幸と不幸

文字数 543文字

「ぼくは君と不幸になりたい」
 あなたは言った。
「わたしはあなたと幸せになりたい」
 わたしは言った。
「どうして幸せになりたいの?」
 あなたは訊いた。
「いけないの?」
 わたしは訊いた。
「幸せはつらいよ」
 あなたは答えた。
「幸せはしあわせだよ」
 わたしは答えた。
「不幸は楽なんだ」
 あなたは教えてくれた。
「幸せは楽しいよ」
 わたしは教えてあげた。
「幸せには限界があって、人はいつか必ず不幸になるんだ。そして幸せであればあるほど不幸がつらくなる。だったらはじめから不幸でいいじゃないか」
 あなたは諭した。
「幸せには限界なんてない。少し幸せかとても幸せのどちらかだよ。不幸になんてならない。ならなくていい」
 わたしは諭した。
「幸せにだって、人は慣れてしまう。いつも幸せでいたら、そのありがたみに気づけない。不幸でいれば小さな幸せにいつだって感謝できる」
 あなたは反論した。
「いつも不幸だなんて思いながら生きていたら、いくら探しても小さな幸せなんて見つけられない。ましてや大きな幸せになんて出会えない」
 わたしは反論した。
「また決着はつかなかったね」
 あなたは笑いかけた。
「そうだね」
 わたしは笑いかけた。
 こたえが出るまで、一緒にいようか。
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