100万ドルの夜景、無料の夜空
文字数 1,351文字
蓮の入院している病院にて。
医療用AIがぼける、という謎の光景だが、やはり連は冷たい人間、鋭い突っ込みを入れることなど不可能!
AIだから、という自虐は若干ダリアの心を蝕んだが、それでも蓮は動じない。
蓮はダリアを電源につないだ(どこがどうとはたぶん表現規制されるから描くに描けないが)
街のはるか遠くが、暗闇に包まれ始めた。
停電が始まっている、とそれでわかるのだが、それでも蓮の心に淀みは発生しない。
暗闇が病院の手前までやってきたとき、ダリアは、次は自分たちの番か、と息をのんだ。
その夜、電気代おおよそ100万円ドルが、国の財布から浮いたわけだが、それでも蓮は何もないはずの空を見上げていた。
毎晩100万ドルの電気を消費して、それで今まで見えていなかったものが見えた。
それは街の明かりが輝き続けていた夜、ずっと輝いていたものだったが、長い間忘れていたものだった。
いかにしてそれを忘れることができたか、というと、蓮は生まれてこの方街の明かりが消えることを経験していないわけで、今夜がそれを見る生まれて初めての時だった。
未来、人間文明が後退していく中、こういうものが見られたらいいな、と。