月夜の契約
文字数 718文字
アリーアは狼に、セトと名前をつけた。
ある日の夜半。アリーアがぐっすり眠っていると、セトに異変が起こる。体が徐々に変化し、骨格も形を変えていく。月の魔力を受けて、セトは上半身、人間。下半身は狼の、獣人の姿になった。
月の魔力の影響下では、セトは獣人の姿になれるのだ。セトはそっとアリーアの隣に座り、微かな寝息を立てているアリーアの頬に触れた。
お前はその女を愛しているのか?
突如、天から降ってきた声に、セトは驚いた。夜空を見上げると、満月を背にしたひとりの女性がセトを見下ろしていた。
闇の精霊・イシス。夜を支配し、月の魔力をも操る存在。イシスはセトにこう語りかけた。
月の眷属よ。そなたに力を授けよう。邪神アポピスを封ずる使命を帯びた、その巫女を守る力を。しかし、精霊との契約には、常に犠牲を払わなければならない。自らが負う犠牲が大きければ大きいほどに、与えられるものも大きくなる。巫女を守る絶対たる力を与える代わりに、そなたは獣人の姿を巫女に晒すことはできない。もし巫女に獣人の姿を見られたら、お前は命を落とすことになる。その契約を交わす意志はあるかと。
セトは悩んだ。そして、ひとつの答を出した。アリーアを守る、絶対たる力が欲しい。
頷いたイシスは天に手を掲げた。月が一層妖しく光を放つ。
すべてを貫く牙を。あらゆるものを切り裂く爪を。地脈を操る唸りを。凍てつく息吹を。火を熾す眼光を。風を操る咆哮を。イシスはセトに与えた。
さらにイシスはこう言った。見事アリーアと共にアポピスを封じれば、光の精霊・ベンヌと力を合わせ、そなたを人間にしてやろう、と。
かくしてセトは、この地上最強ともいえる狼となった。アリーアを守るために。
ある日の夜半。アリーアがぐっすり眠っていると、セトに異変が起こる。体が徐々に変化し、骨格も形を変えていく。月の魔力を受けて、セトは上半身、人間。下半身は狼の、獣人の姿になった。
月の魔力の影響下では、セトは獣人の姿になれるのだ。セトはそっとアリーアの隣に座り、微かな寝息を立てているアリーアの頬に触れた。
お前はその女を愛しているのか?
突如、天から降ってきた声に、セトは驚いた。夜空を見上げると、満月を背にしたひとりの女性がセトを見下ろしていた。
闇の精霊・イシス。夜を支配し、月の魔力をも操る存在。イシスはセトにこう語りかけた。
月の眷属よ。そなたに力を授けよう。邪神アポピスを封ずる使命を帯びた、その巫女を守る力を。しかし、精霊との契約には、常に犠牲を払わなければならない。自らが負う犠牲が大きければ大きいほどに、与えられるものも大きくなる。巫女を守る絶対たる力を与える代わりに、そなたは獣人の姿を巫女に晒すことはできない。もし巫女に獣人の姿を見られたら、お前は命を落とすことになる。その契約を交わす意志はあるかと。
セトは悩んだ。そして、ひとつの答を出した。アリーアを守る、絶対たる力が欲しい。
頷いたイシスは天に手を掲げた。月が一層妖しく光を放つ。
すべてを貫く牙を。あらゆるものを切り裂く爪を。地脈を操る唸りを。凍てつく息吹を。火を熾す眼光を。風を操る咆哮を。イシスはセトに与えた。
さらにイシスはこう言った。見事アリーアと共にアポピスを封じれば、光の精霊・ベンヌと力を合わせ、そなたを人間にしてやろう、と。
かくしてセトは、この地上最強ともいえる狼となった。アリーアを守るために。