ある思想家との書簡

文字数 493文字

a:ある思想家
b:アサクラコノハ

a:語りえぬことについて沈黙してたら何も語れないでしょう。何も語らなかったら全て消えていくだけですよ。中学2年生までです、それをかっこいいとするのは。語るもの=騙るものによって知的資源は独占され支配されるのです。彼の言っていることは全く間違っています。前期に関してですが(ゲームとしては成立し得るとは思います)。

b:そうですね。そのとおりです。僕も政治的に利用され、凌辱される彼ら彼女らを見るのはもう耐えられません。そのような意味においては、仰ることはよく理解できます。ただ、"外"は神秘的でなくてはなりません。触れられないからこそ佇むしかない。佇むしかない僕にしか、もうこの世界の射程はないのです。だから、二つの手紙を書くことにしました。一つは"外"にいるありうべきアリスへ、二つ目は世界にいる友達へ。

a:一つ目はともかくとして二つ目が重要でしょう。触れられないものを何かのメタファーに託して人は何かの概念を理解するのです(大ざっぱでも)。彼ら彼女らの記憶をどのように継承していくか、それが問題です。

一九九八年一〇月 
        ある思想家との書簡
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