第75話  蓮と華凛は従兄妹 3

エピソード文字数 3,061文字



 ※



 全国規模のファーストフード店。マグマグ。


 前に住んでた田舎では、電車に乗ること三十分ほど、繁華街に出ないと存在しない店だった。


 よく親父が買って来てくれたのもあり、昔から俺も華凛も大好きである。

 ちなみに聖奈や平八さんに連れて行ってもらったり色々と想い出深い店でもある。




 レジで注文し、早速テーブル席を確保すると、すぐに注文したセットが届く。

 早いんだよなマグマグは。


そんなに食べれるの?
うん。僕は意外と食いしん坊でね

 一人で二セット丸々かよ。すげぇな染谷君。

 そして華凛もポップコーンをほぼ一人で食べてたのに、普通にセット頼みやがるし。

 かという俺もセットメニューを頼んでいた。


 華凛は対面に座る染谷君の様子を伺いながらも、しっかり食べ始めた。

 ポテトは一本ずつ食べ、ジュースは両手で持つ。



 その仕草はどこからどうみても女の子。全然大丈夫。


 これは別に……演じてる訳でもなく、家でもがっついて食べたりしない。

 こういう大人しい場面を見ると、華凛は女の子の方がいいんじゃないかって思ってしまう。 



 注意しなければならないのは俺だ。

 まぁ人前でがっついたりしないので大丈夫だが、家では楓蓮の姿でもモリモリ食うからな。


そういえばさ、妹ちゃんっていくつ?
小学六年です。来年中学だよな
うん!
そっかそっか。ていうかさ、マジ可愛すぎじゃない?

 あぁ。そういう事を言うと、華凛は警戒するんだ。

 ほら。また背中に隠れようとするだろ。

じゃあこの近くの学校に通ってるの? 高校の傍にあるよね?
 染谷くんはハンバーガーを食らいながら、尋ねてくる。


 何気ない質問。実は……そうではない。

いや、たまたま俺の家に来てただけで、別の場所に住んでるんだ。隣の街だけど

 華凛と俺は親戚なのだ。

 この質問に対し、俺の家に居候してて学校に行ってる。そういう手もあるが……少し危ない。

 


 小学校に通ってるのは凛だ。

 もし染谷君に小学校の知り合いがいれば、華凛という生徒がいないのがすぐバレる。



 染谷君が何処でどう繋がってるか分からないからな。

 影の存在である華凛の所在地は、断定させてはならない。


…………

 華凛が俺の背中に手を回し、もたれかかってくる。

 大丈夫だって。俺に任せろ。

なんか。すっごい仲良さそうだね。お兄ちゃんっ子?
あははっ。ほら華凛。あんな事言われてるぞ。ちょっと離れろよ

 家とは全然違う華凛。これがこいつの外面なのだ。

 人と喋るのが本当に苦手で、兄はとても心配している。

 そんな時、テーブルの横を通り過ぎる人間がいた。

 おれはそいつと目が合った瞬間、声が漏れそうになったが堪える。

…………
虎ちゃんじゃないか?

 いつものジャージは最早制服と言った感じで、今日に限ってはトレードマークである木刀は持っていなかった。


 焦った……



 楓蓮ではお馴染の妹キャラなだけに、顔に出そうだったが……

 

 虎ちゃんは俺達のテーブルで立ち止まると、染谷君を指差したと思えば、急に叫び出すのだ。

あれっ! 龍兄ぃ?
えっ? 
おまっ!  もごっ! な、何してんだよ!

 染谷君が虎ちゃんを見るなり滅茶苦茶驚いていた。

 

 いや、一番驚いているのは俺なんだが

何だよ~~! マグマグ行くんなら俺も呼んでくれよっ!
うっせぇ! ってか。お前はどっかいけ! しっしっ!
 何だ? 染谷君と……虎ちゃんはどういう関係なんだ?  

あれ? 染谷君の知り合いなの?
 普通に尋ねると、染谷君は虎ちゃんを睨む顔が消え、笑顔になったと思えば……やや表情が引きつってやがる。
あ、あの……こいつ俺の従兄妹で。とにかく馬鹿なんです
うぉい! 龍兄ぃ! そんな自己紹介アリかよ!

 従兄妹だと? 染谷君と虎ちゃんが……


 おっと、顔に出すな。笑って凌ぐんだ。

で、お前誰なの? 何で龍兄ぃと……
グハッ!

 虎ちゃんの顔にクリーンヒットした拳。

 それは勿論染谷君の鉄拳である。 

ごめん黒澤君。


こいつさ、誰でもタメ口でさ、だからバカなんだけどね

こうみえても一応女で、虎子っていうんだ。

そ、そうなんだ……ど、ども。

 お前とか、普通に言ってきたからな。ちょとキレそうになったぜ。


 楓蓮とは全然違う虎ちゃん。

 まぁ俺が男だからだろうけど、殴られた後でも、やたら態度がでかかった。

 しかし……こりゃまずいな。

 虎ちゃんが染谷君の親戚なら……



 染谷君は、龍子さんの親戚でもあるんじゃねぇの?

 こんな所で……繋がっていやがった。



 ボロは出せないぞ。気をつけねぇと。 

本当なら、虎と俺の関係は隠したかったが……こうするしかない!


黒澤くん。その代わり……

楓蓮さんのことを教えて欲しい



 ※



 颯爽と現れた虎ちゃん。

 まさか、染谷君の従兄妹だったとは……

 


 通路を挟んだ隣のテーブルに座った虎ちゃんは、俺の身体の後ろに隠れている物体が気になるのか、ずっと俺の方を見ている。



 華凛。大丈夫だって。堂々としてりゃいい。


 ちゃんと座れ。あんまり引っ付くと、お兄ちゃん子だけでは済まされない関係だと思われるぞ。


 そして染谷君がポテトにがっついていると、横を通り過ぎる男女を見て、再び噴出しそうになっていた。
は? うごっ!

ちょ! 待てってば!

虎を呼んだのは俺だが……

 若い男女だな。

 わりとイケメンな男と、清楚なワンピースを着た女性に反応してるようだ。

あ? 何だ龍一。お前も来てたのかよ
あらほんと。龍ちゃんも来てたのね
しょ、翔兄ぃ?

 今度は染谷君がビビる番だった。

 ってかすげービビっててこりゃまた新鮮である。

ちょっと待て! 何で翔兄ぃが来るんだよ! しかも桜さんまで。


まさか……虎ぁ! てめぇが呼んだのか!

龍ちゃん。お友達ですか?
はいっ! 高校での友達です!

 なんと。あの染谷君が綺麗なお姉さんに対し、声を張り上げて受け答えしているじゃないか。

あれ。僕の兄貴なんだ。そんで奥さんの桜さん

 そうなのか。それで……染谷君もビビってるのか。

 ってか君がビビるなんて、相当……強そうだ。



 いや、絶対強い。一歩間違えなくても極道っぽいオーラが漂ってくるようだ。



 俺は一応染谷君の兄や奥さんに一礼する。

 それは礼儀だからな。初対面だし、礼儀正しく行かないと。

華凛。ちゃんと挨拶しろ

 これには華凛も従う他無い。

 目は合わせられなくても、挨拶だけはしておけ。

あの……し、しらみね……
 ひょこっと顔を出した華凛。兄嫁達のいるテーブルへ顔を向けたのはいいが、挨拶する前に虎ちゃんが急に立ち上がると、華凛を指差した。
あぁ~~~~! き、きみわ……君はもしかして
 え? 虎ちゃん?

 華凛を知っているのか?

あの……女神で仰せられる楓蓮さんの、い、妹さん?
え? と、虎!  どういう事だ?

 ちょっと待て。

 これ。やばくねぇか?

 

この子は……楓蓮さんの妹ちゃんなんだよ!

な、そうだよな?


おいこら!

マジで言ってんのかお前?

本当だっつーの! 間違いないって!


こんな可愛い子。間違えるハズねーだろ!

 すぐさま華凛の顔を伺うが、僅かに左右に頭を振る。

 

 華凛はしらない。じゃあ何時だ?

 虎ちゃんと華凛の接点は……?

ほら。妹ちゃん?

コンビニ前で楓蓮さんと一緒にいてたじゃん。思い出さねぇ?

 ……あの時か? 

 一番最初に龍子さん達に会った……あの日だっていうのか?


 そんな馬鹿な。華凛は確か……すぐコンビニに入ったはず。

 あれを覚えていたっていうのかよ。

お、おにぃちゃ……

 再び隠れる華凛は、完全に怖がっている。

 落ち着けって! 大丈夫だから。



 ここまで知られてしまったのなら、しょうがねぇ……

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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