流派によっては体重別の階級がない
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現代空手には体重別の階級があったりなかったり、あっても二階級しかなかったりと、その辺りのルールがきちんと整備されていません。
筆者の流派である防具付き空手も、基本的には階級がありませんでした。
つまり、ボクシングでいえばフェザー級程度の体格しかない筆者がヘビー級の相手ともハンデなしで戦わなければならないのです。
「よく生き延びれたな」
と思うかもしれません。
近代格闘技の視点からすれば、フェザー級とヘビー級が戦うなど、たとえ練習でも狂気の沙汰でしょう。
筆者のように小柄な者が無事でいられた理由はいくつかあります。
まず、日本人でヘビー級の体格の人が滅多にいません。肥満で体重だけあってもヘビー級ではありません。
また、時折入門してきた場合でも、あまり長続きしません。練習相手がいないからです。
ハッキリ言って、ヘビー級の練習相手をさせられるのは、みんな嫌がります。それが露骨ではないにせよ、ヘビー級の人にとっては、さぞ居心地が悪いでしょう。
だから、ヘビー級の人の多くは初心者のうちにやめてしまうのです。
とはいえ、根気よく2年近く通ってくる人もいました。
それだけの期間があれば、ある程度の基礎は身についていますから、かなりの脅威です。
もちろん、筆者の道場でも体格差に対する配慮が全くないわけではありませんでした。基本的にはミドル級くらいの人が相手をしていました(筆者にとっては、そのミドル級の人もかなり脅威でしたが)。
しかし、ミドル級の人が休みの場合もありますし、その下のウェルター級やライト級すらいなかったり、いても初心者だったりすることもあり、さらにその下となるフェザー級の筆者にお鉢が回ってくることも幾度かありました。
当然、まともに打ち合ったりはしません。
終始、逃げ腰です。
スピードだけは軽量選手の方が上なので、逃げるだけなら簡単です。
しかし、それでは先生に怒られてしまいます。
よって、相手の拳を打つ技を時々繰り出すことで誤魔化していました。
ですが、相手もバカではありませんから、同じことを繰り返していれば、そのうち拳を打つタイミングを読んで前に出てきます。
そうなったら追い込まれる前にクリンチして仕切り直しです。
ずるい?
武道家らしくない?
その通りです。
筆者は武道家ではありません。
武術家です。
だから、自分の身を守るためなら小賢しい真似もします。
これこそが武術。
これこそが本来の空手なのです。
ただし、そんな風に上手く逃げられるようになったのは有段者となってさらに経験を積んでからです。それまでは何階級も上の相手にずいぶんと打たれたものです。
それでも無事だったのは、やはり高性能な防具のおかげなのでしょう。
運も良かったのでしょう。
今にして思えば、一歩間違えば大怪我をしてもおかしくないことが何度もありましたから。