第10話 斎藤増紀先生の授業 前編

文字数 1,447文字

カルビ達の担任の先生、斎藤増紀(さいとうますき)先生は数学担当のはずなのだが、授業を速攻で終わらせて蘊蓄を語るのが趣味だ。

とはいえトーク力もあり、何よりノリがいいので生徒たちの人気は高い。

よーし、今日はThe Rapture of the Nerds(ザ・ラプチャーオブ・ザ・ナード)、通称”ギークの携挙”について語るぞー。

さてさて、2020年に突如現れたコロナによって私たちの世界は大きく狂わされた。

2022年に開発されたワクチン、コールドプレイスによりコロナの脅威はクリアされたかに思われたが、そのワクチンには思わぬ副作用があった。

それは男性の生殖機能を破壊するという恐ろしいものだ。

これにより、人類は子孫を残すことが極めて難しくなった。

そこで時代の寵児、ウーロン・マスクはある計画を提唱した。

ニューラリンク、いわゆる脳とコンピューターを直結することにより人類の電脳化を進めようというものだ。

アメリカおよび欧州主導で、健康な成人にニューラリンク手術を受けさせることが義務化された。

ニューラリンクにより、長らくブラックボックスだった脳の解析が9割ほど完了した。

人々の脳内記憶は全てクラウドコンピューターにアップロードされた。

だがこれは計画の第一段階に過ぎない。

クラウドコンピューターは人が持つ信仰心というものまで解析した。

そして人々が持つ膨大な思い出と信仰心をスクリーニングにかけて、ある人物を錬金術のように錬成することに成功した。

ユッケ。

誰だと思う?

わかりません!

正直でよろしい。

正解はイエス・キリストだ。

日本人にはなじみが無いが、欧米にとっては歴史上の人物であり唯一の神だ。

キリストが再誕したことで、世界中のすべての一神教徒は全てこの世界からログアウトし、生きたまま天国へと引き上げられた。

先生。

なんか不公平じゃないですか?

何がだ?

コムタン。

私たちアジア人は要は神様に捨てられたってことじゃないですか。

死刑宣告みたいなものですよ。

文句あるのか。

じゃあ今すぐ死ね!!


ぱあん!

増紀先生は指鉄砲でコムタンを撃った。
キャアアアアア!
コムタンは大げさに仰け反る。

ぱあん!

ぱあん!

ぱあん!

ぱあん!

キャアアア!!

キャアアア!!

キャアアア!!

って何回殺すねん!

先生!

わたくしカルビも大いに不満があります!

ぱあん!

うっ!

なんじゃこりゃああああああああああ!!!

カルビのアドリブが効いたモノマネにクラスは笑い声に包まれる。

あー、カルビ。

今の松田〇作のモノマネは面白かったぞ。

あー、本題に戻ろうか。

アジア人にも救いはある。

ニューラリンクの恩恵を受けて科学技術は加速度的に進化した。

量子コンピューターはまだ実現していないが、スーパーコンピューター上に地球のエミュレーターを構築することが可能になった。
中国企業は深愛計画というプランを立ち上げ、ニューラリンク手術を受けた人類の意識を仮想世界にアップロードする計画を現在進めている。
成人した人類は、皆ニューラリンク手術を受け、仮想世界の中で半永久的に生きることは可能だ。

だが子供にニューラリンクを受けさせるのはリスクがあるので、すべての人類をすぐに救う事はまだできない。

だからおまえらは子供は成人するまで身体を大事にしろよ。

チャイムが鳴り授業は終了した。

昼休みになり、生徒たちは散会する。

弁当を持ってない生徒は食堂に、弁当を持参している生徒は自分のお気に入りのポジションに。

カルビとコムタンとユッケは、自分たちの部活動”エンジョイ部”の部室で昼休みを取ることにした。

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登場人物紹介

カルビ

コムタン

ユッケ

斎藤増紀先生

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