前世譚5 ❀ 温かな食卓

文字数 1,038文字

父親の失礼を詫びに、アリエッタの家をおとずれたリカルド。


家にいたのはアリエッタだけで、彼女の両親は不在だった。

僕はもう、あなたに合わせる顔がありません。

本当に申し訳ない……

どうか、お気になさらないでください

いいえ。

あの日、君が怖い本を読んでいた時……

あの日、彼女の様子がいつもと違った理由に気付いた。
君は、僕に怒っていらっしゃったのですね……
……。

ごめんなさい、リカルド 。


あの日、あなたが何も知らぬ顔をしていたので、快く思えませんでした。


けれど本当に憤っていたのは、あなたのお父さんが私の家族に言ったことです

親の罪は、子の罪です

いいえ、いいえ……

私の方が……間違っていました

アリエッタは、びしょ濡れのリカルドに抱きついた。

アリエッタ!? あ、あの……

僕は濡れているので、離れた方が……

かまいません。

兎に角、家に入っていただかなければ離れません

な、なぜ!?

風邪を引いて欲しくないからです。


まずその濡れた服をぬいでください。

すぐに着替えをお持ちします。

リカルドは中へ通され、アリエッタが用意してくれた服に着替えた。

大きさはどうですか?

ぴったりです。

これは、お父様の服では……?

いえ、弟の服です。

以前、都会の学校へ行かれたと、おっしゃっていましたね。

たまにしか帰ってこないし、最近は便りも減ったけれど。


元気にしている証拠でしょう

その時、窓がぴかりと光り、轟きが空いっぱいに響き渡った。
雷ですね

嵐のようですね。不用意に外を出歩かない方がよろしいかも。

なんなら、うちに泊まっていってください

えっ!? いや、それは……。

ご両親が不在なら、なおさら…。

せっかくのご厚意ですが帰ります。

でも、帰りに雷に打たれてしまうとも、限らないわ
な、何万分の一の確率でしょうか

ところで、リカルドさん。

御夕飯は、まだですか?

はい、まだ……。

い、いいえ! 今、食べてきましたよ

遠慮されないで。

せっかくですから、食事に付き合ってくださいませんか。

作りすぎてしまって

食卓へ通され、温かいスープや、野菜、肉料理を出された。
どれも美味しいです
スープのおかわりはどうですか?
ぜひ。とても温まります

ふふっ、良かった。

なんでも、できたてが1番美味しいですし

できたてをいただくのは、ひさしぶりです。

えっ……

僕の家族は、そろって食事をすることが少ないので。


家政婦さんの作り置きを、各々食べたい時にいただきます

そうだったんですか……

誰かと食事をするのは、とてもいいですね。


アリエッタのおかげで、とても満たされます

お粗末様です
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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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