愛《あい》~ 第3話

文字数 812文字

B.一方的な自己犠牲の愛である。

新約聖書マタイの福音書7章12節に『何事でも自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい。』というキリストの命令があります。
これは、Golden rule(黄金律)と呼ばれ、キリスト教の道徳の金科玉条として有名なことばです。

注意していただければわかると思うのですが、この命令は、
「他人がいやがることはするな」とか、
「他人がしてほしいことをしてあげろ」とか、また
「自分がしてほしくないことは、他人にもするな」とかではなくて、

『自分がしてほしいことを他人にもしてあげろ』である、
ということで、”一方的な自己犠牲”という原則を見事に表現している、といえるのではないでしょうか。

ですから、たとえば、教会の集会などに初めて出席したかたは、
「よくいらっしゃいました」と返事するのに疲れるくらいあいさつぜめにあったり、
たのみもしないのに信者がとなりの席に来て聖書や賛美歌を開くのを指図してくれたり、
集会のおわりに皆の前で自己紹介させられて万雷の拍手をあびたり、

集会の後でも「どちらから?」「どなたのご紹介で?」「集会のご感想は?」等々、アイドルスターなみの質問ぜめにあったり、
ちょっとあつかましいほどにキリスト教の信仰を勧めたれたり、

また帰ろうとしたら「またぜひお気軽にいらして下さい」となれなれしい握手ぜめにあったり、
というふうに、なんともとまどってしまう経験をいくつかするものです。

これは、信者たちがこの黄金律を実践しようとしているからで、すなわち、信者たちも初心者の頃、こういう”大歓迎”を受けて、うれしかったし、また、今でもうれしいにちがいないし、というわけで、それを他人にもしてあげているわけです。

しかも、この例の場合は、「無価値なものほどよけいに愛する愛」が相乗効果をもたらしています。
ですから、信者たちのこの種の”大歓迎”にとまどうかたは、まあ、慣れていただくしかないようです。
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