第76話

文字数 330文字

 私はどこかでずっと、陸に頼ってきたのかもしれない。家族みたいにお互いがいることがあまりにも自然だったから。でも私たちは家族じゃない。大人になってもこのままじゃいられないから。私とちゃんと向き合おうとしているのかもしれない。

 時間の流れは、どんな子供でも、みな表面上は大人にしてしまう。私の中身はあまり変わらないというのに。遊さんの顔が見たくなる。あの穏やかな笑顔を見たら、この胸の奥がザワザワする感じを鎮めてくれる気がするから。

『遊さんに会いたい』

 スマホをこっそり机から引っ張りだして、一言だけメッセージを入れ送信。すぐにまた奥にしまいこむ。授業中に、スマホの使用が見つかったら、親に連絡されてしまう。それでも。ほんの少しでいいから遊さんと繋がりたかった。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み