第105話  守るべき人達 

エピソード文字数 3,641文字

ったく。雨が全然やまないですね
うんうん。こんなに降るの、久しぶりだね

 美優ちゃんはちゃんと傘を持ってきていたので、お邪魔させてもらう。

 先に言わせて貰うが、女同士なので何も如何わしくないぞ。

で、魔樹はどこまで知っているんですか?

 先に確認しておかなければ面倒くさいからな。

 すると美優ちゃんは「私は何も喋ってない」と前置きしてから、自分の取った行動を教えてくれた。



 俺が美優ちゃんに襲い掛かり逃げ出した後、俺に送ってきたラインの内容の通り、暫く待っていたが、俺から連絡が来なかった。


 どうしても連絡を取りたい。そう思い必死に探したが俺は見つけられず、それで一旦喫茶店に戻って魔樹を呼んだのだという。


 魔樹は理由も聞かず、すぐに了解したそうだ。

多分。私が……泣いてたから。それでとにかく蓮君を探してほしいと
じゃあ、あいつは何も知らなかったんですか?
はい。だってその前に……探しに行ってしまって

 あいつからすれば姉が蓮に泣かされた。

 そう思ってキレてたんだろう。最初から殺気立ってたからな。


 そして俺がプチっとキレちまって、あいつを煽りまくって……フルボッコって訳か。

その後は?

あの時私はもう……頭が真っ白になって。逃げるように家に帰って……

それから誰とも喋らず部屋で閉じこもってて……

それで。また漫画喫茶に戻ったと

 

 そうでしたか……

 事情を知ると非常に申し訳なく思う。

 その時間、俺もやる気ゼロで寝てましたからね。



 じゃあ……魔樹は殆ど事情を知らないって事になる。

 

 最初は美優ちゃんが居ない事に気が付いて、探し回っていたんだろうか。

 そして一人では無理だと思い、俺に連絡して……喫茶店に来たのが楓蓮だった訳か。 

 



 魔樹のあの驚きは尋常じゃなかった。

 向こうからすりゃ、何で楓蓮さんが? って思っただろうな。



 そんな時。

 前方に人影が見えたので目を凝らしてよく見ると、魔樹がつっ立ってる。

あっ……あいつ。あの馬鹿
ま、魔樹っ!

 美優ちゃんの叫び声に反応した魔樹だったが、こちらを向くもののずっと下を向いたままなのだ。


 くっそ雨が降ってるっていうのに傘もささず。

 少し前かがみの状態で、ゾンビのように立ち尽くしているのだ。

魔樹っ! 風邪ひいちゃう! ほら、こっちきて
か、楓蓮さん。す、すみませんでした。僕はなんてことを……
もういいって言ってるだろ。ちゃんとお前にも説明するから

 完全に抜け殻になってまってる。

 こいつ。俺が美優ちゃんに会いに行ってから、ずっとここで待ってたのか? 


 馬鹿野郎が。

先に風呂に入れ。マジで風邪引いちまう
その方がいいよね。魔樹……歩ける?
ごめんなさい……ごめんなさい楓蓮さん

 搾り出すような、うめき声だった。 死んだような目になっちまって謝罪マシーンになってやがる。


 こういう奴は、何を言ってもダメなので、強引に引っ張るしかない。



 その時だった。前から来るワゴンが俺たちの前で停止する。


 ワゴンに乗っている男達は俺達を見るなり、えらく驚いていたが、後部座席が開くとゾロゾロと降りてきた。




 4,5,6……6人の男達はささっと俺たちを囲みだした。



 何だこいつら。急に現れやがって。

 しかも頭の悪そうな奴らばっかりだ。


 ※



この子達だろ?
間違いない。持って帰るぞ
ああ、そういう類の野郎達か。 ったく、今日は色々とツイてないぜ。
どうしたのその顔。ボッコボコじゃね?
でもすっげースタイル良くない?

 そう言いながら手を伸ばしてきた男。

 

 その質問と行動は、俺にとって、容赦なく叩きのめしていいと、そう解釈させてもらう。 

 


 俺を……女として。女として見るな!

ぶほっ!

 野郎の汚い手が俺に触れようとした瞬間、それを回避しながらハイキックをお見舞いした。

 その隙だらけな顔面にヒットすると、気持ちいい程吹き飛びやがった。

 こいつら……もしかして、竜王さん関連の奴らじゃねーだろうな?
て、てめぇ! この女っ!
魔樹っ! 美優ちゃんを頼む!
か、楓蓮さんっ!
こんな奴ら。俺一人で十分だ

 そう言いながらもう一人の男に詰め寄っていた。

 ノーガードの男にワンツーを決めると、あっけなく床ペロしやがった。

 

 こんな奴らに、時間をかけさせてたまるかっ!

 てめーらに構ってる暇なんかねぇんだよ!

 次の男には、しゃがんでからの飛び膝蹴りから、打ちあがった男の身体に空中での回し蹴りがヒットすると、そのままワゴンのフロントガラスに直撃した。
な、なんだ? この女っ……ぐうぉ!

 喋る暇なんかねーぞ。瞬殺してやる。


 三人がダウンし、身構え出したヤンキーだが、そんな構えが何になるというのだ。



 俺から見りゃ、てめーらなんざ、小学生以下の幼稚園児にしか見えねーんだよ。

 前方から容赦なく襲い掛かると、ヤンキーの頭を持って膝蹴りをかまし、龍子さんばりの背負いでワゴンに投げ飛ばす。
こんの野郎!

 ヤンキーの手に持っているのはバタフライナイフ?  

 刺せるもんなら刺してみろ! 俺にはあたんねーから。

がはっ!

 おいヤンキーよ。そんな凶器をよくもまぁ人に向けられるもんだな? 


 どうせ。相手の事なんて考えてないから、そんな事が出来るんだろ? 


 同じ人間とは思えない。

 俺にはこいつらが……人の面被った怪物にしか見えないんだよ!  

 俺は奪ったバタフライナイフをヤンキーの顔に向けると、そのまま振りかぶって顔面を襲った。
あ、うわぁ~~~!!

 眉間にぶっ刺さる一センチの場所で止めてやると、足元から崩れ去った。


 その位置は丁度ミドルキックを打つには適しており、そのまま顔面を蹴り込むと、土砂降りのアスファルトに床ペロしやがった。

ひ、ひぃ~~~な、なんだこいつ!

 最後の一人はすぐさまワゴンに乗ろうとする。


 隙だらけの背中から引っ張り出し、アスファルトに転がった男は完全に戦意喪失していた。

待て。待ってくれ!
人を攫おうとしておいて、何言ってんだてめぇ!

 その怯えきった顔に思いっきり顔面パンチを打ち込むと、怒りが収まらない俺は、そのまま身体を持ち上げてワゴンの側面に投げつけた。





 周りを見れば、頭の悪い奴らは全滅していた。

魔樹! 行くぞっ
そんな……男を一瞬で六人も……

 こんな場所にいれば、すぐに通報される。


 だが俺の掛け声にたじろく魔樹や美優ちゃんは、その場から動かない。

何やってる! はやくっ!
 しょうがないので右腕に魔樹を、左腕で美優ちゃんを抱えると、あっという間に細い路地へと姿を消した。



 ※


 俺は二人を抱えたまま、知らんマンションの前まで来ていた。

 二人は急なヤンキーの襲撃に頭が追いついていないのか、未だに状況が分かっていない。


 ようやく動き出した魔樹。

 そのタイミングで美優ちゃんも降ろすと、俺はふぅっと溜息を付いた。

あれは、もしかしたら竜王さん関連かもしれない
えっ?

学校で蓮の時、王二朗くんから聞いたんだ。

竜王さんはそーいう類の危ない奴と関係があるらしい


そっか。楓蓮さんは黒澤でもあるから……

だけど、大丈夫です。 

俺がいる限り、二人には危害は及ばない。


俺が全て。何もかも叩き潰してやる。

楓蓮さ……

あ、ごめん美優ちゃん。そんなに震えなくて大丈夫です。

し、しまった。つい力んじまったから、怖がらせてしまった。

ごめんね。俺はその……怖くない。

仲間だと、友達だと思える人には……

ありがとう楓蓮さん……私は……楓蓮さんのお友達です

 お友達。

 そう言われると……俺は心底安心すると共に……無性に嬉しく思う。

魔樹。分かったか? 俺に……護衛なんていらない
楓蓮さん……

俺は……男なんだ。

だからこんな傷。気にしてないし、親父の訓練の方がもっとひでーよ

 と、そこで会話が途切れると、みんな降りしきる雨を見ていた。

 マンションの下で雨宿りするにも、以前として雨は強くなる一方だ。

話し合わないといけないのに。あんな奴らに邪魔されるとはな。

どうする? 一旦帰ろっか

 まぁヤンキー達に感謝するとしたら、今の俺に必要な「普通に喋る」といった平常心を取り戻せたことだろうか。

一回風呂に入ろう。俺も一旦帰る。そんで……白竹さん家で、話し合いたい。

あ。俺の家でもいいし……ちゃんと話し合いたい

うん……ちゃんと全部。お話。お話したい……
楓蓮さん……ありがとうございます

 魔樹。なんつー泣きそうな顔してんだよ。

 もういいって散々言ってるのに、こいつの顔は変わらなかった。

よし。行こうっ! スマホだけは濡れないように

 三人が一気にマンション下から走り出すと、まずは白竹さん家を目指す。

 途中美優ちゃんが転げそうになるのをキャッチすると、そのまま走り出した。




 やがて喫茶店が見えてくる。その時――


 土砂降りの雨の中、急に辺りが光に包まれ明るくなると、俺達はその光に振り返った。  


 そしてあっという間に俺達の前に急停止したのは……

 

 黒塗りの高級車だった。

聖奈……? 平八さん?

――――――――――――――――


次回。絆で結ばれた家族。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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