第5・5話
エピソード文字数 1,186文字
優星達が世界を救った直後――午後8時丁度。とある山奥に身を隠していた花丘真治は、眉を顰めた。
「封印が解けて、随分経っています……。どうして、何も反応がないのでしょう……」
「どうしてそうなってるか、教えてやるよ。アイツは、オレのダチが倒したのさ」
木の陰から現れた、制服姿の少年。優星の親友である空霧雲海が、東の空――ガレが散った方角を見やり、ほくそ笑んだ。
「残念だったな、センパイ。作戦は失敗に終わったぞ?」
「が、ガレが…………あの『記録読者』が、やられた……? そんなバカな……っ」
「アイツら、山手線ゲームで打ち破ったんだよ。万が一のタメに覗いてたんだが、何回も噴き出しそうになったぜ」
雲海は、腹を抱えて大笑い。ひーひー言って目尻を擦った。
「き、君は見ていたのか……!? ガレが脅威になると言った人間に、君は入っていなかったぞ……!?」
「オレは持てる力の50%を常時使い、『特異な存在』の気配を完全に消してるんだ。それに加えアイツの目がある場所では平凡人間として生きてたから、気付けなかったのさ」
「り、『記録読者(リーダー)』を……っ。この世で起きた全てのことを知得できる者を、誤魔化しただって……!? そんなことが、出来るはずがない……!」
「おいおいセンパイ。現に、やってるだろ?」
雲海は両肩を軽く上げて嘲弄し、親指で自身をさす。
「オレは、特別なんだよ。大剣ラーミーの力で気配を消しているアンタを、探し出せるくらいにな」
「っっっっ!!」
このように会話をしていることが、すでに異常。瞬く間に真治の顔が驚愕で染まり、唇の色が紫へと変わる。
「あ、あああああ有り得ない事だらけだ……。なななな何者なんだ君は……!」
「オレのデータを知る意味はない。これからアンタは、死ぬんだからな」
雲海はポキッと手首を鳴らし、一切用心せずにゆっくりと――。圧倒的な自信を纏い、十メートルはある彼我の距離を詰めてゆく。
「ひぃぃぃぃっ! やめろっ! 来るなっっ!」
「こういう手荒なのは好きじゃないんだが、オマエは放っておくと何をするかわかんねー。仕事、させてもらうわ」
「そっ、そうはいくかっ! 僕は、セブンナイツのシンなんだ!!」
真治は右手に大剣ラーミー、左手には奪った金剣ラーを装備。奥歯が割れる程に力一杯歯を食い縛り、雲海へと走り出した。
「僕はっ、世界を支配するんだっ! いずれ王になる男なんだっっ! こんなところで死ねるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「はー、アホらし。そんなことを言うのは、小学生までにしとけっての」
雲海は長嘆息をし、身体に光を纏わせる。
そして、その一秒後――。山奥に、断末魔が響き渡った。