第1話

文字数 1,875文字

 毘沙門天になったぞ
 
 ふふふふふ、ははは、あっはっはっはっはー。俺様はとうとう不老不死に匹敵する者になったぞう。どうだ、参ったか。俺様が今居る所は下天と言う所で親びんの帝釈天様の家来である毘沙門天様だ。下天の一昼夜が人間界の五十年で五百年生きる事が出来る。だから、なんだ、兎に角長生きが出来ると言う事だ。
 (あれ、おかしいな、算数が出来なく成ったらしいが、まあ良いか、長生きが出来る。)
 後は友達で東にいる持国天、西にいる広目天、南にいる増長天だ。俺様はと言うと北だ、少しばかり寒いが大した事は無い。然しなんだ、人間界から見ていたら四天王とも全く動かないけど下天のここでは自由気ままではないか。全く嬉しい限りだわい。だが、親びんの帝釈天様は少々煩いから好きでは無い。何でインドの神がこっちに来て親びん面しているのかねえ。人間界にいる時には考えられないけどね。まあ、ここはここのルールと言うものがありそうだ。一応仕事と言うものがあり俺様は北の守護を受け持っているみたいだ。何の魔の手から守っているのかは定かでは無い。仏法と言う得体の知れないものを守っている様なんだが、、。

 何で毘沙門天なのか
 
 一週間位経った時に毘沙門天を辞職して一般住人になりたいって、帝釈天様に進退伺を出しているが未だに音沙汰が無いのには呆れる。守護と言う重責から脱れて早くのんびりしたいものだ。ただじっと立っているだけではつまんないし疲れる。人間界にも離職とか定年とか言うものがあるのだから下天も職業改革をしないとならないな。
 だけど何故俺様は毘沙門天になったんだろう。あまり記憶は定かでは無いが、覚えている限りでは合理化だ、利益だと煩く言ってたと思う。若しかしたら利益がバズって京兆長者になったのかも知れない。うっ、そうだとしたら毘沙門天にならない方が良かったかも。ここでは金目の物は聞いた事が無いし、利益だの合理化だのと目標を押し付けて来る親びんもいない。ただ北を守護しろってだけで事は楽ちんだが。そうか、俺様も利益の神様なんだからだな。そう言えば横文字のITとか色々と聞いた事もあるな。何だったんだろう漢字でも無いし。今は京では無く富嶽になった様だしな。
 
 人間界の人間
 
 そう言えば俺様の前世は何かと、帝釈天様に聞いた事があったな。帝釈天様が言うには、そんな事は知らない、私が知っているのは四天王だけだと。いやいやいや、貴方神様なんだから、そのくらい分かるでしょ、と言ったらいつの間にか下天の一般住人になっていたよ。何でも毘沙門天になりたい人がいたそうな。俺様が持っている資質では、いわゆる役不足とか言う物らしいので代わってしまった。
 ここから見下ろしている人間界は凄まじい速さでグルグルグルって動き回っているな。あのちょこまかしている生き物達が俺様の前世なのかな。どれ少しばかり拝見しているとしよう。目を凝らしていると疲れる、俺様が食事をしている間に一年が経ってしまった。と言う事は俺様が二日ほどのんびりしていると人間は一生を終わるのか。うーむ、人間と下天、どっちが良いのか分からなくなったぞ。財宝ウハウハで夢幻のごとくなのか、金品何も無しで、ひたすらに時間ばかり溢れるほどある。神様どうしたら良いのか。帝釈天様に聞いておけば良かったな。然し、私は何も知らないって言われそうだ。
 
 神様、元に戻りたい
 
 どうしたものか、ここに居てのんびりと過ごすべきなのか、人間界に行きウハウハ人生を歩むべきなのか。ただ、折角長生きの所に来たのに勿体無いな。ここに居て勉強を沢山して職業改革をしてウハウハにすれば良いじゃないか。いや待てよ、俺様ひとりではいつ迄掛かるのか分からない。俺様と同じ様な事を考える者が現れるだろうか。なかなか難しい気がする。周りを見てると、ボーっと、平和ボケしている者が大半ではないか。ならば、人間界に行った方が良さそうだな。たぶんだけど、昔学校で習ったけど、アイン何とかと言う科学者が言っていた相対性理論だと、ここの時間も人間界の時間も進む相対的な時間は同じ筈だ。だから人間界の方が楽しみがいっぱいある。ここはもう一度人間界に行きたいな。神様にお願いしよう。善は急げだ。
 神様って誰なんだろう。あれ、ここ日本では転生の神はいない様だ。天照大神は自身が引き籠りしちゃったし、考えは仏教の様だし。他国の神様にお願いしよう。それならば元に戻してあげよう。それ、あっ、失敗した。あっ、俺様は虫だったのか、ひと夏経験だね。閻魔大王様、人間以外もご慈悲を下さいな。
 
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