2 ❀ 里にいた超有名人

文字数 1,174文字

萌栄が大将? そりゃ、すごい!
がんばってね、萌栄

さすがわしの孫。


結芽ちゃんも最初に合戦に参加した時から大将やった。


わしの血を引いちょっちゃから勝たんわけがない。大丈夫や!

(胃がキリキリする…うう、プレッシャーが…)
夕飯を食べながら、萌栄は胃をさすった。

そうだ萌栄。


あとで応接間に来てくれる? 

食事のあと応接間で待っていると、母が細長い木箱を持って入ってきた。


母は箱から巻物を取り出し、テーブルの上に広げる。

これはね、我が日高家の家系図よ。


ほら、ここにお母さんの名前があるでしょう?


お父さんと、萌栄の名前も、近々入れる予定よ

萌栄は身の引きしまる思いがした。


母から、祖父…とさかのぼっていく。

いろいろな人がいるでしょ。


出家している人もいるわ。この人とかね

母は家系図を見ながら、「この人はどうなった、こうなった」と教えてくれた。

これがご先祖様か~。


でも、家系図だけじゃ…いろんなことが分かんないな

萌栄は物うつげに、つぶやいた。

その人がどんな子どもだったか、どんなものが好きで、どんな風に亡くなったか、とか。


どんなお仕事をしていたのかも分からない。


ここに書かれているのは、名前だけだもの

そうね…。出家したように見せかけて他国を視察していた人もいる。


けっして、幸福とは言えない最期を迎えた人もいる。


忍務のためにわざと〝死んだ〟ことにしたり、


敵につかまって秘密を守り続けながら亡くなった人もね

敵に…つかまって?

江戸時代の終わりのことよ。


日本が、外国に不平等な条約を結ばされてしまったものだから、


「このままではいけない」と動いた人たちよ

維新志士ね

そう。勤王派の志士たちは、天皇をトップにした、新たな国をつくろうとした。


今までは、武士が政治の実権を握っていたわけだけど。

そもそも、どうして武士が政治をしていたの?


日本には天皇がいたのに、どうして王様が政治の実権を握っていなかったの?

もともと武士は、天皇や貴族を守る存在でもあったの。


彼らの武力が高まり、やがて政治の実権を握るようになった。


後醍醐天皇が一度、建武の新政で、天皇を中心にした政治改革をこころみたけど、


武士の反感を買って、足利尊氏の立てた北朝の天皇と争った、というわけ

それが、南北朝時代ね。


ここのお殿様は、南朝…

そう、南朝、後醍醐天皇の忠臣の武士。


お殿様は、後醍醐天皇の息子懐良親王(かねながしんのう)を任されたというわ。


この里に、懐良親王かねながしんのうとその息子さんがいたとも語り継がれているの。

うっそぉ――――!?


そんな超有名人の息子が、本当にこの里にいたの!?

そうらしいわ。この里には、懐良親王(かねながしんのう)を祀る神楽もあるしね。


そういう理由もあって、この里には「勤王精神」が息づいていた。


明治期、この里の忍びは「勤王派、忍びの維新志士」として働いたわ。

忍びの維新志士…
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登場人物紹介

日高萌栄 (ひだか・もえ


中学2年生、13才の少女。

カピバラをこよなく愛する。

重黒木 鋼じゅうくろぎ・はがね


中学2年生、13才の少年。機械いじりが得意。

椎葉 発(しいば はつ)


中学2年生、13才。

萌栄の友達。花火師の孫。

黒木 殿下(くろき でんか)


萌栄のライバル

那須 雨音(なす あまね)


殿下の友達。

黒木 媛(くろき ひめ)


殿下の妹

日高 結芽(ひだか ゆめ)


萌栄のお母さん

日高 地平(ひだか ちへい)


萌栄のお父さん

日高 雲水(ひだか うんすい)


萌栄の祖父

重黒木 功(じゅうくろぎ こう)


鋼のお父さん

重黒木 理玖 (じゅうくろぎ りく)


鋼のお母さん

椎葉 康次(しいば やすじ)


発の祖父。花火師

黒木 智子(くろき ともこ)


殿下、媛のお母さん。

黒木 未夏 (くろき みか)


クラスメイト

中武 陽(なかたけ はる)


クラスメイト

那須 貴也(なす たかや)


クラスメイト

那須 由子(なす ゆうこ)


クラスメイト

お殿様。


西方の里を治める、お殿様。

南朝の忠臣、その子孫。

忠平(ただひら)


お殿様が助けた忍者。

加藤清正に仕えていたが、毒殺の濡れ衣をかけられ、逃げてきた。

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