第7話
文字数 852文字
横を歩いている遊さんを見上げると、口元が緩んでいるようにみえた。素顔を見せてくれたみたいで嬉しくなる。急いで言葉を返す。
「あ、ごめんなさい。考え事をしてた」
「ふーん」
気のないように呟いたあと、私にちらりと視線を向けたから、とくりと心臓が波打った。
「何考えてたの?」
初めて私に興味をもって、たずねてくれた気がした。心臓がいよいよ煩いくらいに高鳴ってしまう。血がみんな心臓に集まってしまったみたいで、頭が回らない。なんて答えようかパニック。
遊さんのことを考えていた、なんて言ってもどうせ相手にされないから。 かといってうまい言葉も見つけられない。ついぱっと頭に浮かんだことを口にだしてしまった。
「リュ、リュウグウノツカイのこと考えてた」
言ってしまってから、何言ってるの私、と自分に突っ込んでしまう。意味がわからないことを言ってしまった気がして、恐る恐る隣の人を見上げた。
いつもはシャッターが閉まっているように、感情などみせない遊さんの瞳。それが、小さな灯りがともったように、軽く見開かれていた。意外なその反応に、びっくりしてしまう。
「は? リュウグウノツカイ? 何それ?」
さらには少し笑いながら興味深そうにたずねてきたから、嬉しくて口が止まらなくなる。
「あ、スマホをみてたらね、リュウグウノツカイって深海魚が、なぜか海面を泳いでいて珍しいって動画があがってたの! ほら!」
貴ちゃんも遊さんも接客していたから、手持ち無沙汰になってSNSをチェックした時、トレンドにはいっていた動画だった。急いでスマホをとりだして、その動画を遊さんに見せる。
リュウグウノツカイ。名前の通り、本当に竜宮城を護る竜みたいな形をした幻想的な深海魚。何メートルもありそうな長い尾っぽをゆらしながら、悠々と水面ギリギリを泳いでいた。
傘の下で2人、ぽわんと光を放つスマホの画面のなかで泳ぐリュウグウノツカイをみていたら、なんだか不思議な気分になる。雨のなか、わたしたちだけしかいない感覚。口元が勝手にほころんでしまう。
「あ、ごめんなさい。考え事をしてた」
「ふーん」
気のないように呟いたあと、私にちらりと視線を向けたから、とくりと心臓が波打った。
「何考えてたの?」
初めて私に興味をもって、たずねてくれた気がした。心臓がいよいよ煩いくらいに高鳴ってしまう。血がみんな心臓に集まってしまったみたいで、頭が回らない。なんて答えようかパニック。
遊さんのことを考えていた、なんて言ってもどうせ相手にされないから。 かといってうまい言葉も見つけられない。ついぱっと頭に浮かんだことを口にだしてしまった。
「リュ、リュウグウノツカイのこと考えてた」
言ってしまってから、何言ってるの私、と自分に突っ込んでしまう。意味がわからないことを言ってしまった気がして、恐る恐る隣の人を見上げた。
いつもはシャッターが閉まっているように、感情などみせない遊さんの瞳。それが、小さな灯りがともったように、軽く見開かれていた。意外なその反応に、びっくりしてしまう。
「は? リュウグウノツカイ? 何それ?」
さらには少し笑いながら興味深そうにたずねてきたから、嬉しくて口が止まらなくなる。
「あ、スマホをみてたらね、リュウグウノツカイって深海魚が、なぜか海面を泳いでいて珍しいって動画があがってたの! ほら!」
貴ちゃんも遊さんも接客していたから、手持ち無沙汰になってSNSをチェックした時、トレンドにはいっていた動画だった。急いでスマホをとりだして、その動画を遊さんに見せる。
リュウグウノツカイ。名前の通り、本当に竜宮城を護る竜みたいな形をした幻想的な深海魚。何メートルもありそうな長い尾っぽをゆらしながら、悠々と水面ギリギリを泳いでいた。
傘の下で2人、ぽわんと光を放つスマホの画面のなかで泳ぐリュウグウノツカイをみていたら、なんだか不思議な気分になる。雨のなか、わたしたちだけしかいない感覚。口元が勝手にほころんでしまう。