第59話 攻撃パターン⇒改題:アオイへの襲撃振り返り
文字数 1,968文字
ファーマ・サークルにCIA職員が加わっているという前提で、ここまで私たちが襲われた状況を振り返ると見えてくるものがある。
ホテルにいる私たちを飛行船から機銃掃射したのはCIA。それから、「『顧みられない熱帯病』と闘う会」の片瀬洋子さんを人質にして和倉さんと人質交換を迫ってきたのもCIA。
慧子さん、気をつけてください。佐伯警視正は、元公安畑の人間です。警視正に話したことは警視庁公安部に筒抜けになる危険があります。
宝生警部補、貴様は私を愚弄するのか!私は公安の連中に嫌気がさして、自分から袂を分かったのだ。連中にペラペラ情報を伝えるわけがない。
あれ、ドジ踏んで公安から追い出されたって聞いてますけど。
そんな讒言を吐いたのは誰だ! 宝生警部補、貴様か!
(心の中で)コー君ったら、言わなくてもいいことを言って……
(心の中で)コータローは、全く考えのない野郎だ。ここは、俺が泥をかぶっておこう。
俺がコータローに教えてやったんだ。俺が付き合いのある警察関係者の間では有名な話だ。
世津奈さん、心配してくれてありがとう。でも、アオイと私は、もうCIAと交戦状態にある。佐伯警視正に隠しごとをしても意味はない。
慧子が言うなら、間違いない。それと、あたしはあたしで、佐伯のオッサンとは手を組めるんじゃないかと思ってる。
こんな小娘から手を組める相手と思われるとは、私もみくびられたものだ。
話を本題に戻す。アオイは、1年前、アオイを抹殺しに来たCIAの特殊部隊を返り討ちにしている。その時、CIAは「人間にはアオイを殺せない」ことを学んだはず。
例えば、佐伯警視正がアオイを殺そうと銃を向けたとします。警視正が「引き金を引くぞ」と意識する0.5秒前に、警視正の脳の中で引き金を引く動作の準備電位が発生します。アオイは、その準備電位を感知し、即座に放電します。
警視正は「撃とうとした時には、もう放電されてた」と感じる。あたしはあたしで、放電してる間は意識が飛ぶから、気づいたら警視正が転がってたと感じる。
今の科学では説明のつかない奇跡のようなことだけど、1年前にCIAと闘った時、何度も起こった。彼らも、「人間にはアオイを殺せない」ことに気づいたはずだわ。
ホテルにいたアオイさんを殺そうとしたのがCIAだったから、無人飛行船で襲ってきたんすね。
そして、片瀬洋子さんと和倉さんの人質交換の時は、自律飛行するドローンでアオイさんを襲った。
ホテルでも人質交換でも、和倉を巻き添えにしてかまわない攻撃をしてきたのだろう。CIAにとっては和倉も邪魔者だ。つじつまが合っている。
最初にビジネスホテルであたしを襲ってきた3人組は、CIAじゃないのか?
あの3人については、確かなことは言えない。創生ファーマと取引のあった臓器密売組織が雇った殺し屋だったかもしれない。ただ、その臓器密売組織がCIAとも取引のある「肉屋」だったら、アオイが和倉さんの警護についていることをCIAに連絡したはずだわ。
CIAは「肉屋」に手を引くよう命じて、あとを引き取ったのかもしれないな。
うん、でも、おかしいぞ。1年前にあたしと闘った時、CIAに負傷者が出た。あたしたちは、わざと救急車を呼んで負傷者を運ばせた。それから、CIAが使っていた米軍専用の小火器を現場に置いていかせた。それでCIAは色々な国の諜報機関の目を引くようになったから、あたしたちとの間では休戦関係になってるはずだ。
CIAの正規の命令ルートだったら、私たちに攻撃をしかけてこなかったと思う。
ファーマ・サークルに加わっている不良CIA職員だから、アオイさんの攻撃に踏み切ったのでしょうね。
アオイが和倉さんを警護していると知って、和倉さんとアオイを同時に抹殺すれば「一石二鳥」と思ったのでしょう。
小娘の抹殺に成功すれば、Cファーマ・サークルの手先になったことを帳消しにしてもらえるかもしれない。
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