バーバリー

文字数 835文字

 私はバーバリーの眼鏡をかけている。私は元々品がいいので、バーバリーなどに頼らなくても十分ハンサムなのだが、念の為バーバリーのブランド力を借りている。周囲からも「眼鏡にゴミがついている、いや、ゴミに眼鏡がついている」「豚に真珠(豚は賢い生き物なのでものの価値がわかるという意味のことわざ)」「え、それバーバリーだったんですか(私がバーバリー程度で甘んじていることに驚いていると思われる)」など、大好評である。
 最近、印象を変えようと思い、コンタクトにしたらどのような印象になるかを調査するため、職場のバイトの女子大生に、私が眼鏡をかけた状態と外した状態のどちらが良いか訊いてみた。彼女は私の顔を見ずに「どうでもいいですっ」と答えた。私が眩しくて直視できなかったり、話すと緊張するから短い言葉で済まそうとする心理はまんざらでもないが、調査のためのデータとしては不十分である。度を越したハンサムも困りものである。
 私は眼鏡を大切に扱っている。不動産屋の看板に頭を強打した際は、眼鏡を守るために自らの額を犠牲にした。額には瘤ができたが、眼鏡は無傷だった。コンタクトにしていたら看板が目にぶつかり、失明していた恐れもある。
 逆に、コンタクトにすることで得られるメリットもある。最近は仕事でフェイスガードを使用しているが、眼鏡に透明な板が付いているタイプのため、眼鏡を二重にかけている格好になり、つけ心地が悪い。耳にはマスクもかけているため、耳に三重の負担がかかっていることになり、耳が痛くなる。コンタクトにすることで、耳がもげる可能性を減らせる。
 つまり、眼鏡をかけるかコンタクトにするかという問題は、失明するのと耳がもげるのとどちらがいいのかと訊くのと同じである。目は潰れると終わりだが、耳はもげても穴が塞がらない以上は音を聞くという機能を果たすことはできる。しかし、耳がもげると、耳の大きな役割である眼鏡をかけるということができなくなってしまう。結局また悩み続けるのである。
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