七十七の月

文字数 328文字

 ぼくの不眠もここまで来たか
 夜をまたぎ
 太陽と顔をまみえ
 夜をまたぎ
 暁に染まる雲を眺め
 夜をまたぎ
 つがいの鳥たちがさえずるころ
 ようやくに
 押っ取り刀でかけつけるはずだった眠りの
 最後に消息を絶った地点が判明する
 そうして眠れないままにまた夜となる

 眠りを隠したのはだれか
 眠りを(かどわ)かしたのはだれか
 ぼくの生きる目的であるはずの
 眠りと名づけられた福音(ふくいん)をさえぎるのはだれか

 不眠はなおもつづくのに
 意識が夢で満ちてゆく
 今夜は月がきれいだが
 不眠に夢遊(むゆう)するぼくの眼には
 夜空に七十七の月
 星影(ほしかげ)をおおいつくすほどの
 人群(じんぐん)のような満天の月空(つきぞら)
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