第8話

文字数 933文字

 俺は仕方なく、ノアールを温め続けた。
気を使いながら寝てるせいで、寝不足でフラフラだ。

「リウ、いよいよ明日で1週間だ」

ノアールの言葉にハッとする。
やっとこの生活から抜け出せる。

「明日の何時に孵化するんだ?」
「時間は未定だ。朝かもしれないし、夜かもしれない」
「随分、ザックリしてんな〜」
「我らに時間の概念はないからな。しかし…このままだと、魔力も見た目も期待できんな」

ノアールは、諦め気味に溜め息をついた。

「あ〜それは、悪い…」

俺はバツが悪くなり、頭を掻いた。

「まぁ…良い。結果はどうであれ、温めてくれた人間には感謝するように教えられている。リウ…毎晩温めてくれて感謝する。もう一晩だけ頼む」

ノアールがペコリとお辞儀をした。

「いや…気にするな。もう寝るぞ」

俺がベッドに横になり、ノアールが懐に入ろうとした時だった。
部屋の窓から、突然黒い何かが入ってきた。

「部屋の窓は閉まってるぞ!何が入ってきた?」

俺は驚き、それを見た。

「カラスか…?」

一羽のカラスが俺の部屋を飛び回っている。

「あのカラス…目が赤いぞ…」

そのカラスは、どこか異様で禍々しさを感じる。

「リウどうした?」

ノアールが懐から出てきた瞬間、そのカラスがノアール目掛け飛んできた。

「危ない!」

俺はノアールを抱き抱え守った。
カラスは、俺の背中を通過すると天井まで舞い上がり、ホバリングしながらこっちを見ている。

「何だあのカラス…」
「リウ。あのカラスは、我ら種族を脅かすベルル族の刺客だ」
「あのカラスも魔族なのか?」
「そうだ。我の命を狙ってるのかもしれん。こんな所まで来るとは…」
「命狙われてんの?ヤバいじゃん!」
「リウ!気を付けろ!来るぞ!」

カラスが再びノアール目掛け、飛んで来た。
間一髪でノアールを守ると、カラスが俺の頭を突いた。

「イテッ!何すんだよ!」

ノアールが落ちないように抑えながら、片方の手で追い払う。
しかし、カラスは嘴と足の鋭い爪で攻撃してくる。
俺は、ニョローン対策用ハンマーを握ると、めちゃくちゃに振り回した。
その一発が命中し、カラスは床に落ちた。

「やった!」

喜んだのも束の間、窓からもう一羽のカラスが侵入してきた。
床に落ちた奴も復活し飛び回る。
俺はハンマーを握り締め、ジリジリと後退するしかなかった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み