第2話(7)

エピソード文字数 2,284文字

「呪いは、全部で四つ……。得物を持っている時以外は、実力の九十九・九%を出せない。転生した際は記憶の覚醒が、人格が形成されてから十数年後になる。周りに身分を伝えても、信用して貰えない。最後のこれは一回限りですが、千年に一度必要な再封印に要る双剣をどこかに隠したくなり、隠した後はその記憶が抜け落ちる。以上ですわ」
「…………そっか、ようやく腑に落ちたよ。全ては、呪いの仕業だったんだな」

 戦闘に参加できなかったのも。最近覚醒したのも。俺がなぜか、感知できない件が思いつかなかったのも。彼女が愛器を探していたのも。
 原因は、全部ソレ。教室での発言はふざけているのではなく、ダメ元でチャレンジしていたんだ。

「この呪いの『信用してもらえない』は、強大な力を持つ者ですら打ち消すのに時間がかかかる厄介なモンですの。……今の色紙クンなら、これを正しく見れますわよね?」

 彼女が取り出したのは、件の騎士証。しかしソレに『BY国王』なんて文字はなく、荘厳な装飾が施され双剣の模様があるだけだった。

「隠した得物は、人数が多ければ多い程見つけやすくなる。ガレは味方が増えないよう、こうしたのですわ」
「なるほど、ね。しっかし『人格が形成されてから十数年後に覚醒する』ってのには、どんな利点があるんだろ……?」

 実力を発揮できないは、別の強力な武器を用意して再封印されたら困るから、とわかる。されど、こっちはさっぱりだ。大まかでも日時を指定すると、効果が薄れるらしい――この場合だと『指定なしだと、もっと覚醒が遅くなり探す時間を減らせられる』のに、どうして時期を設定しているのだろう?

「そうなっているのは、卑怯で狡猾な目的があるから。ガレは、転生体の自我に封印の邪魔をさせたかったのですわ」
「あー、そうかそうか。そういうことね」

 ソレはよかった。そいつも充分厄介だけど、更に手の込んだ悪意が隠れてなくてよかったよ。

「にゅむ? にゅむむ? じがに、じゃま? にゅむむん……?」
「レミアさんは、ハテナマークで一杯になってるわね。私が例を挙げるわ」

 シズナがレミアに小さく笑い、片目を瞑った。
 にゅむ子ちゃんは、絶賛困惑中ですからね。お願いしますにゅむ。

「例えば麗平活美さんが、覚醒した時点で危険な思想を持っていたとしましょう。世界を滅ぼしたい、とかね」
「にゅむにゅむ」
「そんな状態でミラルさんの記憶が蘇ったら、使命を果たさず封印解除を見過ごすかもしれない。『記録読者』のガレさんは、それを狙ったのよ」
「にゅむむむんっ。にゅむんっ。把握できましたー」

 レミア、理解できてよかったね。はい、これにてシズナ先生の特別講座はお仕舞いにゅむ。

「ミラルの聖剣はある程度転生する頃合いをコントロールできるんだけど、自我に関しては一切無理。嫌らしいトコロを突いてきますわ」
「でも麗平さんは善人で、再封印をしようとしてる。ヤツの作戦は失敗に終わったね」
「ええ、そうですわね。……ただ今の所、双剣を隠す方は成功へと向かっていますわ」

 少し照れ臭そうにしていた彼女の顔に、再び真剣さが含まれた。
 復活まであと2日なのに、再封印に必要なものが揃っていないんだ。今のところは、ヤツの思い通りになっている。

「聖剣の力で少し抗い、大よその位置――あの学校の敷地内にあると覚えてはいるんだけど、どこにどんな形で隠してるのか分かりませんの。これまで何度も転生して毎回生涯探しているけど、見つかってないんですわ」
「……むぅ、何回もやってもダメなのか……。だとしたら………………ぁ、そういえば。もう一人の生き残りの、大剣のシンって人は転生してないの?」

 あの場にいた者に聞いたら、特定できるかもしれない。その辺はどうなのだろう?

「シンも何度かこの国で転生してるはずなんだけど、聖剣がないあの人はタイミングよく転生できませんの。ウチは――過去の継承者も事前に決めた待ち合わせ場所に毎日行ってメモを置いてるんだけど、返事は一度もありませんわ」
「そっか、それなら俺達で探すしかないな。世界を守る為に、宝探しを――タンマ。シズナ達で、ガレを倒せない?」

 この方々――明日いらっしゃる英雄を合わせると戦士3兆人分で、ミラル6万人分。しかも超強力な魔王術や聖金術があるから、イケますよね?

「言い方は悪いけど、あの自爆でダメージを与えられたなら楽勝よ。よくよく考えたら、私だけでも秒殺可能だわ」
「ウソ!? ガレはオリジナルに劣りはするけど、存在しているあらゆる魔法魔術を使えるんですのよ!?
「ふーん、そうなんだ。けど、それでも問題なしだよね?」
「多少でもオリジナルに劣るなら、全く問題ないわ。その気になれば、時を止める魔法だって打ち消せます」

 ほらね。ノープロだ。

「麗平さん、恐るるに足らずだよ。伝え損ねてたけど、この人達は戦士1兆人分の力があるんだもん」
「いっ、1兆……。桁外れですわ……」
「英雄さんは、ホント規格外なんだよ。『のうのう』が作った英雄無効化爆弾の前以外なら、敵なしなんですわ」

 レベル99が最強のRPGの中に、レベル10000のキャラが紛れ込んだようなもの。もうやりたい放題だ。

「封印が解ける頃にガレくんに会いに行き、ブシュ。はーい一件落着でございます――」
「色紙クンっ! ちょっと待ってですわっっ!」

 レミアと一緒に万歳していたら、麗平さんが身を乗り出してきた。
 にゅむ? どうしたんだろう?
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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