第4話 募る想い

文字数 1,121文字

 ハナは、
ユナを抱き締めたときに感じた
動揺を隠して、
多少ドギマギしつつも、
平静を装って、
いつものようにユナを家に招いた。

 ユナがハナの部屋で遊ぶことは
もはや日常となっていた。
 ハナが
小学校から帰ってきた時から夕食時まで、
ユナはハナの部屋で漫画を読んだり、
お菓子をご馳走になったりして
過ごすことができた。
 
          ◇ ◇ ◇

 ハナは表向きはお嬢様だが、
両親に隠れてお小遣いで
少年誌を買っていた。

 鍵のかかる机に少年誌を忍ばせ、
両親に見つからないように
鍵をかけていた。

 ハナは学習机の鍵を財布から取り出し、
鍵を開けて少年誌を出した。

 主人公のサッカー部の男の子が、
部活のマネージャーに
恋をしている漫画を読んで、
男の子に自分を重ね、
部活のマネージャーにユナを重ねて、
漫画を読みながら空想に耽った。

 ユナの表情、感触が、
四六時中、頭から離れない。

 登校時、
ユナの背中をポンと軽くたたいたり、
ユナの頭をナデナデしたり、
必ず1日1回はさりげなく
ボディタッチをするようになった。

 その都度ユナは、
照れくさそうに
やや顔を赤らめて笑顔になるのだった。

 そのことが、
どれほどハナを幸福感で満たしたことか。
 そして、どれほどユナに、
温かみのある安心感を与えたことか。


 「買い物に行くから留守番頼んだわよー」
 「はーい。いってらっしゃーい」
 2人で留守番をすることも
多くなっていった。

 ユナの母親が
スナックで働いている夜は、
父親がすぐに寝てしまうので、
ユナも寝られるが、
夫婦喧嘩が始まると、
うるさくて眠れず、
夕方の時間帯に眠くなり、
ハナのベッドで
寝てしまうこともしばしばあった。

 この日もユナは漫画を読みながら、
寝落ちしてしまった。
 ハナがタオルケットを掛けた後、
ユナは可愛い寝息をたてて、眠った。

          ◇ ◇ ◇

 道路に軽石で絵を描いている、
幼くて可愛いユナ。
 幼いのだから、
いろいろと可愛いに決まっている。

 しかし、
ハナはただ単に
ユナが幼女だから
可愛いと感じるわけではない。

 左右対称ではない目、
茶色に輝く髪、
かなり白い肌…。

 ユナの個性が、
ハナにとっては唯一無二であり、
自分の一生を賭けて、
ユナを守り通したい、
幸せにしたい、
愛し抜きたい、という熱い想いが、
とめどなく溢れてくるようになっていた。
 
 ハナのユナに対する想いは
募る一方であった。
 車に轢かれないように抱き締めて以来、
自分の伴侶にしたい人となったユナ。

 ユナを幸せにしたい。
 自分が男性であったなら、
ユナを女性として愛するのに。

 もちろん、ユナに告白できるわけもない。
 可愛い、ユナ。
 苦しい。

 毎晩ユナの家の灯を、
自分の部屋の窓から眺めていた。

 ハナはユナに恋をしていた。
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