疑問
文字数 894文字
槍を担いだレゼルバは訓練場へ向かいながらつぶやいた。
二本の剣を使うツェラー、重装甲で戦うジョルジュ、槍使いのレゼルバはそれぞれ戦いのスタイルこそ異なるが、年齢が近いこと、駆け出しではあるがパーティーのリーダーであることから仲が良かった。
時間があるときにはリーダー同士で集まって情報交換をしたり、食事や酒を飲む間柄だ。
各パーティーの構成が違うことからもリーダーとしての立ち回りも異なる。だから自分のパーティー運営に対する悩みも比較的遠慮なく聞けるというのがありがたかった。
先日は各々が尊敬する冒険者は誰かという話をした。冒険者だったか、前衛職だったか定かではないが、要するに憧れている冒険者の名前を出し合ったわけだ。
二刀使いを目指しているツェラーは
速度を活かして戦う軽戦士のヒビトは尊敬に値する人物だとレゼルバも考えている。
前衛でありながら軽装で戦うには、よほど己の剣技に自信がなければできないことだ。
それはどれだけの数を相手にしても、決して後ろを取らせることがないからできるのだとレゼルバは考えていた。
守るよりも攻撃することを重視するスタイルはレゼルバの戦い方にも近いものがある。
そういう意味でも参考にできるところは参考にしたいと常々思っていた。
ツェラーはいつも二本の剣を腰に下げていたが、最近は一本しか身に着けていないようだった。宗旨替えでもしたのかと思い理由を聞いたのだが、はぐらかして教えてもらえなかった。
一方、ジョルジュは重い装甲に身を包んで敵の攻撃をすべて引き受けるガーディアン的な戦い方をする。
そのため彼が尊敬する冒険者は鉄壁の二つ名を持つミウラだった。
重厚なフルプレートメイルと、全身を隠せるような巨大な盾。
この二つでどんな攻撃も受けきり、戦線を支えるというのは並の覚悟では務まらない。なにしろ常に敵の攻撃に自分の身をさらすのだ。勇気ある者以外にはできることではない。
それは運動性重視、敵の攻撃は受けない前提の軽戦士や槍使いにはできない戦い方だった。