生きる術
文字数 1,265文字
〈経験値ボーナス〉は文字通り経験値がたくさんもらえるギフトだ。同じ経験をしてもより多くの経験値が得られるので成長速度が上がる。
この世代のニホン人は理解が早くて助かる。
俯くキョウコの足元にポタポタと涙が落ちる。
こういうとき、ニホン人はまず何もできないと言う。
本当は様々な知識や技能を持っているというのに。この世界のものでなくとも文字の読み書きができ、四則演算ができるというのに。そういうところが自身の強みだというのを理解していない。
加えて薄い差別意識もメリットだった。最初は及び腰でも、慣れてくるとどんな種族ともそれなりの関係を築けてしまうのがニホン人の特性なのではないかというのがカレタカの分析だ。
『それじゃあウェイトレスみたいな仕事はどうだろう? このギルドでは食事も提供していてね。注文を受けて料理をテーブルまで届ける仕事をできる人がいると助かるんだ。他にも料理ができるというのもいいね。キョウコ、君は料理ができるかい?』
キョウコは考えていた。
受け入れがたい現実と提示された生活の術。思考はぐちゃぐちゃになっているけれど必死に考える。
この世界で生き抜く方法を。
カレタカの差し出した手をきょとんとした顔でキョウコが見ている。
ぎゅっと手を握り合う。
ここは冒険者ギルド。
外の看板には『日本語』をはじめとした様々な言語でこう書いてある。
『自分がどこから来たかわからない人はこちらへどうぞ』