赤子
文字数 1,205文字
おくるみに包まれた赤ん坊がギルドマスターであるカレタカの顔をじっと見つめていた。
そこには赤ん坊の無垢さ以外のものが伺えた。
知性の色だ。
赤ん坊の母親は明らかに怯えている。
先日、待ち望んでいた子供がようやく生まれたのだが、二週間ほどして様子がおかしいことに気が付いた。
この子はほとんど泣き声をあげることがないのだ。
それだけではない。
じっと見つめられることが多かった。
生まれたばかりの赤ん坊の目は光を感じるぐらいしかできないらしい。
そもそも色や形の認識もできないという。
キョロキョロと目を動かしていても焦点が合っていないので、その動きに意味はない。視ることができないので当たり前だ。
だが、生まれてまだ一カ月程度の赤ん坊――カロンという名だ――にも関わらず、彼は周囲の様子を認識しているようだった。
もしかして自分は悪魔の子を産んでしまったのではないかと思い悩んだ母親は、夫や村長とも相談をし、思い切って冒険者ギルドに相談に来たということだ。
ああ、お金は不要です。ただ彼が成長して、もしも冒険者になりたいと言い出したらここを紹介してあげてください。決して悪いようにはしませんから
何度も優秀な子と褒められて悪く思う親はいない。とりあえず心配はないのだと納得できたようだ。
何冊もの本を手に帰路につく母親の背中を見送る。