【episode4-塀の中】

文字数 524文字


久しぶりに会った魁人(かいと)は、浮かない表情だった。



「どうして彼女さんと別れたの?」


沙楽(さら)の問いかけに魁人が顔を歪める。




「あいつさぁ、家のことやってくれるんだけど、財布の紐も握られててお小遣い少ないんだよな。」


「えっ?でも魁人のSNS見ると結構派手に遊んでるよね?」




「まぁな。小遣い稼ぎしてるから…。」


なんだか、言葉の歯切れが悪い。




一抹の不安を覚えながら


「副業?」と聞くと、魁人の口から信じ難い事実が発せられた。




自分が現場監督を務めている現場から資材を盗み出して転売していると言うのだ。


「それ、犯罪だよ?わかってる??」


普段は穏やかな沙楽の口調が思わず鋭くなる。




魁人は、数年前に違法薬物所持で捕縛(ほばく)され、塀の中で暮らしたことがある。


前回は初犯だったから出所後に新たな仕事が見つかったものの、ただでは済まないはずだ。




魁人は、今も薬の後遺症で前歯が溶けている。


今度逮捕されたら、社会的な復活は難しいかもしれない。




だが、それでも尚、沙楽は魁人のことを愛していた。




沙楽と魁人は幼馴染みである。


良いところも、そうでないところも知っている。



だからこそ、魁人の悪事を知っても沙楽の気持ちは変わらなかったのである。


沙楽は、どうしても魁人のことを断ち切ることができなかったのだ。







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