新世代の望月
文字数 1,308文字
2時間目の国語の時間。
古文中心の授業だ。
眠い。ひたすら、眠い。
古文の授業は、特に眠い。
雄翔 は、机に突っ伏して、眠り始めた。
◇◇◇
雄翔 は昨夜、
はまっているシューティングゲームで、
自己最高記録を大幅に更新したのだった。
「いった・・・。」
数週間もの間、
倒せなかったボスキャラを倒し、
次のステージに進めたのだ。
「いけるところまでいこう・・・。」
ガラッ‼
「雄翔 !何時だと思ってるの!
早く寝なさいッ‼」
ピシャッ‼
午前1時を回っていた。
母親に夜更かしを怒られた吉川雄翔 は、
そのままゲームを続けた。
まだ1機、生き残っている。
頭の中が朦朧 としてきたが、
ゲームを続けた。
どんなに頑張っても、
30万点と少しまでしか取れなかった
シューティングゲームの得点は、
すでに100万点を超えていた。
「・・・ここで
止めるわけにはいかない。」
部屋の壁掛け時計を見た。
時刻は午前4時15分を回っていた。
雄翔 は、かなり朦朧としてきた。
コントローラーを、
落としそうになってハッとした。
ズガーン‼
最後の1機が、やられてしまった。
「すげー。152万6723点までいった。
最高記録、超絶更新だーっ!」
「雄翔 、お母さんはね、
ゲームをやっちゃダメ、
なんて言ってないのよ。
休みの前の日なら、
あの位の時間まで遊んでたっていい。
だけど、今日だって学校なんだから。
ゲームのやりすぎで学校を休む、
なんてことは、許しませんからね!」
焼いた食パンに
イチゴジャムを塗りながら、
朦朧としたボサボサ頭で、
雄翔 は母親の説教をボーっと聞いていた。
◇◇◇
夜。
僕は、
タワーマンションの
高層階の部屋でくつろいでいる。
勉強も仕事も何もかもうまく出来た僕は、
中年の独身貴族になっていた。
遊ぶだけの彼女がいて、
彼女もまた、
結婚はしたくないって僕に言うんだ。
結婚は面倒くさい。
一緒に生活なんてしなくたって、
好きでいる間だけ一緒にいて、
好きじゃなくなったら別れればいいよね、
って決めてる。
子供も作らない。
昔みたいに、
戦争のための
兵隊が必要だから男の子を産め、
みたいな時代じゃない。
地球は
人間が多くなりすぎちゃったから、
あんまり産んで欲しくはなさそうだし、
僕も子供はいらないかな。
僕はそういうわけで、
独身貴族のライフスタイルを選んだんだ。
あんまり物を置かないようにして、
がらーんとした大人っぽくって広い部屋。
居心地がいい。
ゲームで疲れた僕は、ベランダに出た。
高層階で風に吹かれると、
とても心地よい。
今夜は、隣の人が居ないみたいで、
全然声がしない。
僕一人だけの、贅沢な時間。
快適だ。
今夜は、満月か。
綺麗だなあ。
『この世をば
わが世とぞ思ふ望月の
欠けたることも なしと思へば』
この世は、
私のためにあるようなものだ。
今宵の満月のように、
私に欠ける部分は、
何一つないと思うからだ、
と藤原道長 は自分の栄華を、
どこも欠けたところのない満月に喩 えて、
この短歌を詠 んだ、と言われています。
・・・ん?・・・吉川、吉川っ!
「う~ん。
・・・満月が綺麗だな・・・。」
「・・・授業は聞いていたようだが。
後ろの君、起こしてあげなさい。」
古文中心の授業だ。
眠い。ひたすら、眠い。
古文の授業は、特に眠い。
◇◇◇
はまっているシューティングゲームで、
自己最高記録を大幅に更新したのだった。
「いった・・・。」
数週間もの間、
倒せなかったボスキャラを倒し、
次のステージに進めたのだ。
「いけるところまでいこう・・・。」
ガラッ‼
「
早く寝なさいッ‼」
ピシャッ‼
午前1時を回っていた。
母親に夜更かしを怒られた
そのままゲームを続けた。
まだ1機、生き残っている。
頭の中が
ゲームを続けた。
どんなに頑張っても、
30万点と少しまでしか取れなかった
シューティングゲームの得点は、
すでに100万点を超えていた。
「・・・ここで
止めるわけにはいかない。」
部屋の壁掛け時計を見た。
時刻は午前4時15分を回っていた。
コントローラーを、
落としそうになってハッとした。
ズガーン‼
最後の1機が、やられてしまった。
「すげー。152万6723点までいった。
最高記録、超絶更新だーっ!」
「
ゲームをやっちゃダメ、
なんて言ってないのよ。
休みの前の日なら、
あの位の時間まで遊んでたっていい。
だけど、今日だって学校なんだから。
ゲームのやりすぎで学校を休む、
なんてことは、許しませんからね!」
焼いた食パンに
イチゴジャムを塗りながら、
朦朧としたボサボサ頭で、
◇◇◇
夜。
僕は、
タワーマンションの
高層階の部屋でくつろいでいる。
勉強も仕事も何もかもうまく出来た僕は、
中年の独身貴族になっていた。
遊ぶだけの彼女がいて、
彼女もまた、
結婚はしたくないって僕に言うんだ。
結婚は面倒くさい。
一緒に生活なんてしなくたって、
好きでいる間だけ一緒にいて、
好きじゃなくなったら別れればいいよね、
って決めてる。
子供も作らない。
昔みたいに、
戦争のための
兵隊が必要だから男の子を産め、
みたいな時代じゃない。
地球は
人間が多くなりすぎちゃったから、
あんまり産んで欲しくはなさそうだし、
僕も子供はいらないかな。
僕はそういうわけで、
独身貴族のライフスタイルを選んだんだ。
あんまり物を置かないようにして、
がらーんとした大人っぽくって広い部屋。
居心地がいい。
ゲームで疲れた僕は、ベランダに出た。
高層階で風に吹かれると、
とても心地よい。
今夜は、隣の人が居ないみたいで、
全然声がしない。
僕一人だけの、贅沢な時間。
快適だ。
今夜は、満月か。
綺麗だなあ。
『この世をば
わが世とぞ思ふ望月の
欠けたることも なしと思へば』
この世は、
私のためにあるようなものだ。
今宵の満月のように、
私に欠ける部分は、
何一つないと思うからだ、
と
どこも欠けたところのない満月に
この短歌を
・・・ん?・・・吉川、吉川っ!
「う~ん。
・・・満月が綺麗だな・・・。」
「・・・授業は聞いていたようだが。
後ろの君、起こしてあげなさい。」