第32話 花火大会

文字数 2,101文字

冬月さんはうちの母親にすっかり誤解されたままだけど、そのまま彼女という謎の設定を続けてくれた…
真意はわからないけど、母親が喜んでいたから、俺は本当のことは言えなかった…
明と愛と合流すると、俺と愛が前を歩き、冬月さんと明が後ろを歩く…


明は冬月さんと一緒に歩けて嬉しそうだ。


さっそく勇気を出して、冬月さんから言われたことを実施してみようと思う…

愛、凄い浴衣似合ってるよ。いいね。
ほ、ホントに?よかったぁ♪
(冬月さんの言う通り、褒めてみると嬉しそうだった…次は…手を繋ぐこと…)
歩いていると人が多くて、なかなか大変だ…


(よし!実践してみよう…)

その、人が多くて、はぐれたら大変だから…
そう言うと、勇気を出して愛の手を握った…


愛は嫌がっている素振りはなかった…


(これも冬月さんとの練習の成果かもしれない…手汗は冬月さんとの時より酷くない…)

みんなで出店で何か買おうとなって明は焼きそばとフランクフルト、冬月さんはたこ焼き、愛はポテトと唐揚げ、俺は肉巻きおにぎりを3パック買った。
みんなで座って分け合いながら、食べる。


隣に座る愛が俺に言った。

私、夏休み、アルバイト始めたんだ♪


近所の本屋さんなんだけど、今度遊びに来てね♪

マジか?近所の本屋って、TATSUYA書店?
そうだよ!TATSUYA書店はDVDとかマンガ本のレンタルもしてるから、覚えること多くて大変(汗)


でも、バイト先の先輩優しいから、色々教えてくれて楽しくやってるよ。バイト先の先輩は違う高校の人なんだけど、自分で受験費用のためにアルバイトしてるらしいんだけど、今年受験生だから、大変みたい。

(違う高校の先輩って…男の先輩なのか…?)
向かいにいた冬月さんと目が合う…
龍一、トイレ行きたい。


ついでにかき氷欲しいし、荷物持ちとしてちょっとついてきてもらっていい?

はいはい。荷物持ち、わかりましたよ(笑)
明が自分が荷物持ちするって冬月さんに言ったけど却下された…


愛と明はせっかくとった場所なのでそのまま残ることになり、冬月さんと二人で一旦その場所を離れる。

少し歩くと冬月さんが口を開いた。
作戦変更が必要になった。今日、龍一はよく頑張ってる。


このまま、次のステップに進むのは構わないけど、拒絶されたり、ためらわれたりしたら、強引に行くな。わかったな?


まぁ龍一は強引なタイプじゃねーだろうけど。


さっきTATSUYA書店でバイト始めたって言ってただろ?


バイト先の優しい先輩が女なら別に気にすることはねぇけど、男かもしれない…


どんなやつか偵察しに行く必要がある…

さすが冬月さん。でも、そういうのに疎いな俺でも、優しい先輩って男の先輩とかかなとか思ったりしたよ(汗)


わかった。偵察一緒に来てくれるの?

そうか、龍一のわりには成長したな。


トイレは嘘だ。かき氷は龍一がお金払ってみんなの分買えな。持つのは手伝ってやるから(笑)

かき氷は、本当に食べたかったんだね(汗)


かき氷買って帰らなかったら不自然だし、わかったよ…

そしてかき氷を買って戻ると、少し遠めに愛の隣には知らない男の人がいて、明も普通に話していそうな感じ…
(俺は知らない人…誰だ?)
そう思っていると、冬月さんに手を引っ張られた。
偵察にいく必要がなくなったのかもしれないぞ。あの人がTATSUYA書店の先輩かもしれないだろ?


とりあえず、龍一の分のかき氷はあの知らねーやつにあげろな。


いやだろうけど、そのほうが龍一の印象が、いいからな。

冬月さんは自分のかき氷だけを持ち、そのかき氷を食べながら、俺にそう言った…
(言いたいことはわかるけど…)
言われた通りにするよ…
戻ると知らない男の人に挨拶して、自分の分のかき氷を差し出すと、お礼を言って、その人は受け取った。


知らない男の人はやはり愛のアルバイト先であるTATSUYA書店のバイトの先輩で、俺達の一つ上。


高校も俺達の通う高校よりもレベルの高い高校の人…


見た目も平凡な俺と違って爽やかな感じ…

愛とその男の先輩は楽しそうに話す…


俺は一つ後ろの列にずれると、冬月さんと明が俺を可哀想な人をみる目で見ている…


冬月さんも明も俺の気持ちは知っている…


あっちは爽やかなイケメンで頭も良くて、性格も良さそうで、先輩なわけで、俺みたいにオドオドしないで落ち着いてるし…


(あ〜これはそうだよな…)


って思うと、花火が始まってしまった…



悪いから行くよっていうその男を愛がせっかくだから一緒に見ましょうよ、なんていって引き止めるから、結局一緒に見ることになった…


そして、楽しそうな二人の後ろ姿をみるだけの花火が終わった…

帰り道、愛のことはその1つ上の先輩が送ることになった…


冬月さんは明を無理矢理一人で家に帰らせた…


そして俺に言った…

二人の跡、つけるぞ。
(え?やめようよって言おうとしたけど、やっぱり気になる自分もいる…)
わかった。ありがとう。
俺と冬月さんは二人にバレないように尾行すると、帰り道にある公園に愛とその先輩が入った…


俺と冬月さんも茂みにうまくかくれながら移動する…


ベンチに座る二人の声が聞こえる距離まで来た…

※坂木 愛 高校2年生


龍一の幼馴染。片思いの相手。


仙台七夕祭り花火大会にて

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登場人物紹介

上田 龍一(うえだ りゅういち)

城西高等学校2年生

成績、スポーツ、容姿全てが平均的男子。同級生で同じ高校で同じクラスの坂木 愛(さかき あい)に恋をしている。

冬月 千春(ふゆつき ちはる)龍一のクラスへの転校生。

両親離婚前は白石 千春(しらいし ちはる)

元アイドル。そして記憶を失くしている。

坂木 愛(さかき あい)城西高等学校2年生。龍一と同じクラス。


目立つタイプではなく、あんまり人の輪に入ることが得意ではないが、容姿が良いため男子から密かに人気がある。

酒井 真美(さかい まみ)。龍一のクラスメイトで、愛の親友。

佐藤 明(さとう あきら)。龍一のクラスメイトで親友。

神谷 俊(かみや しゅん)。龍一と同じクラスで学年一のモテ男。性格もイケメン。

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