第18話 ママチャリ300kmの旅 その12
文字数 894文字
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
自転車を漕ぐ筋肉と、歩く筋肉を、姑息に使い分けて進んでいく。
疲労をごまかす繰り返し。
それでもまだ、その日の目標の半分くらいしか走っていない。
依然として風は強い。建物も徐々にまばらになっていき、景色は同じ色ばかりが見えるようになってきた。それを眺めているとあまり進んでいるようにも見えず、少しずつ精神にくる。スマホの電池は昨日よりも消費が速かった。マップで距離を何度も確認していたからだ。だからスマホもいじれなくなる。
このあたりからスマホで撮った写真が少なくなっている。あとで気づいたことなのだが、私の精神がつらくなっているときほど、その場所で写真を撮っていないことに気づいた。多分、写真を撮る余裕がなかったのだと思う。実際、初日の夜が一番、写真を撮っていた。
考えるのが、しんどくなる。進んでいると思うのも、進行の障害になった。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩――。
あっ、富士山。
日本一はでっかいなぁ、と思った。
私はそこでようやく写真を撮った。歩道にあったベンチに腰を下ろして買っておいたペットボトルのお茶を飲む。そういえば静岡なのに茶畑をまだ見てないな。ああ、帰省するときに新幹線のなかで見ていたあの茶畑は、たしか山にあったな。あっ、新幹線が走っている。……2万円もあればあれで普通に帰省できたのにな。ははっ。アホか俺は。
生きるのには、休むことが必要なのだ。
私は自転車にまたがり、進んだ。
さあ、頑張ろう。
今度は、前向きな気持ちで繰り返す。
繰り返しながらも、途中で綺麗に見えた富士山などは写真におさめた。
だんだんと空が暗くなる。
そこで見つけた『道の駅 富士』。その道の駅には食堂があり、閉店までもうすこしだけ時間があったのでなんとか滑り込む。
そこで食べた肉そば、身に染みた。
写真をパシャリ。
つづく
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
自転車を漕ぐ筋肉と、歩く筋肉を、姑息に使い分けて進んでいく。
疲労をごまかす繰り返し。
それでもまだ、その日の目標の半分くらいしか走っていない。
依然として風は強い。建物も徐々にまばらになっていき、景色は同じ色ばかりが見えるようになってきた。それを眺めているとあまり進んでいるようにも見えず、少しずつ精神にくる。スマホの電池は昨日よりも消費が速かった。マップで距離を何度も確認していたからだ。だからスマホもいじれなくなる。
このあたりからスマホで撮った写真が少なくなっている。あとで気づいたことなのだが、私の精神がつらくなっているときほど、その場所で写真を撮っていないことに気づいた。多分、写真を撮る余裕がなかったのだと思う。実際、初日の夜が一番、写真を撮っていた。
考えるのが、しんどくなる。進んでいると思うのも、進行の障害になった。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩いて、少し休んで。
座って漕いで、ひいて歩――。
あっ、富士山。
日本一はでっかいなぁ、と思った。
私はそこでようやく写真を撮った。歩道にあったベンチに腰を下ろして買っておいたペットボトルのお茶を飲む。そういえば静岡なのに茶畑をまだ見てないな。ああ、帰省するときに新幹線のなかで見ていたあの茶畑は、たしか山にあったな。あっ、新幹線が走っている。……2万円もあればあれで普通に帰省できたのにな。ははっ。アホか俺は。
生きるのには、休むことが必要なのだ。
私は自転車にまたがり、進んだ。
さあ、頑張ろう。
今度は、前向きな気持ちで繰り返す。
繰り返しながらも、途中で綺麗に見えた富士山などは写真におさめた。
だんだんと空が暗くなる。
そこで見つけた『道の駅 富士』。その道の駅には食堂があり、閉店までもうすこしだけ時間があったのでなんとか滑り込む。
そこで食べた肉そば、身に染みた。
写真をパシャリ。
つづく