第1話

文字数 400文字

傷がなかなか治らない。

「もっとシッカリ食べたほうがいいですよ」先生は言う。
「そうですか」
「そうですよ」

傷がズンと鈍く、ずっと痛んでいる。しばしばズキズキ痛む。
治るのだろうか? 食べたらこの傷は治るのだろうか?

病院を出ていつもどおり薬を買う。薬は治すものではない。解っている。ただ、これでこの痛みを止めたい。

未だに治るアテがない。

「シゴトを始めたいんですけど」切り出しても、
「まだ無理ですね」にべもなく切り捨てられた。
働けそうにない。
労災だと思う。なのに暮らしていけるのか、途方もない。

行き交う人々は、声を出さず痛みにあえぎ苦しんでいる私のことなんか無関心。異世界に住んでいるらしい。

心が傷を忘れない。

いまもよみがえる。毎日毎日、通りかかるたびに、顔を合わせるたびに、声をかけられたこと。
「肥満だ」
「肥り過ぎだ」
「痩せなさい」

いまのBMI値は17。
「痩せ過ぎです」医者にも言われた。

食事が喉を通らない。
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