第1話(4)

エピソード文字数 1,440文字

 ~一時限目・生物~

「皆さん、学生の本分は勉強です。夏休みでだらけた気持ちを引き締め、勉学に励んでください」

 生真面目でキビシイ大川(おおかわ)先生が教壇に立ち、生物の授業が行われる。
 うーむ。この台詞をフュルが耳にしたら、頭を抱えて苦しみそうだな。

《ひぃぃぃぃ……。高校は煉獄ぜよ……!!

 屋上にいる仲間のことを考えていると、噂の人の震え声が聞こえてきた。
 んんん? これ、どうなってるんだ?

《護衛と授業体験を兼ねて『遠見』『遠聴』『遠言』の魔法を使い、三人で覗いているの。この声はテレパシーと同じで、従兄くん以外には聞こえないわよ》

 ぁ~、なるほどね。『遠』シリーズが大集合してるのか。

(どうも、現状を把握致しました。して皆様、高校の授業はどうですか?)

 周りに聞こえない声量で、返事をする。レミアとシズナは、どんな風に感じたのかな。

《あたしは、楽しそーに見えるよっ。こーゆーのって懐かしくて、中学生(ちゅーがくせー)の時を思い出すなーっ》
《私は、うふふ。興奮しているわ》

 ? こうふん?

(シズナ。どこでそうなるの?)
《従兄くんが手を動かした時に、『この手は私の太腿を撫でている』と想像する。そうすれば気持ち良くなってくるのよ》
「貴様ソレは授業関係ないだろ! つーかヘンなイメージすんなよ!」
《ぁふんっっ。今日初めての怒られ、頂き、ました……!!

 ちくしょう! シズナトラップにひっかかっちまった!
 まさか……っ。まさか、ココで仕掛けてくるとは――

「色紙くん。どうしたのですか?」

 わぁ。大川先生、イラッとしてる☆

「もしかして、寝言ですか? 寝ていたのですか?」
「ちっ、違います! ホントに違いますっ! ふと、ムッとした出来事を思い出してしまったんですよ」
「…………そうでしたか。授業の妨げになりますので、金輪際やめてくださいね」

 大川先生は中指で眼鏡を上げ、お目目で圧力をかけて板書を再開する。
 はぁぁ~。どうにかお許しを頂いた。

(まったく、このバカ魔法使い魔王。お前のせいで怒られただろ)

 俺は机下で拳を震わせ、先程圧力をかけられましたからね。先生に見つからないよう、コッソリと天井を見上げる。
 もう決めた。ぼくもう決めた。合流したら、挨拶代わりに蹴りを入れてやる。

《ごめんなさい。二度と、このような真似は…………し、せ…………。な、なに、これ……? 私の、『遠言』、が、妨害、さ、て、る……?》

 シズナの声が、途切れ途切れになりだしたっ。こいつは――

「特殊な敵か!? 一癖ある、『賢長族』みたいなヤツらが来たのか!?
《いいえ。ジャミングがかかった芝居をしただけよ》
「ふざけんなボケ! お前の中に反省という概念はないのか!!
《ひぁふんっ! 続けたら、もっと激しく、怒られる……っ。そう思ったら、いてもたっても、ぁふっ、いられなくなったのぉ……っ!》

 わたくしの頭の中に、快楽に満ちた腹立たしい声が響いてくる。

《敢えて……顔を見えないようにした怒られも、いいわね……っ。『遠距離怒られ』、と命名しましょう……!》
「貴様ぁぁぁぁいい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 唇にジッパーをつけて閉めるぞ!!
「色紙優星!! いい加減にするのはキミだ!!

 激怒した俺に、先生が激怒する。

 ――8月14日。僕は人生で初めて、廊下に立たされた。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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