#5.5 最後の風
文字数 1,687文字
広い部屋に出てきた勇者たちです。これまでで一番、広いのではないでしょうか。ですが、待てど暮らせど一向に何も出てきません。
「ちょっとぉ、誰かぁ、いませんかぁぁぁ」
「たのもうー」
勇者たちの呼びかけにも応答がありません。そこにヒューンと風の便りが。久しぶりのヨシコからのようです。
「とうとう魔王の間に着いたのね、おめでとう、やったね」
「ちょっとぉ、誰も居ないんだけどぉぉぉ」
剣士マチコの問いに黙りのヨシコです。それは何か答えられない都合があるのでしょうか。さあ、白状しなさい。
「それがー、そのー、魔王がねー」
歯切れの悪いヨシコです。一体、魔王がどうしたというのでしょうか、さっさと白状せい!
「とうの昔にねー、討伐されたらしいのよ〜」
「だからぁ?」
その先が気になる気になる剣士マチコです。魔導師ケイコは既に魔法の杖を振り回し始めました、ブンブン。
「だからねー、魔王はねー、もうねー、居ないのよー!」
「ふーん。だからぁ?」
更に気になる剣士マチコです。魔導師ケイコは振り回した魔法の杖をコローンと落としてしまいました。そして沈黙が続きます、続きます、続きます、続きます。
永遠に続くかと思われた沈黙は剣士マチコの苦情で解き放たれました。
「ちょっとぉ、私たちぃ、魔王を倒しに来たのよぉ、なんとかしなさい、よねぇ」
それに、「うーん」と唸るばかりのヨシコ。そして暫くした後、ようやく「わかったよ」と答えたヨシコです。一体、どう責任を取るつもりなのでしょうかー。
その時です。地響きのように床が小刻みに揺れたかと思うと、竜巻のような風がグルグルと吹き荒れ始めました。それに、クーと耐える勇者たち。それぞれのシールドを展開し、「うわぁ」と「ムムム」で凌 いでいます。
そうして竜巻の中心に現れた謎の影。とうとうやっとついに魔王のお出ましでしょうか。そして竜巻が収まると、出てきました! 魔王ヨシコです!
「ジャーン、魔王だよ」
スタタタターン、バッサリ。
ヨシコの名乗りも終わらぬうちに斬りかかる剣士マチコです。余程、暇を持て余していたのでしょう、一気にカタをつけ、勝敗は決したように見えましたが、
「ジャーン、魔王見参」と名乗り続けるヨシコです。それに、
「なんでよぉ」と不満な剣士マチコです。
ここでヨシコの出で立ちを紹介しておきましょう。一応、黒っぽい衣装に、頭にツノが生えた、魔王と呼んで良いのか分かりませんが、そのような格好です。
ところで、剣士マチコが魔王ヨシコを一刀両断したにも拘らずピンピンしているのには訳があります。それは魔王ヨシコには実体が無いから。つまり、船で一番偉いヨシコは、この場に魔王ヨシコとしてその姿を投影しているだけなのです。要はただの映像。いくら剣士マチコが剣を振り回しても空を斬るばかりです。ですが、これが一見しただけでは分からない! 良くできた映像ということになります。
シュンシュンシューン。
剣士マチコが、どう剣を構えようが、それはただ空を斬るのみ。これではお話になりません。しかし敵は目の前、ヘラヘラの魔王ヨシコです。
「無駄よ無駄。オーホホホ」と高笑いする魔王ヨシコ。良く見れればゴスロリ調の服に黒い靴。ツノに見えたものは、なんと猫耳のカチューシャです。
「どうなってんのよぉ」と苛立つ剣士マチコ。しかしそこに、そんな役立たずは下がっていろとばかりに、今度は魔導師ケイコが最前線に躍り出てきました、ピョーン。
「私、無敵」と言い放つ魔導師ケイコ、続けて「あらったまほんにゃらほんぷー」の詠唱、そして発動、ドコーン。どこかで風と風がぶつかり合い、雷が落ちたような。続けけドコーン、ドコーンと連続攻撃。今日の魔導師ケイコは気合が違います、どうしたのでしょうか、ドコーン。
「およ」
とうとうついにやっと、魔王ヨシコの右側半分が消えて無くなりました、それはどこかの何かに攻撃が当たったせいでしょうか。やればできる、そう勇者たちは思ったようです。一斉に飛ぼかかる勇者たち、です。
「エイヤー」
「ソイヤー」
「オーホホホ」
こんな調子で暫く戦闘は続いた、とさ。
◇◇
「ちょっとぉ、誰かぁ、いませんかぁぁぁ」
「たのもうー」
勇者たちの呼びかけにも応答がありません。そこにヒューンと風の便りが。久しぶりのヨシコからのようです。
「とうとう魔王の間に着いたのね、おめでとう、やったね」
「ちょっとぉ、誰も居ないんだけどぉぉぉ」
剣士マチコの問いに黙りのヨシコです。それは何か答えられない都合があるのでしょうか。さあ、白状しなさい。
「それがー、そのー、魔王がねー」
歯切れの悪いヨシコです。一体、魔王がどうしたというのでしょうか、さっさと白状せい!
「とうの昔にねー、討伐されたらしいのよ〜」
「だからぁ?」
その先が気になる気になる剣士マチコです。魔導師ケイコは既に魔法の杖を振り回し始めました、ブンブン。
「だからねー、魔王はねー、もうねー、居ないのよー!」
「ふーん。だからぁ?」
更に気になる剣士マチコです。魔導師ケイコは振り回した魔法の杖をコローンと落としてしまいました。そして沈黙が続きます、続きます、続きます、続きます。
永遠に続くかと思われた沈黙は剣士マチコの苦情で解き放たれました。
「ちょっとぉ、私たちぃ、魔王を倒しに来たのよぉ、なんとかしなさい、よねぇ」
それに、「うーん」と唸るばかりのヨシコ。そして暫くした後、ようやく「わかったよ」と答えたヨシコです。一体、どう責任を取るつもりなのでしょうかー。
その時です。地響きのように床が小刻みに揺れたかと思うと、竜巻のような風がグルグルと吹き荒れ始めました。それに、クーと耐える勇者たち。それぞれのシールドを展開し、「うわぁ」と「ムムム」で
そうして竜巻の中心に現れた謎の影。とうとうやっとついに魔王のお出ましでしょうか。そして竜巻が収まると、出てきました! 魔王ヨシコです!
「ジャーン、魔王だよ」
スタタタターン、バッサリ。
ヨシコの名乗りも終わらぬうちに斬りかかる剣士マチコです。余程、暇を持て余していたのでしょう、一気にカタをつけ、勝敗は決したように見えましたが、
「ジャーン、魔王見参」と名乗り続けるヨシコです。それに、
「なんでよぉ」と不満な剣士マチコです。
ここでヨシコの出で立ちを紹介しておきましょう。一応、黒っぽい衣装に、頭にツノが生えた、魔王と呼んで良いのか分かりませんが、そのような格好です。
ところで、剣士マチコが魔王ヨシコを一刀両断したにも拘らずピンピンしているのには訳があります。それは魔王ヨシコには実体が無いから。つまり、船で一番偉いヨシコは、この場に魔王ヨシコとしてその姿を投影しているだけなのです。要はただの映像。いくら剣士マチコが剣を振り回しても空を斬るばかりです。ですが、これが一見しただけでは分からない! 良くできた映像ということになります。
シュンシュンシューン。
剣士マチコが、どう剣を構えようが、それはただ空を斬るのみ。これではお話になりません。しかし敵は目の前、ヘラヘラの魔王ヨシコです。
「無駄よ無駄。オーホホホ」と高笑いする魔王ヨシコ。良く見れればゴスロリ調の服に黒い靴。ツノに見えたものは、なんと猫耳のカチューシャです。
「どうなってんのよぉ」と苛立つ剣士マチコ。しかしそこに、そんな役立たずは下がっていろとばかりに、今度は魔導師ケイコが最前線に躍り出てきました、ピョーン。
「私、無敵」と言い放つ魔導師ケイコ、続けて「あらったまほんにゃらほんぷー」の詠唱、そして発動、ドコーン。どこかで風と風がぶつかり合い、雷が落ちたような。続けけドコーン、ドコーンと連続攻撃。今日の魔導師ケイコは気合が違います、どうしたのでしょうか、ドコーン。
「およ」
とうとうついにやっと、魔王ヨシコの右側半分が消えて無くなりました、それはどこかの何かに攻撃が当たったせいでしょうか。やればできる、そう勇者たちは思ったようです。一斉に飛ぼかかる勇者たち、です。
「エイヤー」
「ソイヤー」
「オーホホホ」
こんな調子で暫く戦闘は続いた、とさ。
◇◇