい! アリスよ! 世界を救う旅に出るのだ!」
「おう!」
こうして、アリスはリリィと共に世界を救う旅に出るのだった。
「アリスさまー。今日は何をなさいますかー?」
「え、あー。どうしようか」
「そろそろ何かしないとお金が底をつきますよー?」
アリスと名乗っているが、俺は歴とした男である。いや、正確にいえば元男……いや、それもおかしいか。見た目は女、頭脳は男、といった感じだ。
改めてこの状況を説明するならば、ゲームをやろうとしたら、メイクしたキャラになっていた、ということだ。趣味はネカマプレイ(だが、姫プレイは嫌い)なので、女キャラを選んだら俺まで女になっていた、ということだ。
このゲームのような世界に来てから2日経ったが、俺はいまだに何もしていない。やったことといえば、釣り師から釣りの仕方を教えてもらい、釣った魚を売り捌くくらいだ。
エクステンドワールド・オンラインは、元々の情報によれば、何をしても自由。戦うも戦わないも、犯罪を起こすも起こさないも、スローライフをおくるもおくらないも、その全てがプレイヤーの自由だ。
「アリスさまー」
「ん? どうしたの?」
「村長がいらっしゃいましたー」
「ああ、そう」
今居る場所も村であるため、当然ながら治める人がいる。俺の家を訪れた村長がそれだ。
彼の名前は、イーサン。元々は王家直属の潜入捜査官だったらしいが、10年ほどまえに退職。そして今はこんな小さな村の村長をやっている。
「村長、何の用事ですか?」
「うむ。お前ももう16になるだろう。そろそろ外の世界を知るべきではないかと思ってな」
「はぁ」
「というわけで、旅に出んかね、アリス!」
「イヤです」
何となくそんなこと言われるような気がしていたので即答してしまった。だが、イヤなモノはイヤなので仕方がないだろう。なんでも自由ということは、旅に出ないのも自由であるはずだ。なので、折角なのでこの旅に出ない自由を俺は獲得することにした。文句を言われる筋合いはない。
「そうか、そんなに旅に出るのがイヤか」
「イヤです」
「そうか、それならば儂を倒せぃ! ふんっ!」
「なんで!?」
何だかイヤな予感はしていたが、イーサンが力を込めると、服がビリビリに破け散った。
とこぞの世紀末伝説か何かか!? はっ、よくよく見てみると取り巻き連中の髪型が縦リーゼントみたいになっている。いや、ていうか普通、旅に出ると言ったら、ならば私を倒していけ、っていう展開が王道じゃないのか?
「ふははは! 7対1だ! アリス、お前に勝ち筋はない!」
「うるせー! お前らただの村人だろ! なんだ、デス○ッドか!? デス○ッドなのか!? いや、ていうかそれ以前に最序盤の町で7対1とか卑怯すぎんだろ!?」
「くっ。(分かる人にしか)分からないツッコミしやがって……!」
必死にツッコミを入れた気がしたが、確か分からない人には分からないだろうな。
しかし、ツッコミばかりをしている場合ではないな。すでに引退しているとはいえ、イーサンは元々潜入捜査官。それなりに強いハズだ。
「あの、アリスさま」
「なに?」
「これどうぞ」
「なにこれ」
「シル○スコープです」
またとんでもないものが出てきたものだ。シル○スコープとは、双眼鏡のようなアイテムで、それを使うと幽霊の正体が見破れるようになるという、ハイテクなのかハイテクじゃないのかイマイチ謎な大切な道具だ。まさに「科学の力ってスゲー」である。
「いやでもこれ、スコープじゃなくてメガネじゃん」
「そうですよ? メガネタイプのシル○スコープです。見えないものを見えるようにするメガネなのです」
見た目は完全にただのメガネであるが、自分の好きな装備に好きな特殊効果を乗せることができるから、どんな見た目であっても、見た目だけでは判断できない。つまり、見た目がメガネでも、シル○スコープと言われればそれはシル○スコープなのだ。
「とりあえず、これをかければいいんだな?」
リリィから受け取ったメガネをかけてから目の前に居る7人の男たちを見た。そして、すぐにメガネを地面にたたきつけた。
なぜだ!? なんで、あいつらの裸が見える!? 見えないものを見えるようにするって、
「あー、メガネがぁ」
リリィが泣きそうになっているが、そんなことは問題ではない。問題は別にあるのだ。
「おい、てめーら! 汚ぇもの見せるんじゃねぇ!
「知るか! お前が勝手に見たんだろ!」
「あ、あのあのあの、アリスさま。もう一度かけてくださいー。頭の上あたりを見てくださいー」
リリィが泣きそうな顔で地面にたたきつけたメガネを持ってきたので、仕方がないのでもらってからもう一度かけた。体を見ないように、言われたとおり頭の上あたりを見た。
こ、これは! 頭の上に、イーサンたちのレベルと最大HPが見えるではないか! そうか、リリィが見せたかったのはこれか! ん?
「死ねぃ!」
「ひっ! だーかーらー、その汚い体を見せるんじゃねぇ!」
「ぐはっ!」
飛びかかってきたイーサンに、どこぞのライダーよろしく回し蹴りを喰らわした。
「や、やられた……。イーサン村長がやられたぞー! 弔い合戦じゃあああ!」
「うるせー! メテオシャワー!」
叫びながら振り上げた右腕を振り下ろした。すると、天から隕石が降り注いだ。
うおおおお!? なんだ、この技!? すげぇぇぇ! 俺、こんなスキル持ってたの!?
「ぐふっ」
「ぬわーっ!」
「ぎょえー!」
こいつら、どこぞの親父たちかなにかか? 分かる奴にしか分からない悲鳴上げやがって……。 あ、俺も似たようなものか。ていうか、レベル1のくせになんでこいつらこんなにイキってたんだろう。つーか、なんでイーサンもレベル1なんだよ。
「くっくっく、よくぞ我らを倒した。褒美にこれをやろう」
「なにこれ」
「
イーサンの手の中には、
こいつ……またトンデモナイものを取り出しやがって。だいたい、なんでこの世界にドラ○ンボールがあるんだよ……。なに、出てくんの? 7個集めたら、
「よく聞け……。これを7個集めたら、地球が滅びる」
なんでだよ! なんで集めたら地球が滅びるんだよ! つーか、なんでそんなもの俺に渡すんだよ! ひょんなことで7個集まるかもしれないだろ!
「だが、安心しろ。7個集めたときに出てくる、龍の神に祈れば、地球が滅びるのが7年延びる」
安心出来ねーよ。安心する要素皆無なんだよ。だいたい、なんで7年なんだよ。
「ちなみに、前回集まったのは7年前だ……」
なんでだ! なんで7年前に一回集まってんだ!
「だからお前が行かなければ、この星は滅びるのだ……」
「ちっ、どこにあんの。残りのドラ○ンボール」
「おお、行ってくれるか。よかろう。お主に、この地図を授けよう」
イーサンから渡された地図をリリィが受け取った。リリィは、持ち物管理も出来る高性能な獣人である。
「では、行けい! アリスよ! 世界を救う旅に出るのだ!」
「おう!」
こうして、アリスはリリィと共に世界を救う旅に出るのだった。