第9話 榛名春奈、倉庫内作業中②

文字数 1,204文字

(よーし、いくぞー!)

ヤル気を漲らせた当真。彼は次なる行動に出ようとしていた。

(バレた!?)

その声に、ハッとなる当真。元々、私立水上学園は女子校であり、男女間にはある明確な一線(ルール)が引かれている。

(まずいっ!)

簡単に言うと、何事においても女性陣の方が強く、学園内における全ての決定権を持っていた。そして、彼女達は職員生徒共に男子より圧倒的に数が多いのだ。

(どうしよう…!?)

この非常時…命からがら魔物から逃げてきた…そんな表情(かお)をして言い訳すればいいのだ。不安のあまり抱き付いてしまったと…


『EX職業(ジョブ)AV男優、その完全取得(デビュー)の為の必須条件(マスト・コンディション)童貞卒業(ファース・トストーリー)…物語の進行を阻害する、心理的な問題を解決(クリア)します…』


優しい春奈先生なら、きっと許してくれるし、誰にも言わないでくれるだろう…彼の持つ気弱な心理(ところ)が働き、実際に当真はその方法(ルート)を選択しようとしていた。


『EX職業(ジョブ)AV男優によるアダルト補正を強化、水森当真の(ほんのう)に対する働きかけが始まりました』


心臓が早鐘を打つ、身体中の血が沸騰したような感覚と共に、一気に頭に血が上った。

「うぅっ、ぐうぅ~」

「顔色が悪いわね…」

そして、水森当真の体内に榛名春奈を抱き締めた時にあった、狂おしい程の性欲(おもい)が戻って来た。

「うおおおっーー!!」

「大丈夫…きゃっ!?」

いきなり叫び出した当真を見て、びっくりする榛名春奈。しかし、当真はお構い無しに彼女の背後で咆哮を上げ続ける。

「ちがうっ!」

「えっ!? うん…?」

そして、彼は忘れていた大事なコトを思い出し、ハッとなる。

「そうだ! そうだった!」

「…?…何のこと?」

不退転の決意を固め、榛名春奈の元へやって来た当真。こんなところで、ビビって退くなんて有り得ない。


榛名春奈(たいしょう)に対する情念(パトス)、執着心が再設定(ふっかつ)されました』


システムから、未知への好奇心(チェリー・ハート)を刺激された当真。

「うおーっ!」

「君、落ち着いて…?」
今、彼は全身を駆け巡る想いに血を滾らせていた。そんな当真に、システムから新たな力が与えられる。

ソレが意味するところを理解した瞬間、彼の心の奥底から万能感が吹き出した。

「おっ、おぉっ…!?」

両眼を一杯に開き叫ぶ当真。そこには、先程の弱気だった姿は微塵もない。

「すっ凄い! これなら負けるもんかっ!」

「え、えーと?」

少年の中で、思春期特有の理論が構築されてゆく。

「もうっ、ここまでしたんだ! だからもうっ、ヤルしかないっ!!」

「何を言っているの?」
こうして、当真は本当の意味で覚悟を決めた。春奈の意思は、遥か遠くに置いてけぼりだ。
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登場人物紹介

【水森 当真《みずもり とうま》】


本編の主人公 (12)。特に目立った長所もなく、ただ単に溢れんばかりの若さを持っているだけのスケベ小僧。クラスでも埋没気味《モブ》な生徒の一人。

【榛名 春奈《はるな はるな》】


メインヒロイン(22)。今年の春に、私立水上学園中等部に赴任した新任の女性教員。そして、周囲から爆乳と称される程の大きな乳房の持ち主。


活発で人付き合いも良く、身体を動かす事が大好きである。その一方、漫画・小説・アニメ・ゲーム等の在宅趣味も嗜む。娯楽消費者として、インもアウトもバランス良くこなす性格をしている。


また、幼少より道場に通い詰めて、武芸を学んでいた。その影響で、非常時には物事をシビアに捉えるクセがあり、常人より一歩も二歩も見切りが早い。


突如現れた、モンスター達を相手に立ち回り、彼女は強力な職業《ジョブ》とスキルを取得する。その力を使い、生き残った生徒達を守ろうと奮戦する。

【絵堂沙織《えどうさおり》】


4月生まれの23才。私立水上学園中等部に勤める新任の女性教員。榛名春奈とは同期。185センチという見上げる程の高身長を誇る女性。


異世界転移前は、長身巨乳のお姉さんとして男子生徒から人気を博していた。それゆえに、彼女は当真の対戦相手として候補に上がっている…が、それはまだ先の話。


鎧袖一触を好み、テクニカルな春奈とは真逆の戦闘スタイルを得意としている。その恵まれた体格でもって、鬼に金棒という大型武器を操り、敵を一撃で粉砕する生粋のパワーファイター。

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