文字数 589文字

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深い眠りの底

まっくらやみから生まれたあぶくだまは

意識の表層にふわりと現れて

理性と感性と想像と記憶を

妖しく崩してその表面に映して

時を置かずにはじけて消えてしまう

一つ一つの子細を観る前に

次から次にと幻想は入れ替わり

記憶に留める暇はない

おぼろげな残影

確証の無い虚像

ただそれは

確かにあったと思い込みたい

魅惑の仮想。




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よなよな

静かな寝息と

ともに浮かんでは消える

刹那の物語

生み出す深淵は、未踏

見定めたい

そう思うのは危険な好奇心だろうか

酔狂な気晴らしだろうか

暗闇の底を観るには望遠鏡ではなお暗い
みとおす手段は、ない、ならば

わずかにのこる曖昧な印象のきれはしを

溶けた泡沫のしずくの痕を


言葉でつぎはぎ、して、





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……





きえてしまったあぶくだまを再現するならば



そうしてできたあぶくを鎖のように連ねたならば

それをそこなしのそこへとむかういのちづなにしたならば


わたしはいきのつづくかぎりもぐっていくだろう





もぐっていく

どこまでも潜っていく

そしてたえきれないほどの深みにたどり着いてなおたえきったならば

闇に
底に

ひそむあぶくの主の姿を

あぶくをいままさにぶくぶくとふかすそのさまを


目にすることも


……





もしかするとあるいは可能かもしれない




………………

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